2009年7月 2日 (木)

X線発生装置を設置しても、「放射線管理区域」を作らなくてよくなった?

昭和の頃、X線回折装置や蛍光X線分析装置など、X線を発生する装置(工業用X線装置)を研究室に設置するには、かなり面倒な手続きと管理が必要であった。

Xray_4 その面倒なことに「放射線管理区域」を作るというのがあり、「放射線管理区域」を標識で明示して、用のない者を立ち入らせず、定められた注意事項を掲示する必要がある(電離則3条)。さらに、資格のある「X線作業主任者」の選任が必要で、「管理区域」に出入りする放射線業務従事者にはフィルムバッジなどを着用させて、被ばく線量を測定しておかねばならない。これには一人当たり年間1万円弱の費用がかかる。被ばく線量の記録は30年間保存しなければならないというおまけ付きである。半年に1回、線量当量率の測定(5年間記録保存)と特別な健康診断(30年間記録保存)も必要となる。

「放射線管理区域」とは、実効線量(被ばく量)が「3月間(13週間)で1.3mSv(ミリシーベルト)を超えるおそれのある区域」である。この「超えるおそれのある」という表現が、厳しい解釈を招いていたのであった。X線装置を普通に使用している限り、外部に放射線が漏れたり、この被ばく量を上回ったりすることはないのであるが、何らかの不備が起きた時のことを想定して、X線発生装置を設置する場合には、「放射線管理区域」を作ることが求められていた。これらの管轄は労働基準監督署である。

これが1990年代前半までであった。

その後、「放射線管理区域」は、「X線発生装置」の「装置内部(試料室)」のみで、「装置内部」に人が立ち入ることはできないので、「放射線管理区域」は作らなくてよい、つまりフイルムバッジも着けなくてよいという解釈が、一部の労働基準監督署から出るようになり、なし崩し的に広まったようである。緩くなった経緯はよくわからない。

2001年には、厚生労働省労働基準局長名の基発第253号(平成13年3月30日)「労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」ではっきりと明文化された。(我々はこれで一安心した)

厚生労働省労働基準局長名の基発第253号(平成13年3月30日)「労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」

第3 細部事項3 第3条関係(6)

放射線の照射中に労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることのないように遮へいされた構造の放射線装置等を使用する場合であって、放射線装置等の外側のいずれの箇所においても、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないものについては、当該装置の外側には管理区域が存在しないものとして取り扱って差し支えないこと。ただし、その場合であっても、装置の内部には管理区域が存在するので、第1項の「標識によって明示」することは必要であること。この装置の例としては、次のものがあるが、これらの装置を使用する場合であっても、労働者に対しては、安全衛生教育等において、放射線の人体への影響、及び被ばくを防止するための装置の安全な取扱い等について周知させること。

ア エックス線照射ボックス付きエックス線装置であって、外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされた照射ボックスの扉が閉じられた状態でなければエックス線が照射されないようなインターロックを有し、当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造のもの

イ 空港の手荷物検査装置であって、手荷物の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、当該装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの

ウ 工場の製造工程で使用されている計測装置等で、製品等の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、又は労働者の手指等が装置の内部に入った場合に放射線の照射が停止するインターロックを有し、かつ当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造であり、装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの

つまり、実験に使うX線回折装置、蛍光X線分析装置などで、外部に放射線が漏れない構造で(3月間で1.3mSv以下)、扉が閉まってなければX線が照射されない安全機構(インターロック)がついていて、その安全装置を簡単に解除できない構造であれば、法令上、X線作業主任者は要らないし、放射線管理区域を作らなくてもよいし、出入りする作業者にフイルムバッジを着用させる必要もないということになる。ただし、標識による表示、安全教育は必要である。また、放射線管理区域の有無にかかわらず、X線回折装置など工業用X線装置を新しく設置する場合は労働基準監督署長に設置場所の届け出と書類提出が必要である。

1998年の1月頃、粉末X線回折装置を実験室に設置するに当たって、技官と教授がこんなやり取りをしていたことがあった。あの時期だと、まだ上のことが明文化されていない状況で、口コミで伝わっていた段階だと思うが、「装置内だけが管理区域」は研究者の間で既に有名な話であった。

教授「X線回折装置置くのに、放射線管理区域作って、立ち入り制限しなくていいのか?」
技官「メーカに確認したんですが、今は昔と違って、管理区域は作らなくていいそうです。規制緩和で、フイルムバッジも資格も必要ないという話です。RIとは違いますので」
教授「本当か?そんな話は聞いたことないぞ」
技官「ですから、昔と変わってますって」
教授「もう一度、確認してくれ」
技官「この前もそう言われて、再確認したのがこの話ですが」

