2014年1月10日 (金)

勝手に「正誤表」

教科書等で使用している専門書で見つけた間違いのメモ。軽微なミスはすぐ気付くから黙殺すればよく下記には含めていない。専門的な部分では,結構,混乱を招く誤植が多いので,そういうものをまとめた。

 

一応,版元にはミスを指摘しているが増刷されなければ直らないし,増刷されても版元の職務怠慢で訂正されていないこともある。

 

『化学辞典』(東京化学同人) 第1版第1刷1994年10月1日発行

 

p. 1420 「メタン」
【誤】爆発範囲(空気中)15~50vol%  【正】爆発範囲(空気中)5~15vol%

 

p. 1369 「ポリエチレングリコール」の示性式
【誤】H-(-CH2-CH2-O-)n -OH  【正】HO-(-CH2-CH2-O-)n -H

 

『セラミックスの化学 第2版』(柳田博明編著,丸善) 第8刷平成18年7月5日発行

 

p. 51 表2.9 No.18 D2の焦電性の欄
【誤】○  【正】-  ※D2に焦電性はない

 

p. 60 一行目の式
【誤】Ng0  【正】g0N  ※gは下付きではなく,0のみ下付き

 

 

 

 

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2012年7月10日 (火)

大学における実験・実習中の死亡事故

労災による死亡事故はよく耳にするが、大学の研究室などで実験中に死亡事故になるケースは比較的珍しい。それでも何年かに一度の割合で起きており、危険を伴う作業には注意が必要である。全ての事故を把握している訳ではないが、大学の実験・実習中に起きた死亡事故で記憶にあるものを整理してみた。

私の印象であるが、電気が専門の人が感電で、化学が専門の人が爆発でというのは、分母の割には少なく、有機材料を研究している人が感電で、電気・物理が専門の人が爆発や窒息でという例が多い。本来の専門外のモノを、取り扱う時に事故を起こしやすいのではと思う。

■ 大阪大学基礎工学部電子工学科 モノシランガス爆発事故 死者2名(1991年10月2日)

プラズマCVD装置を用いた実験中、シラン(モノシラン)ガスが爆発し、学生2名が死亡する事故が起きた。シランSiH4は還元するとシリコンSiになるので、シリコン薄膜を作る際の原料として半導体製造プロセスではよく用いられている。しかし、シランは空気と触れるだけで発火、爆発する危険なガスである。シランは亜酸化窒素(一酸化二窒素N2O)と混合しても爆発するが、この事故はシランガスのボンベに亜酸化窒素が逆流し、ボンベ内に高圧の爆発性の混合ガスが出来て爆発したものとされている。爆発したガス供給設備では、本来の配管に加えて、パージラインと言う、残留したガスを追い出すための配管が設けられていた。このパージラインは、シラン、亜酸化窒素など複数のガスと共用なので、パージラインを通じて並列つなぎのような状態になっていた。さすがにパージラインを通じて、ガスが逆流することは、前もって予知できていたので、逆流を防止する「逆止弁」が取り付けられていたのだが、この「逆止弁」が劣化し、逆流してしまったのである。

私は、事故当日のニュースでこの事故を知ったが、当日の報道では「行方不明者2名」であった。翌日朝刊では死者2名に変わっていたが、遺体の損傷が激しかったそうである。当時の高圧ガスの監督官庁であった通産省は事態を重く見て、翌年には規制が強化されていた。「役所にしては対応が早いな」と言ってたのを覚えている。

1991年10月3日朝日朝刊

Handai1

Handai2_2

参考文献
1. 失敗知識データベース 失敗百選で、事故原因が分析されている。
2. 「大阪大学モノシランガス爆発事故調査委員会〈中間報告書〉(抄)」 高圧ガス Vol. 29, No. 9, pp. 604-612

■ 北海道大学工学部応用物理学科 液体窒素酸欠事故 死者2名(1992年8月10日)

低温実験室の準備室で、助手と大学院生の二人が倒れているのが発見され、同大学の病院に搬送されたが、血液中の酸素が欠乏する低酸素血症で死亡した。準備室では、液体窒素用の容器3個の内、1個が倒れて空になっていた。液体窒素を使って、室温を下げようとしているうちに、酸欠状態となって窒息したようである。

この事故に関して、涼むために液体窒素をまいていたと伝わっていることがあるが、それは誤解で、南極から採取した氷河期の氷が、古代の大気組成の研究のための試料として低温実験室に保管されており、冷却装置の故障で貴重な試料が溶けてしまうのを防ごうとしたというのが真相のようである。

助手と大学院生(D1)が亡くなった事故だったが、助手には労災で手厚い補償がなされるのに対して、大学院生にはそのような制度がなく、事故時の補償という点で当時、問題を投げかけた。当時の大学では、助手等教職員の命令で、末端の大学院生が危険な作業を強要されることが多かった状況もあり、色んな視点で話題になった事故だった。

酸素の足りない空気を一呼吸するだけで、倒れてしまうことは覚えておいてほしい。液体窒素をエレベータで運ぶことがよくあるが、万一、停電でエレベータが止まったり、エレベータ内でこぼしたりすると、窒息の危険があるので要注意である。

1992年8月11日読売朝刊

Hokudai

■ 東京農工大学大学院生が千葉大工学部で実験中に感電死(1994年9月7日)

実験中、院生感電死/千葉大 1994年9月8日読売朝刊
 七日午後八時五十分ごろ、千葉市稲毛区弥生町一、千葉大工学部一号棟一階の実験室で、東京都K市、東京農工大大学院生Fさん(23)が、高電圧実験装置で感電し、意識を失って倒れた。仲間の学生が一一九番通報し、市内の病院に収容されたが、Fさんの心臓は停止しており、死亡した。
 千葉中央署の調べによると、Fさんは五・五キロボルトの高電圧の装置を使って真空状態を作り、物質の分子構造を研究する実験の準備をしていたが、誤って装置に触れたらしい。Fさんは装置の操作に精通しており、千葉大の要請で実験を手伝っていたという。