よくあるやり取りである。

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2009年5月 9日 (土)

『新型インフルエンザ 世界がふるえる日』(岩波新書)

『新型インフルエンザ 世界がふるえる日』(山本太郎著 岩波新書)を読んだ。著者は国際緊急援助隊調査チームなどで国際的に感染症対策に携わった人。2006年9月発行、今回の豚インフルエンザ騒動の前に発行された本である。

以下、この本を引用しつつ、新型インフルエンザについて(「」内が引用)

■ 世界的流行は周期的に出現する

世界的流行のあった年

 1729年
   ↓52年
 1781年
   ↓49年
 1830年
   ↓59年
 1889年
   ↓29年
 1918年 スペイン風邪 4000万人以上の死者
   ↓39年
 1957年 アジア風邪
   ↓11年
 1968年 香港風邪
   ↓
  ???

 インフルエンザの世界的流行は40~50年周期で起きている。間隔からいうとそろそろ起きても、不思議はない時期である。

■ スペイン風邪(1918年)は鳥インフルエンザウイルスに由来

 1918年のスペイン風邪で死亡し、シベリアの永久凍土内に埋葬された人の肺組織から、ウイルスの遺伝子を復元して、解読した結果、「1918年に世界的流行を引き起こしたインフルエンザウイルスは、その祖先と考えられる鳥インフルエンザウイルスと比較して、ウイルスの複製に必要な遺伝子の一部(アミノ酸配列で10個程度)が置き換わっただけだったというのである。(中略)これは鳥インフルエンザウイルスが容易にヒト型には変化しないというそれまでの通説を覆すものであった。鳥インフルエンザウイルスは、容易にヒト型に変化しうることが一連の研究によって証明されたのである」

この研究は2005年10月6日付の超一流の学術雑誌ネイチャーNatureに掲載されたもので、大きなインパクトを与えた。

1990年代半ばまで、鳥インフルエンザウイルスが、ヒトに感染し、死亡させることなど、専門家の間でさえ想像されていなかったという。

■ 弱毒性と強毒性

インフルエンザウイルスの電子顕微鏡写真を見ると、表面にトゲトゲのスパイク状のものが見える。この表面に見えるトゲトゲが、ヘマグルチニン(HA:赤血球凝集素)とノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれる2種類の蛋白である。抗原性の違いから、HA蛋白はH1からH16までの16種類の亜型に、NA蛋白はN1からN9まで9種類の亜型に分けられる。これら2つの蛋白はウイルスの表面にあるので、細胞への感染を考えるときに重要な役割を果たしている。

インフルエンザウイルスが細胞に侵入するためには、HA蛋白が細胞の表面で二つのユニットに解裂する必要があるのだが、解裂には、その蛋白を分解する酵素が必要である。この酵素を細胞が持っていれば、その細胞にウイルスが侵入するし、持っていなければ侵入しないということになる。

インフルエンザウイルスがヒトの場合、気道上皮細胞に、水鳥の場合、腸管上皮細胞に特異的に感染するのは、これらの細胞がHA蛋白を解裂させる酵素を持っているからである。これが通常のHA蛋白である。

しかし、HA蛋白の解裂部分にアルギニンの繰り返し配列がある場合、気道上皮細胞や腸管上皮細胞以外の細胞が、普遍的に持っている蛋白質分解酵素によって、解裂・活性化されてしまう。この場合には、インフルエンザウイルスは全身の細胞に感染を引き起こすことになる。

HA蛋白の解裂部分にアルギニンの繰り返し配列がある場合、全身の細胞に感染を引き起こすので、「強毒型インフルエンザウイルス」という。解裂部分にアルギニンが一つしか存在しないウイルスは、上気道上皮細胞など決まった細胞にしか感染しないので「弱毒型インフルエンザウイルス」という。

今のところ、強毒型になりうるのはH5とH7の亜型とされており、高病原性インフルエンザウイルスと呼ばれている。ニワトリの間で伝播していくうちに、弱毒型から強毒型に変化すると指摘されている。

強毒型インフルエンザウイルスが人に感染すると、「ありとあらゆる臓器に障害が生じ、肺炎だけでなく、心筋炎や脳炎、あるいは激しい下痢症状が現れ、出血傾向を伴う多臓器不全が引き起こされることになる。」