過失による事故の見方 千葉大での大学院生感電死/千葉 1994年9月9日 朝日朝刊(千葉地方版)
 千葉市稲毛区の千葉大工学部実験室で七日夜、東京農工大大学院生Fさん(23)が感電死した事故で、千葉中央署は八日現場検証を行った。検証の結果から、同署はFさんの過失による事故との見方を強めている。一方、大学関係者の間には「Fさんは装置の操作に習熟しており、信じられない」という声が多い。
 現場検証は同日午後一時から約二時間。実験室の管理責任者である原田義也・千葉大工学部教授らが立ち会った。同署によると、検証の結果から、Fさんが電源から延びるリード線を実験装置の超高真空装置(高さ約二メートル)につなぐ際、
何らかの原因で右手人さし指がプラグに入り感電死した可能性が高いという。
 プラグの内側についたごみと同質のものが付近の床で発見されたことから、ごみを指で除こうとしたとも推測できるが、詳しいことは不明という。
 超高真空装置は、原田教授が今年三月に東大教養学部を退官し、四月から千葉大工学部教授となったのにともない、五月に東大から千葉大に移転した。
 原田教授によると、船木さんはこの実験装置を使って二年ほど前から研究を続けている。取り扱いや感電の危険は熟知しているはずで、「なぜこんなことになったのか全く分からない。私の研究室の学生も同じです」と話す。
 上野信雄助教授によると、Fさんは実験に備えた下準備をしていた。真空状態を発生させるため、電源と装置のスイッチを入れる作業を行っていたらしいが、特別な技術はいらない基本的な作業で教官は付き添っていなかった。通常の手順とは異なることをしたためにFさんは感電したらしいが、なぜそのような動作をしたか、理由はわからないという。
 同実験室で、Fさんと二人で共同研究を続けてきた東京農工大の尾崎弘行講師は「F君は快活な性格。実験熱心で研究者を目指していた。残念でならない」と伏し目がちに話した。


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東京農工大学の大学院生が、千葉大学で実験中に亡くなった事故。責任の所在、管理責任で揉めたことが推測される。一般に籍のある所属先の責任が、大きくなることが多いと聞く。例えば、東京大学の大学院生がKAST(神奈川科学技術アカデミー)の研究室に派遣されて実験を行う場合、事故の際の全ての責任は東京大学に帰すると言う文書を交わすそうである。責任を押し付けあうことになると不都合だから、どちらか片方の責任にするというのを前もって決めておくということらしいが、KASTに法的責任が無いのかと言うとそういう訳ではないだろう・・・。ここら辺のことは、色々調べてもよくわからない。

実験に慣れてきた頃、熟練による慢心が事故を誘発することが多い。一人で漫然と実験をしていると緊張感を欠き、つい気付かぬうちに危険なことを行ってしまうことがある。言い古されたことだが、一人実験は厳禁である。

■ 岐阜大学工学部電気電子工学科4年生 感電死亡事故(1999年10月29日)

実験中に学生死亡 岐阜大工学部 1999年10月30日 中日新聞朝刊
 二十九日午後七時十分ごろ、岐阜市柳戸の岐阜大学工学部の電気電子工学科五一二号教室で、レーザー光線を使った実験をしていた同学部四年、Nさん(21)が
教室の床に倒れているのを、同じ実験グループの学生らが見つけた。Nさんは病院で手当てを受けたが、約二時間後に死亡した。
 岐阜北署の調べでは、Nさんはほかの学生四人と担当教授、助教授とともに、同日午前九時から実験をしていた。レーザー光線をカメラのフラッシュに
利用できないかを研究していたという。午後七時ごろに、全員が休憩のために別室に移動したが、Nさんだけは再び教室に戻った。その約十分
後、大きな音がしたため教室に戻ってみると、Nさんが床にあおむけに倒れていたという。
岐阜市消防本部には大学から「学生が感電した」と通報が入ったが、病院では感電とは断定できていない。遺体に外傷は見られず、同署は三十日に解剖して死因を調べる。

学生感電死 岐大教授ら不起訴 岐阜地検『予見の可能性なし』 2001年12月29日 中日新聞朝刊
 岐阜大学工学部(岐阜市)で一九九九年十月、工学部電気電子工学科四年の男子学生-当時(21)-がレーザー光線を使う実験中に感電死した事故で、岐阜地検は、業務上過失致死の疑いで書類送検されていた担当教授(62)と助教授(40)を不起訴処分にした。
 調べでは、学生は十月二十九日午後七時十分ごろ、研究室でレーザー光線の発振などの実験中に左ひじが実験装置の保護カバーの付いていないコンデンサー端子に、右ひざが皮膜していないアース線に触れ、全身に約三〇〇〇ボルトの電圧を受けて即死した。
 学生が主電源を入れて蓄電した後に放電ボタンを押すなどの正しい操作方法をとらず、床にひざまずいた状態で出始めのレーザー光線を見ようとしていたとみられることなどから、岐阜地検は「マニュアル通りなら事故はなかったと考えられ、教授らが事故を予見する可能性があったとまでは言えない」としている。

現場から無念な思い繰り返すな 実験中の死亡事故から1年 2000年10月29日 中日新聞朝刊

岐大の取り組みレポート 年2回の安全点検 教職員に救急救命講習も
 岐阜市柳戸の岐阜大学工学部の研究室で、電気電子工学科四年生のNさん-当時(21)-が卒業研究の実験中に感電死した事故から、二九日で一年を迎える。初の実験中の死亡事故に、大学は事故調査委員会を設け独自に原因を調べてきた。卒業研究が追い込みに入るこの時期。「無念な思いを繰り返してはならない」と、研究室の安全点検などに乗り出した岐大の取り
組みをレポートする。(報道部・大野孝志)
 事故の翌週、工学部は各学科長ら十人でつくる事故調査委員会を設置。再発防止策を練るため、警察の捜査とは別に原因を究明しようと、実験内容や現場の検証、同じ研究室の学生に話を聴くなどした。調査は昨年末に終わった。
 委員会によると、制御盤でコンデンサーのスイッチを入れたNさんは、自分の実験装置のある場所まで近道をしようと、机の列の下をくぐり抜けた。立ち上がろうとした際、コンデンサーの端子に触れた左ひじから、床についていた右ひざに電流が抜けたようだ。端子には約三千ボルトの電圧がかかっていたとみられる。
 人が通る所にある他の端子には、体が触れる可能性が高いため、あらかじめカバーを着けてあった。しかし野村さんがくぐった先は普段、人が通らない所のためカバーがなかった。
 事故を受け、工学部は一年生の時に配るだけだった冊子「安全の手引き」を使い、卒論研究に入る四年生に講義。教職員には救急救命法の講習も開いた。さらに事故の可能性を極力減らすため、研究室の安全点検に踏み切った。
 点検は年二回。五月と十月、安全環境保全委員会の教授が二人一組になり、講義や実験の合間を縫って行う。機器の周りが整理されているか、薬品庫にカギがかかっているか、事故の際の緊急連絡先が掲示してあるかなど、九つの項目を確認しながら点検する。
 レーザ一光線を使う実験室では、光が人に当たらないように壁が設けてあるか確認した。実験に使うガスボンベには地震でも転がらないよう、大きなストッパーを付けた。
 「地味な仕事です」と委員の教授は言う。しかし、見つかった危険個所が改善されない場合、学部長名でその実験室を使用禁止とする強制力がある。厳しさの背景には「研究室の安全を管理する教授たちに、まず意識を高めてもらおう」との委員の思いがある。
 工学部の落合省三事務長は強調する。「危険な薬品や装置でも、毎日接していると慣れてしまう。さらに、卒業と入学で学生が毎年入れ替わる。事故の記憶を風化させないために、安全点検を毎年行いたい」と。
 岐阜大学感電事故 昨年十月二十九日午後七時十分ごろ、「レーザーガラスの光学特性」という卒論テーマを掲げていたNさんが実験中に死亡した。死因は感電死。他の学生は隣室で休憩していたが、Nさん一人が実験室に戻っていた。大きな音に気づいた学生たちが駆け付け、床に倒れているNさんを発見した。

近道しようと、実験机の下をくぐろうとしたのが不運であった。人がふだん通る通路には高電圧部にカバーがあったが、ふだん人が通らないところにはなかったのである。実験室で、普通、人が立ち入らないような場所に立ち入ったり、ふだん触らない部分を触れたりするのは危険である。東京農工大の事故もそうだが、ふだん触ることを想定していない部分に触れて感電死している例が多い。

また、左手から感電した死亡事故と、右手からの感電死亡事故では、8割が左手からの感電だという統計もある。心臓に近いから致命的になりやすいのか、別の理由なのかはわからない。

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2012年2月21日 (火)

ロシア語の学術雑誌は、その英訳誌が出版されている

最近、自然科学系の主だった学術論文は英語で書かれて、英語で出版されるのが普通だが、20世紀の中頃では、ドイツ語、フランス語、ロシア語など色々な言語が入り乱れていた。先行研究を調べていくと、どうしてもロシア語で書かれた文献に行き当たることがある。ロシア語が出てきた時点で、あきらめる人がほとんどのようだが、そうではない。

あまり知られていないようだが、ロシア語の自然科学系の論文を載せる学術雑誌のうち、主なものは、その英訳誌が英語圏の学協会によって発行されている。例えば、Kristallografiia(Кристаллография)は、ロシア語の論文を載せる結晶学の学術雑誌である。これの英訳誌はSoviet Physics Crystallographyで、全く同内容の英語論文が掲載されている。論文の著者が翻訳したのではなく、翻訳家が訳したものである。原文と英訳を見比べたことがあるが、ロシア語で書かれた原文を、そのまま忠実に英訳していたようであった。

ロシア語学術雑誌の英訳誌が発行されているかどうかは個別に調べるしかない(大学図書館の司書に尋ねるのが早い)。

少々古くなるが、1990年、小生が大学4年生の時、英訳誌が発行されているロシア語学術雑誌をリストアップしたことがある。全てを網羅している訳ではないが、そのリストを下に掲載しておく。ロシア語学術雑誌の名称は英字に翻字したが、ロシア文字で表記されることも多い。

ロシア語学術雑誌の名称 英訳誌の名称
(Journal published in Russian language) (English - translated version)
Akusticheskii zhurnal Soviet Physics Acoustics
Astronomicheskii Zhurnal Soviet Astronomy
Atomnaia energiia Soviet Atomic Energy
Avtomatika Soviet Automatic Control -> Soviet Journal of Automation and Information Science
Bioorganicheskaia khimiia Soviet Journal of Bioorganic Chemistry
Biotekhnologiya Soviet Biotechnology
Defektoskopiia Soviet Journal of Nondestructive Testing
Doklady Akademii nauk SSSR Soviet Mathematics. Doklady
Doklady Akademii nauk SSSR Soviet physics. Doklady
Elektrotekhnjka Soviet Electrical Engineering
Energomashinostroenie Soviet Energy Technology
Fizika Elementarnykh Chastits i Atomnogo Yadra Soviet Journal of Particles and Nuclei
Fizika i khimiya stekla Soviet Journal of Glass Physics and Chemistry
Fizika i tekhnika poluprovodnikov Soviet Physics. Semiconductors
Fizika Nizkikh Temperatur Soviet Journal of Low Temperature Physics
Fizika Plazmy Soviet Journal of Plasma Physics
Fizika Tverdogo Tela Soviet Physics. Solid State
Fiziko-khimicheskaia mekhanika materialov Soviet Materials Science
Fiziko-tekhnicheskie problemy razrabotki poleznykh iskopaemykh Soviet Mining Science
Geologiya i geofizika Soviet Geology and Geophysics
Issledovania Zemli iz Kosmosa Soviet Journal of Remote Sensing
Izvestiia Akademii nauk Armianskoi SSSR. Fizika. Soviet Journal of Contemporary Physics
Izvestiya Akademii Nauk SSSR. Seriia Khimicheskaya Bulletin of the Academy of Science of the USSR. Chemical Science Section
Izvestiya Akademii Nauk SSSR. Seriya fizicheskaya Bulletin of the Academy of Science of the USSR. Physical Series
Izvestiya Rossiiskoi akademii nauk. Metally Russian Metallurgy
Izvestiya VUZ. Fizika Soviet Physics Journal
Izvestiya VUZ. Tsvetnaya Metallurgiya Soviet Non-ferrous Metals Research
Khimicheskaya Fizika Soviet Journal of Chemical Physics
Khimicheskaya promyshlennost Soviet Chemical Industry
Khimiia i tekhnologiia vody Soviet Journal of Water Chemistry and Technology
Koordinatsionnaya khimiya Soviet Journal of Coordination Chemistry
Kratkie soobscheniia po fizike Soviet Physics. Lebedev Institute Reports
Kristallografiia Soviet Physics Crystallography
Kvantovaia elektronika Soviet Journal of Quantum Electronics
Lietuvos fizikos rinkinys Soviet Physics Collections
Liteinoe Proizvodstvo Soviet Casting Technology
Mashlnovodenie Soviet Machine Science
Meteorologiia i gidrologiia Soviet Meteorogy and Hydrology
Opticheskii zhurnal Soviet Journal of Optical Technology
Pisma v Astronomicheskii zhurnal Soviet Astronomy Letters
Poroshkovaia metallurgiia Soviet Powder Metallurgy and Metal Ceramics
Prikladnaya Mekhanika Soviet Applied Mechanics
Radiokhimiia Soviet Radiochemistry
Radiotekhnika i elektronika. Soviet Journal of Communications Technology and Electronics
Sverkhtverdye materialy Soviet Journal of Superhard Materials
Tekhnicheskaia kibernetika Soviet Journal of Computer and System Science
Trenie i iznos Soviet Journal of Friction and Wear
Tsvetnye metally Soviet Journal of Non-ferrous Metals
Ukrainskii khimicheskii zhurnal Soviet Progress in Chemistry
Uspekhi Fizicheskikh Nauk Soviet Physics Uspekhi
Uspekhi Khimii Russian Chemical Reviews
Vestnik mashinostroeniia Soviet Engineering Research
Vysokomolekuliarnye soedineniia Polymer Science USSR
Yadernaya fizika Soviet Journal of Nuclear Physics
Zhurnal analiticheskoi khimii. Journal of Analytical Chemistry of the USSR
Zhurnal eksperimentalnoi i teoreticheskoi fiziki Soviet Physics JETP
Zhurnal fizicheskoi khimii Russian Journal of Physical Chemistry
Zhurnal neorganicheskoi khimii Russian Journal of Inorganic Chemistry
Zhurnal tekhnichesko fiziki Soviet Physics Technical Physics
Zhurnal uychislitel'noi matematiki i matematicheskoi fiziki USSR Computational Mathematics and Mathematical Physics