■ 雑感

「スペイン風邪の流行は、あたかも津波が数次の波に分かれて岸を襲うように、数波にわたって世界を席巻した」という。「第二波として流行したインフルエンザウイルスは、第一波とは比較にならないほど強力な毒性を獲得していた。致死率は高いところで20パーセントを超え、また、流行の第一波を経験していなかった地域の被害は、すでに流行を経験していた地域と比べて格段と大きなものとなっていた」

流行がいったん短期間でおさまったからといって、安心してはいけないという教訓である。

今回の豚インフルエンザの一連の騒動で気になったのは、風評被害を防ぐ目的で「ウイルスが含まれているものを食べても大丈夫」というニュアンスの発言が複数あったことである。ウイルスは上気道にしか感染しないから、消化器に入っても無毒であるという意味らしいが、これは感染を防ぐために「手を洗いましょう」という指示と真っ向から矛盾している。ウイルスが口に入って大丈夫な訳はないはずである。

石破茂農水大臣が、今回の件で、「豚肉は出荷段階で殺菌を完全に行っており、食べても全く問題はない」と発言していた。マスコミに向けて、複数回同じ内容のことを発言していたから、偶発的に失言したわけでもなさそうである。こんな発言をされると、豚肉は生で食べても大丈夫と誤解する消費者も出てきてしまう。私の推定であるが、「殺菌されている」というのは、豚肉一頭分の塊の表面、つまり豚の皮膚に相当する部分を出荷時に殺菌していることを言っていたのだと思う。われわれが食べる豚肉の切り身の内部は殺菌されているはずはない

ちなみに余談であるが、政治家でもあり、省庁のトップでもある大臣の国会外の発言について、行政機関である省庁、つまり官僚は関与しない、承知しない、責任をとれないというスタンスであるらしい。「大臣がこんなことを言っていたけど、どういうことだ。本当か?」とその省庁に問い合わせされても困るらしい。複雑な組織である。

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2009年2月21日 (土)

新車を当て逃げされる

2月19日午後1時頃、金沢市増泉3-15-15の三共パン増泉本店「石窯パン工房マイスターハオス」の駐車場で、家人が車に戻ったところ、車の右後方が大きく傷ついているのを見つけた(下写真)。すぐ下に別の車の部品が落下しており、同店で家人が昼食をとっている内に、当て逃げされたようである。

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地上から約55cmの場所が水平に比較的大きく凹んでいるので、ゆっくりではなく10~20キロ程度のスピードでぶつけられたようである。逃げたのはボンネットが高い位置にある車であろう。その下に擦過傷も広範囲にある。逃げた車は右側の駐車スペースに入ろうとして、左前をぶつけたようで、落下していた部品も左前のランプに付けるもののようである。

ちなみに昨秋、購入したばかりの新車、日産セレナハイウェイスターである。

警察に届けて、部品から車種特定、修理工場などの手配をしてもらっていますが、もし、金沢市南部で左前の部品を損傷したような該当車を見かけましたら、連絡ください。

(以下3月9日追記)

結局、下部のバンパー取替え、上部の板金修理で10万9000円の痛い出費であった。アクサダイレクトの車両保険(免責1回目事故5万円)に入っていたので、修理代を車両保険で捻出しようと、アクサダイレクト(アクサ損害保険株式会社)に電話した。しかし、アクサダイレクトの電話担当者によると、アクサダイレクトの車両保険では、駐車場にとめていた車に当て逃げされたような場合でも、等級は据え置きにならず、カウント事故となって、3等級ダウン、次回より保険料アップとなってしまうという話であった。アクサダイレクトの保険の約款にそのような記載が見当たらないので、訊くと、「約款ではなく、重要事項説明書に絵を使って書かれている」という話である。とにかく、「据え置き事故になると書かれている<落書き、いたずら、台風・・・>以外はカウント事故になる」そうだ。これが重要事項説明書だけに記載されているらしい(約款に書かない理由は定かでない)。ちなみに、3等級ダウンすると、保険料にして年間1万1000円のアップになるので、使わない方が得策である。

駐車場にとめていた車を当て逃げされた場合のように、運転手に過失が認められない場合は、据え置き事故として、等級をダウンさせない保険会社が少なくないのだが、アクサダイレクトは違うようである。アクサダイレクトの保険料が安いのは、ダイレクトにやっているからだけではなさそうである。このことは、知っておいて損はない。

 

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2009年1月13日 (火)

デジタル家電の寡占が進行中

本日付の日経新聞トップ記事によると「デジタル家電 寡占が加速」だそうで、上位のメーカー2社が5割超の国内シェアを占める品目が9種類あるという。全国家電量販店約4500店の販売実績をまとめたGfKジャパンのデータが基になっている(2008年)。日経新聞はNikkei Net上の記事と紙媒体の日経新聞本紙とで、記事の詳しさが違っている。紙媒体の方が格段に詳しく書かれている。