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2012年1月17日 (火)

単斜晶(monoclinic)の単位格子の取り方に関するメモ

ある物質の文献を調べたところ、次の2種類の結晶構造が報告されていた。両方とも単斜晶で、

①  a=7.93, b=5.09, c=6.15, β=104.3°

②  a=8.75, b=5.09, c=6.13, β=118.8°

単位はÅ、βはa軸とc軸のなす角である。

パターンを照合してみたのだが、上の①②の結晶構造は同じものだった。例えば、①の(-202)は、②の(002)と同じである。一瞬、あれっ?と思うが、単位格子の取り方の違いだった。理論上、単斜晶には単位格子の取り方が無限に存在する。

Monocli

紙面をb軸に垂直、つまりac面に平行に取ると、上のようになる。①の単位格子を2つ重ねた図だが、②の単位格子は緑でなぞった部分となる。赤線が①の(-202)、②の(001)である。

①の単位格子を3つ、4つ、・・・と重ねて同じ取り方をすれば、いくらでもβの大きい単位格子が取れる。

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2012年1月16日 (月)

電気抵抗測定用の導電ペーストに関するメモ

セラミックスなどの試料の電気抵抗を測定する際、試料表面に導電性の電極を密着性よく作製する必要がある。これは通常、導電性ペーストを試料に塗布後、熱処理して作製するが、常温放置で作製できるタイプもある。簡便に済ませたい時は、2Bから6Bの黒鉛の多い鉛筆(ユニ、ハイユニなど高級なものが良い)で試料表面を塗って測定することもある。

Webに情報が少ないので、以下は、導電性ペーストに関するメモ。

常温硬化型の導電ペースト

  • 金ペースト・・・シルベスト8563、徳力本店工業品一課 03-3252-0181、室温×60分で硬化、酢酸エチル使用、最小ロット10グラム、高価、2011年1月で10g当たり65,100円
  • 銀ペースト・・・DuPont 4922、大宮化成など、アクリル樹脂使用、接着力強し
  • 銀ペースト・・・VL-10、タムラ化研 042-934-6134、接着力強し
  • カーボンペースト・・・ドータイト dotite XC-12、比較的入手しやすい

100~200℃で硬化する低温硬化型の導電ペースト

  • 金ペースト・・・シルベスト8560、徳力本店工業品一課 03-3252-0181、100℃×30分で硬化、アクリル樹脂で硬化、400~500℃以上で加熱すると剥がれる可能性あり、最小ロット10グラム
  • 銀ペースト・・・アレムコボンド525、ニラコなどで取扱い、149℃×2時間 or 177℃×1時間で硬化、10グラム12,000円(2011年7月現在)

中温硬化型の導電ペースト

  • 金ペースト・・・シルベスト8570、徳力本店工業品一課 03-3252-0181、700~900℃×10分 or 500℃×60分、450℃で融けるホウケイ酸鉛を結着剤
  • 銀ペースト・・・PM60、徳力本店工業品一課 03-3252-0181、350~400℃で融けるガラスが結着剤。別の型番5101~5103は550~600℃×6~10分間熱処理するタイプ。

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2011年12月26日 (月)

RS-232C端子のないWindows XPのPCに、デジタルマルチメータAgilent 34401AをRS-232Cケーブルで接続する

昔は、PCのほぼすべてにRS-232Cケーブル用の端子(|○|○|のマーク)があったが、最近は付いてるものがほとんどない。2006年にこんなマニュアル「電圧・電流・抵抗をWindows PC で自動測定する方法 RS-232C 経由」を書いた頃はそうでもなかったが、最近はPCのUSB端子を使って、RS-232C用端子のある機器と接続する必要がある。以下は、USB端子とAgilent社のデジタルマルチメータ34401AのRS-232C端子を接続して制御した作業のメモ。

■ 必要なもの

デジタルマルチメータ 34401A (アジレント社)
Windows パソコン (Windows XP Service Pack 2以上のバージョン)
USB-RS232Cコンバータ (サンワサプライUSB-CVRS9、0.3メートル)
RS-232Cケーブル(リバースタイプ)・・・Agilentのデジタルマルチメータはリバースタイプを使う