記事(紙媒体)によれば、寡占の進む9品目と国内シェア上位2社は

プリンター(セイコーエプソン、キヤノン)
ノートパソコン画面10.3型以上(NEC、富士通)
デジタルカメラ(キヤノン、カシオ)
電子辞書(カシオ、シャープ)
薄型テレビ(シャープ、パナソニック)
ビデオカメラ(ソニー、パナソニック)
DVDレコーダー(パナソニック、シャープ)
BDレコーダー(パナソニック、ソニー) 
ゲーム機(任天堂、ソニー)
携帯音楽プレーヤー(アップル、ソニー)

デジタル家電の製造には高度な技術力が必要で、技術のある上位メーカがシェアを伸ばし、体力に劣る下位メーカがシェアを減らすという構図。実際には、技術力だけでなく、営業力なども影響しているように思う。

プリンターは予想どおりである。電器店にいってもセイコーエプソン(企業別シェア48.0%)、キヤノン(47.3%)以外はほとんど並んでいない。インクジェットプリンタの技術は相当なもので、超微量の1ピコリットル(0.01mm×0.01mm×0.01mmの体積)のインクをまっすぐ正確に、1秒間に数千万個噴射する。セイコーエプソンはピエゾ素子(圧電素子)を使い、キヤノンは熱による気化の圧力で噴射するという技術上の違いがある。私は両方使ったことがあるが、両社とも同じような技術水準と思う。両社とも、インクジェットプリンタ本体はそれほど高価ではないが、取り換え用のインクカートリッジが高いのが難点である。聞くところによると、インクカートリッジで儲けるビジネスモデルだという。

意外だったのはノートパソコンである。空港とか新幹線車内で会社員がノートPCを使っているのを見ると、半分くらいがPanasonicのレッツノートである。残り半分をレノボ(旧IBM)のThinkPadだとか、東芝、NEC、富士通で分けあっている印象がある。家電量販店の販売実績なので、会社から支給されるノートPCは統計に入っていないのではという気がした。それとも出張時の持ち運び用としてだけ、パナソニックのシェアが高いのか?

デジタルカメラはキヤノン19.4%、カシオ18.5%である。キヤノンがトップだとは思っていたが、カシオが善戦しているのに驚いた。カシオはデジカメでは後発組で、21世紀になった頃はカシオ社員がキヤノンのデジカメを使っていたと思う。銀塩写真の時代にカメラを作っていて、なおかつ電子製品も作っていた会社というと、キヤノンしか思い当たらないので、キヤノンがデジカメに強くて、当然のような気がする。ちなみに、『デジカメに1000万画素はいらない』(たくき よしみつ著、講談社現代新書)によると、ニコン、オリンパス、ペンタックス、富士フイルムなどのデジタルカメラは、ほとんどが他社のOEM品らしい(レンズだけは自社品か・・・?)。

電子辞書はカシオとシャープどちらが売れているのか前から気になっていたが、カシオ59.1%、シャープ25.7%なので、カシオの方がよく売れているようだ。記事にはないが、私の記憶では、電卓はシャープより、カシオの方が計算が速くて正確だった(煩雑な計算をしたとき有効数字の桁数が多い)。

薄型テレビはシャープ(41.6%)、パナソニック(18.6%)。シャープは液晶テレビが普及する前から、液晶技術の研究開発を進めていたのでうなづける。

ビデオカメラはソニー31.9%、パナソニック23.0%。テレビ局などが使う業務用のビデオカメラはソニーの独壇場だから、家庭用でもシェアが高いのであろう。

携帯電話端末はシャープ25.1%、パナソニック16.9%である。情報通信に高い技術力があるNECや富士通でなく、家電メーカのシェアが高いようである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちなみに私は、家電製品は壊れるまで買い替えない基本方針なので(場合によっては壊れても修理して使う方針なので)、しばらくデジタル家電を買う予定はないと思われる。

今は、ソニーの29型ブラウン管テレビTrinitron(KV-29DR5, 1998年製)、横長でない4:3タイプを愛用しているが、まったく問題ないきれいな画面である。「この時期のブラウン管が丁寧に作ってあって、きれいに映るんです」と聞いたことがあるが、真偽のほどはわからぬ。1回壊れたのだが、コンデンサか何かを取り替えたら復活した。知人のソニー社員に話したら、「何で新しいの買わないの?普通買うでしょ!」と言われてしまったが、わざわざ薄型に買い替える必要性を見いだせないのである。何のメリットがあるのだろうか。特に、部屋の角に斜め置きするので、薄型だろうがブラウン管だろうが占有する面積は変わらない。ただ、やたらと重くて、50kgはあるので、めったやたらとは動かせない。ブラウン管の周りに鉄枠が入っているためらしい。