■ 必要なソフト(以下の2つはAgilent社のWebSiteから無料でダウンロードできる)

Agilent IO Libraries Suite 16.1 (結構重い 371Mbyte)
Agilent マルチメータ用Intuilink Ver 1.3.3 (10.2Mbyte)

※ Agilent IO Libraries Suite 16.1はWindows XP Service Pack 2以上でないと動かない。
※ 2006年頃のIntuilink Ver 1.2の時代はIO Libraries Suiteをインストールしなくても動作したが、Ver 1.3.3ではそうではないようである。

■ PCと34401Aをつないで、使えるようにする手順(最初の1回)

1.USB-RS232Cコンバータ(見た目は30cmのケーブル)を、PCとRS-232Cケーブルにかます。コンバータ付属のフロッピーなどを使って、ドライバをインストールする。これで、USBケーブルが見掛け上、RS-232Cケーブルとして動作する。

2.Agilent IO Libraries Suite 16をダウンロードしてインストールする(結構、時間がかかる)。インストールが終われば、画面右下のタスクトレイに「IO」と表示した五角形の小さなアイコンが表示される。

3.Agilent マルチメータ用Intuilink Ver 1.3.3をインストールする。ダウンロードした時は、なぜか拡張子の「.exe」が消えているので、これを付け加えてから、ダブルクリックして実行する。

4.通信の設定を確認する。マルチメータ側とPC側の両方で通信条件を合わせる。ボーレート:9600、パリティ:なし、8ビット。

マルチメータ側の設定の方法

SHIFT → > でMENU を表示させる
> を4回押して、E I/O MENU とする。
∨ を1回押した後、
> を繰り返し押すと
1 HP-IB ADDRESS
2 INTERFACE
3 BAUD RATE
4 PARITY
5 LANGUAGE
と順に入れ替わるので、それぞれの項目で∨を1回押した後、>を押して、下記のように設
定する。各項目を設定した後は∧で一つ上に戻る。
1 HP-IB ADDRESS ここは適当でよい
2 INTERFACE RS-232C
3 BAUD RATE 9600 (通信速度)
4 PARITY 8 NONE (PC の設定と合わせる。7 EVEN に合わせても可)
5 LANGUAGE SCPI
最後にAUTO/MAN (ENTER)を押して、設定を保存。CHANGES SAVED と表示される。

PC側の設定
コントロールパネル→システム→デバイスマネージャ→COM で、条件を設定。

これでインストール終了。

■ 使い方

1.右下のタスクトレイに表示されているIOのアイコンを右クリック。Agilent Connection Expertを選び立ち上げる。

2.出てきた画面内のPC名の枠の中にCOM1などが表示されるので、Add an instrumentをクリックする。機器名が表示されればOK。

3.デスクトップ上のアイコン「Excel Intuilink for Multimeter Toolbar Addin」をクリック。Excelが立ち上がり、Excelワークシート上にツールバーが表示される。されない場合は、表示→ツールバー→Agilent Intuilink Multimeter にチェックを入れる。

4.ツールバー内の「マルチメータに接続」のアイコンをクリック。(パスを探索中)と表示され、COMに機器名が表示されればOK。

5.「装置を識別」をクリック。装置タイプ、名前が右側に表示されればOK。通信条件、ボーレート、パリティが一致してるかも確認。

6.「接続」をクリック。接続したら、「閉じる」。

7.「マルチメータの設定」で何を測るか選び、「ロギングシートを設定/実行」で自動測定を開始。

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2011年7月23日 (土)

慢性的な腰痛が針灸で軽くなった話 

2006年9月21日付の「腰痛が痛い」でも書いた。長年、慢性的な腰痛と、たまのぎっくり腰に悩まされていたが、2006年の夏から2007年にかけて、慢性的な腰痛がひどくなっていた。だいぶ前の話であるが、その腰痛が、鍼灸治療で軽くなった話を記しておきたい。今のところ、軽くなったままキープしている。

当時のブログにはこう書いていた。

左股関節後ろ側~でん部~腰部に痛み。夜に調子がよく、朝起きたときが一番痛む。骨盤を浮かして寝返りを打つ動作、左の腰を後ろにそらす動作をすると痛む。まだ痛い。7月末に日帰りで、松本に出張したのだったが、直江津・長野間の在来線ロングシートで居眠りしてから、同じ部分に筋肉痛っぽい違和感があった。大事にせずに8月中スポーツジムに通って、筋トレを続けたのが長引いた理由かもしれない。腰痛ベルト、テーピングをするとかなり楽になる。夜に調子がよいことから、血行不良が主因かもしれない。

日常的な生活、仕事に大きな不都合はなかったのだが、腰が慢性的に痛かった。症状としては

  • 左のでん部~腰が痛い。骨の上ではなく左横の筋肉部。痛い場所は深部のような感じ。左股関節の裏側が痛がゆいのが最初の症状だった。体表からはどこが痛いと指示しにくい。左腰の骨盤のグリグリの下のような気がしたり、上のような気がしたり。
  • 左腰を後ろにそらす動作が痛くてできない。
  • 仰向けで腰を浮かす動作も痛くてできない。
  • 仰向けで思い切り背伸びをすると痛いので、背伸びを気持ちよくできない(これはかなり悲惨に感じた)。
  • うつぶせで指圧を受けるとき、左の腰は強く押されると「痛い」と叫んでしまうほどなので、弱めにやってもらっていた。弱めなら心地が良い。
  • 朝起きた時が辛く、夜は比較的楽である。
  • 早歩きはできるが、走るのが怖い。左腰の激痛が怖くて走れなかった。酔った勢いで軽く走ろうとしたら、左足をひっかけて転びそうになった。
  • 以前なら2~3kmくらいなら歩いていたが、腰をかばうためか、周囲の筋肉がだるくなるので、ついタクシーを拾ってしまう。
  • スーパー銭湯にある電気風呂(座ると腰に低周波の電気が流れる)に入ると、以前なら気持ちが良かったのに、痛くて我慢できない状態。

で、評判のいい柔道整復師のうわさを聞いて、3回ほど通ったのだが、軽くはならなかった。そこで受けた施術はベッドの上にあおむけに寝た状態で、下半身をゆっくりと大きく左右にひねる操作をした後、よくある低周波の電気を当てる治療であった。

そのうち治るだろうと思って放っておいたが、全然、よくならない。そんな状態が半年以上続いた2007年の3月頃だった。出張の時、部屋にマッサージを呼んで、指圧してもらっていると、例によって、左の腰を押されたときに、「痛い、痛い」と叫んでしまった。中年男性のマッサージ師、「ああ」と納得し、「一度、鍼(はり)したらどうですか?私、同じ症状で鍼で治ったんです」と言う。同じ症状の人が治ったと言っているのは心強い。以前、はりきゅうで効果がなかったことがあったが、あれはぎっくり腰直後の急性期だった。慢性の症状だと違うかもしれない。

鍼灸院は近所に散在しているが、どこに行けばいいのかわからない。家か勤務先に近いところで、繁盛しているところがいいだろうと考え、患者さんが出入りしているのを頻繁に見かけるある鍼灸治療院に目星を付けた。

電話をして初診の予約を入れた。この鍼灸院は保険がきくらしい。初診時に書類を渡され、かかりつけの医師に腰痛の症状を話して、鍼灸による治療が適切である旨の所見を書いてもらうようにいわれた。最初の2回程度は初心者向けの軽い施術をするという話だった。

初診料がいくらだったかは忘れたが、2回目以降の費用は1回700円であった。7000円ではない、700円。保険の効く分が1700円×0.3で510円、保険の効かない治療の分が190円で、合計700円。期待していなかったが破格の安さであった。「保険の効く鍼灸院が少ないのは、保険で決められた1700円じゃバカバカしくてやってられないから」だそうだ。普通は保険外で1回3000~5000円みたいな話だった。700円の徴収もユニークで治療後、出口に置いてある缶に自分で700円を入れて行くスタイルだった。お釣りも自分で取っていく。診療の予約も、待合室に置かれたスケジュール表に勝手に書いていく。スケジュール表は予約で一杯である。

カーテンで仕切られたスペースが3つあり、それぞれに高さを変えられるベッドが備え付けられている。ベッドに敷くバスタオルは自分で持参する約束であった。男性は大きめのバスタオルを2枚持参するように言われた。

施術は3つのベッドで並行して進んでいく。施術は以下のようなもの。

靴下、シャツも脱いで、パンツだけのスタイルになり、仰向けに寝て待つ。バスタオル一枚は下に敷いて、もう一枚はパンツの上にかけておけばよい。しばらく安静にして待つ。

まず、脈を見られる。脈の様子で逆になることもあるが、通常は仰向けが先で、後で横向きになる。仰向けで、鍼を眉間、肩、腹、腿、すね、足の甲に打たれる。その場所で開封した新品のハリを1mm程度の深さに打つそうである。ハリの入ったまま寝て待つ。

しばらく待つと、別の施術者(女性)が灸を持って現れ、ハリの入っている部分に火を着けた灸を近づける。近づけてしばらくすると熱くて我慢できなくなるので、「はい」と合図して止めてもらう。同じことを全身に行う。

また、しばらく待つと、初めの施術者が戻ってきて、ハリを抜き、今度は横向きの体勢でハリを打っていく、首筋からふくらはぎまで。今度は痛い部分がメインである。

その後、同じように灸の人が現れて、同じように灸を近づけて、我慢できない程度まで灸で温める。初めの施術者がハリを抜いたら終了。

週2回通ってくださいと言われたが、そもそも予約が取れないので、ほぼ週1回のペースで約半年間通った。

効果を感じたのは3回目くらいであった。腰が痛いので、ズボンを履くのにも気合が必要だったのだが、施術後、左足をあげてズボンを履くときに痛みが軽くなっているのに気付いた。施術直後に痛みが軽くなるのは、それまでよくあったことで、翌日とか数時間後に痛みが元に戻ってしまうことが多かった。そのときも、すぐに痛みが戻るのではと思ったが、痛みの軽い状態は続いた。

施術5回目で痛みがほぼ半分、10回目で痛みがほぼ1割になった。意外であった。上に箇条書きにした症状はほぼなくなった。

3月から鍼灸院に通い始めたが、7月初旬に出張先でマッサージを受けた時には、左腰をいくら押されても、もう痛くなかった。

今でも、腰痛はあるが、2006年ごろに悩まされた症状は軽快している。もう再発はないと信じたい。

通った鍼灸院の話によると、自然治癒力を引き出しているのだそうだ。針と灸とどちらが効いたかは判断しにくいが、灸を当てられるときに、次どこに熱いのを当てられるだろうと神経をウズウズさせたのも良かったような気がする。

私に、針灸を勧めてくれたホテルの男性マッサージ師は、私と同じような体格、体型の男性であった。同じような体格の同性の人が、同じような症状に聞いたというのが、大事なのかもしれない。

また、別の人によると、筋肉の多い男性の方が、針灸による自然治癒力を引き出し易いという話だった。

腰痛に悩む人は多いが、慢性的な腰痛が整形外科に通って治ったという話はあまり聞かない。よく聞くのは整体に通って良くなったと言う話だが、良い整体院を探し出すまでが一苦労である。基本的に整体師は無資格の世界なので、整体院は選ぶ必要がある。正直、針灸に通うまで、そんなに効くとは思っていなかったのだが、治ったのは意外であった。

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2011年7月20日 (水)

Fresnel(フレネル)の式で表面プラズモン共鳴角を求める -複素数の入った計算

以下は、フレネルの式を使って、各層の複素屈折率(複素誘電率)から、各入射角における反射率を計算する方法のノート。下に示した条件では表面プラズモン共鳴(SPR)により、反射率が極小になるSPR角が観察される。ここではFortranのプログラムを用いた。

金属膜を蒸着したプリズムに、プリズム側から(空気側からでないことが重要)、レーザー光を入射して、反射光を観察することを考える。入射角を変えていくと、ある角度で反射率が急峻な極小値を示し、反射光の中に暗い線が観察される。この角度が表面プラスモン共鳴(SPR)角である。このとき、入射光と薄膜中の電子とが共鳴を起こし、入射光のエネルギーが吸収されて、電子のエネルギーに変化している。プリズム側の光と、薄膜中の電子との分散関係(ωとkの関係)が一致し、光によって、電子の集団的波動(プラズモン)が生じているのである。

表面プラズモン共鳴を起こすのはp偏光である。

Kreottoc_2   

表面プラズモン共鳴を起こさせるには、上図のようにクレッチマン配置とオット配置がある。膜には通常、金薄膜が用いられる。

表面プラズモン共鳴角を求めるには、フレネル(Fresnel)の式を使って、各媒質の屈折率(二乗して、誘電率)から、各入射角における反射率を計算し、吸収を示す角度を算出する。屈折率は空気、プリズムの場合は実数であるが、金属膜の屈折率は複素数になる。複素数を用いるところがポイント。例えば、仮に下式のkの虚数成分を無視して計算すると、反射率の極小値は出現しない。

Kretchmann配置のときの振幅反射率(複素数)rSPは次式で計算される。(振幅反射率の絶対値の二乗が通常の反射率Rである。振幅反射率(複素数)に、共役の複素数を乗じたものが通常の反射率Rだと言うこともできる。)
Eq1_2 
Otto配置のときの振幅反射率rLRSPは次式である。
Eq2

ここで、r234

Eq3

r12, r23, r34 およびk1z, k2z, k3z, k4zは、p偏光に関しては

Eq4
Eq5

εi はi層目の媒質の誘電率(屈折率(複素数)の二乗)、diはi番目の層の厚み、θは入射角、cは光速、ωは角振動数(入射光の波長から計算)。

Otto配置のときに、プリズムの屈折率1.4607、層2と4が空気で屈折率1、層3が金薄膜で複素屈折率0.166+3.15i、レーザーの波長532nm、層2、層4の厚さがそれぞれ10nm、40nmのときに、入射角10°~80°の範囲の反射率を0.5°ステップで計算するFortran90のプログラムは以下の通り(該当する数値を変更すれば他の条件でも簡単に計算できる)

COMPLEX R,R12,R23,R34,R234
COMPLEX N1,N2,N3,N4
COMPLEX E1,E2,E3,E4
COMPLEX I,K1,K2,K3,K4
REAL C,ABSR12,ABSR23,ABSR34,ABSR234,ANGLE,PAI,THETA
N1=CMPLX(1.4607,0)
N2=CMPLX(1,0)
N3=CMPLX(0.166,3.15)
N4=CMPLX(1,0)
I=CMPLX(0,1)
E1=N1*N1
E2=N2*N2
E3=N3*N3
E4=N4*N4
D2=10E-9
D3=40E-9
C=3.00E+8
PAI=3.14159
DO 200 J=0,140
ANGLE=10+J*0.5
THETA=ANGLE*PAI/180
OMEGA=2*PAI*C/532E-9
K1=OMEGA/C*SQRT(E1-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
K2=OMEGA/C*SQRT(E2-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
K3=OMEGA/C*SQRT(E3-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
K4=OMEGA/C*SQRT(E4-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
R12=-(E1*K2-E2*K1)/(E1*K2+E2*K1)
ABSR12=ABS(R12)
R23=-(E2*K3-E3*K2)/(E2*K3+E3*K2)
ABSR23=ABS(R23)
R34=-(E3*K4-E4*K3)/(E3*K4+E4*K3)
ABSR34=ABS(R34)
R234=(R23+R34*EXP(2*I*K3*D3))/(1+R23*R34*EXP(2*I*K3*D3))
ABSR234=ABS(R234)
R=(R12+R234*EXP(2*I*K2*D2))/(1+R12*R234*EXP(2*I*K2*D2))
PRINT *,ANGLE,REAL(R),AIMAG(R),ABS(R)*ABS(R)
200 CONTINUE
END

下から3行目のPRINT文で、角度、振幅反射率の実数成分、振幅反射率の虚数成分、反射率(振幅反射率の絶対値の二乗)の4データを、順に画面表示する。表示されたデータを右クリックで全て選択などして、コピペするとよい。(Windows XP上、Microsoft Fortran Power Station Ver. 4 for Professional Editionで動作確認。)

Fortran初見の人にわかりにくいのは、DO 200 J=0,140 と 200 CONTINUE のみと思う。この二つの間を、Jについて0から140まで1ずつ増やしながら、ループしなさいという意味。

環境に依存するので書かなかったが、ファイル入出力の命令を書けば、ファイルに出力できる。

Excel VBAで書こうかとも考えたが、複素数はFortranで書く方が実にシンプルである。

上述の計算結果をグラフ(R vs θ)にすると下のようになる。46.5°付近にSPR角がある。媒質の屈折率が微小変化すると、SPR角が移動するので、この角度ではRが大きく変化することになる。なので、表面プラズモン共鳴(SPR)は、微小な屈折率(誘電率)変化を反射率変化として増感する方法として知られる。

Spr

参考 R. V. Andaloro et al., Applied Optics 33 [27], 6340-6347 (1994). (文献中の式6aは誤植あり、マイナスが抜けている)

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2011年7月 1日 (金)

SunワークステーションのNVRAMが電池切れになったので

私の研究室では蛍光X線分析装置(島津製XRF-1700)の制御にSunのワークステーションSPARC station 5を使用している。OSはSun OS 5.5.1である。導入したのは1998年だから、まだパソコンでは装置制御、データ処理に力不足だった時期である。今の大学生にワークステーションと言っても伝わらないので、WSのことをあえてPCと呼んでいたりする。

150万円ほど出せばWindows XPのPCに制御機器周りを更新することもできるらしいが、そんなことはせず、いまだにUNIXベースのSunのWork Stationを使用している。

本日、そのWSが普段通り立ち上がらなくなった。WS本体を起動すると、色々なメッセージが表示された後、OKで停止してしまい。ログインの画面まで行かないのである。

画面上に流れているメッセージを読むと、エラーメッセージらしきものがあった。

The IDPROM contents are invalid.
Boot device: /iommu/sbus/ledma@5,8400010/le@5,8c0000 File and args:
Internal loopback test -- Did not receive expected loopback packet.

Can't open boot device.

一行目のメッセージでWebを検索すると、EVRAMの電池切れが原因と判明した。EVRAMはボタン型電池が内蔵された電子部品であるが、電池も含めて樹脂で封止されているので、電池を交換するのは簡単ではない。

Webで検索した限り、対応は厄介そうであったが、実際やってみるとそうでもなかった。

・大いに参考にしたサイト SunのNVRAMが干上がったら 

・大胆にもNVRAMを分解して電池交換している人 SPARCstation の NVRAM の電池交換

以下の1→2で対応することにした。

1.とりあえず、電池切れのNVRAMを装着した状態で起動し、OK表示の状態から、電池切れのために失った16バイトの情報を入力してやり、普段通りにOSを起動して使えるようにする。

2.1.のようなことを起動の都度、毎回、行うのは面倒なので、新品のNVRAMに交換して元に戻す。

本体を開けてみると、EVRAMの型番はM48T08-150PC1。アールエスコンポーネンツのWeb注文で、当日発送1個2,375円、送料460円だった。

取り急ぎ、上の1.を行った。

幸いなことに、このSPARCstationは、スタンドアロンタイプでネットワークには接続していなかった。ネットワークの設定分、楽である。

起動後、途中で止まった状態でのOKプロンプトから、set-defaults と入力し、以下の手順で16バイト分の情報を入力していった。 (参考 SunのNVRAMが干上がったら

1バイト分ずつ

値 位置 mkp

とOKプロンプトの後ろに入力し、enterしていく。位置とは16バイト中何番目かを16進数で記したもの。順に以下のように入力した。後ろは説明なので入力しなくてよい。

01 00 mkp  ここは常に01
80 01 mkp  host idの1バイト目。機種で違い、SPARCstation 5では80
02 02 mkp  ethernet addressの1バイト目
03 03 mkp  ethernet addressの2バイト目
04 04 mkp  ethernet addressの3バイト目
05 05 mkp  ethernet addressの4バイト目
06 06 mkp  ethernet addressの5バイト目
07 07 mkp  ethernet addressの6バイト目
00 08 mkp  製造日の1バイト目
07 09 mkp  製造日の2バイト目
00 0a mkp  製造日の3バイト目
01 0b mkp  製造日の4バイト目
03 0c mkp  host idの2バイト目
03 0d mkp  host idの3バイト目
03 0e mkp  host idの4バイト目
0a 0f mkp  チェックサム。00~0eのxorの値。この代わりに下の1行でよい。

スタンドアロンタイプだったので、製造日だけでなく、ethernet address、host idの2~4バイト目は適当に数値を入れておけばよかった。上の数値は1~2バイト目以外、適当である。最後の行、チェックサムのxorを計算するのは面倒なので、代わりに

0 f 0 do i idprom@ xor loop f mkp

と入力するとよい。

その後、OKプロンプトにbootと入力すると、OSが無事にたちあがった。

この後、ワークステーションの電源は落とさずに使用する。いったん落とすと、上のことを起動時にもう一度やる必要がある。

NVRAMは日付、時刻も記憶しているので、dateコマンドを使用して、日付、時刻を直す必要がある。

date 0630183011

2011年6月30日18時30分に合わせた。

但し、dateコマンドはスーパーユーザー(login idがroot)でloginしないと変更できない。

後は、NVRAMの新品が届き次第、交換する予定である。NVRAMは挿す向きに注意!逆さまは絶対NG。

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2011年6月30日 (木)

国土交通大臣認定の「不燃木材」、10社中9社が性能不足

建築基準法に基づく「不燃材料」として、国土交通大臣の認定を受けた「不燃木材」の抜き打ちサンプル調査を同省が行ったところ、10社10製品中、9社9製品が必要な不燃性能を有しておらず、かつ大臣の認定した仕様を満たしていないことが明らかになった。

ちなみに、私が共同研究で関係した会社、および不燃材料はこの9製品の中に含まれていなかった。

国土交通省報道発表資料「不燃木材に関する不燃材料の大臣認定仕様との不適合について」

9社9製品の内訳はこちら mlitlist.pdf 。9社は(株)ヨコタニ、アドコスミック(株)、(有)ASA・不燃木材合板、(有)ナニハ木材、チャネルオリジナル(株)、(株)丸七ヒダ川ウッド、亀村木材(株)、越井木材工業(株)、(株)ARS。(使用実績の多い順)

1998年に建築基準法が改正され、不燃材料は「仕様規定」から、「性能規定」に変更された。つまり、それまで材質が鉄、コンクリート等でなければ不燃材料として認められなかったのが、試験で一定の不燃性能を満たせば、木材でも不燃材料として認められるようになった木材を不燃加工し、手続きを経て、国土交通大臣の認定を取得すれば、建築物で鉄が使われていた場所に、不燃木材を使用できるようになったのである。

不燃材料の認定を受けるには、10cm×10cmの試験片を、コーンカロリーメータで加熱し、20分間の発熱量が8MJ/m2以下で、かつ試験片に亀裂、貫通が生じないことが必要条件になる。試験片の厚さは、認定を受けたい厚さにしておく。ちなみに10分間の発熱量が8MJ/m2以下なら「準不燃」、5分間の発熱量が8MJ/m2以下なら「難燃」となる。

認定の際には、上記の条件をクリアした際の試験片の厚み、比重(密度)、塗装の有無、使用した薬剤とその量などを記載して、その仕様での認定となる。上記の9製品は不燃性能を満たさないどころか、比重でさえ認定を受けた仕様の範囲になかった。これは注入した薬剤量の不足を意味する。不燃認定を受けた後は、いい加減な品質管理のもとに出荷していたようである。不燃木材なのに、かなり安い価格で流通していたとも聞く。

基準を満たさなかった9製品のうち、7製品の発熱量が基準の8MJ/m2の5倍を超え、1製品が10倍を超えた。1製品は裏側まで亀裂が入ったという。

木材は、工業製品とは異なって、加工前の木材の性質にばらつきが大きい。丸太のロットによって異なるし、辺材か芯材か、節の付近かによっても異なる。特にスギ材はばらつきが大きいようである。まじめな業者は、安全のために少し多めに薬剤を注入しておく。

ちなみに、不燃木材は、上述の不燃性能を満たすものであるが、炭化しない訳ではない。炭化して黒くなるが炎を出さないものをいう。炎が出るものは、上述の発熱量をクリアできないはずである。

現在、不燃認定試験は以前よりかなり厳格になっている。サンプルの切断を先方でやったり、提供した多数の試験片の中から先方が選んだりである。今回の9製品は、いずれも2004~2007年に認定を受けたものであった。

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«電車のレールには電流が流れているのに触っても感電しない理由