2011年にはテレビ放送がデジタル化されるとのことだが、どう対処するか決めていない。デジタル放送などどうでもよいと考えている大多数の人にとっては、迷惑千万な話である。デジタル放送になると、テレビ内部で信号処理するため、時報が数秒遅れて表示されるようになるそうだ。正確には、時報だけでなく、放送がすべて数秒遅れて表示される。地デジになったら、テレビ番組もつまらないし、別段見たい番組はないから、テレビを置くのをやめようかと言ったら家人には反対されたが、実際、知己の何名かは家にテレビを設置していない。テレビの世帯普及率はこれから漸減していくのではと勝手に予測している。

携帯電話はドコモ(シャープ製)のSH505iを使っている。5年以上使っていると、古い部類に入るという。FOMAでなく、MOVAムーバである。MOVAも2012年をメドに廃止されるらしい。

使えていたものがインフラ整備など社会的理由で使えなくなるというのは、バカバカしい話である。使えていなかったものが、使えるように整備するのが普通である。

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2009年1月12日 (月)

科学的大発見、および技術的ブレークスルーのパターン

どんなときにノーベル賞級の大発見があって、波及効果の高い技術的ブレークスルーがあるのかをパターン化してみた。ただの私見。

■ 偶然の発見+セレンディピティ(serendipity)

セレンディピティとは、偶然の発見をそのままで終わらせず、その価値を正しく見出して、発展させる能力のこと。

ノーベル化学賞の田中耕一氏は、間違えてグリセリンをコバルトに混ぜてしまったことが大発見につながったし、同じく同賞の白川英樹博士は触媒の量を間違えたのが大発見のきっかけだった。人によっては、ただの「失敗」で片づけるかも知れない、偶然の結果を発展させたことによる成果だ。

レントゲンによるX線の発見(1895)も偶然である。金属に電子線を当てる実験を行っていたら、そこら辺に置いていた感光紙に、骨のかげが写ったというのが最初とされている。

電子レンジの発明も、マイクロ波を使った実験をしていた研究者が、ポケットに入れたチョコレートが溶けてしまうのを見て思いついたという。

ポストイット(付箋紙)の発明も、強力な接着剤を作ろうとしていた研究者の失敗例が元になっている。

ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士が、ニュートリノの研究を行ったカミオカンデも、もともとはニュートリノの研究をするためのものではなかった。陽子崩壊の研究をするために、とにかくノイズの少ない山の中に大量の水をためたものである。これだけ水をためれば、何個かは陽子崩壊するだろうと計画していたわけである。しかし、実際に実験を始めてみると、予想外の発光が観測されて、それがニュートリノによるものだとわかった。そこで、大幅な計画変更がなされて、ニュートリノの研究が行われることになったのである。超一流の物理学者でさえ、当初はニュートリノが観測されるとは予測していなかったところが面白い。

材料分野でも、直前に実験した人の不純物が電気炉に残っていたために、予想していなかった化合物(固溶体)ができて、特殊な機能性材料ができたという例がある。材料分野では、偶然による発見はかなり多い。

偶然の発見に頼る研究者を、むやみやたらに穴を掘って、宝探しをしている様子にたとえて揶揄する人がいるが、たいていの場合、専門的識見に基づいて、どこに穴を掘ればいいかという指針としてもっているものである。

当初の計画の通り、ガチガチに固まった研究を進めても、大きな成果を得ることは少ないように思う。

■ 仮説を立てて(予測して)、とにかくやってみる型(作業仮説型、思考が現実化型)

フラーレン(C60など)を発見した科学者は、サッカーボール型のジャングルジムで遊びながら、こんな形の分子があるはずだと常日頃から考えていたという。そう考えていなければ、測定結果に現れたノイズと見間違う小さなピークを、C60だとは思わなかったはずである。実際、別の研究者の古い測定データにはC60らしきピークがノイズっぽく現れていたらしい。C60など眼中になかったから深く追求しなかったのであろう。

X線回折を見出したブラッグBragg。X線はそれまで骨を透写するのに用いられていただけで、波長の短い電磁波であることは知られていなかった。ブラッグは何を考えてか、結晶にX線を当ててみると斑点模様が出てくることを発見した。もちろんブラッグの式が知られる前のことで、この結果からブラッグは有名なブラッグの式を導出したのである。ブラッグが何を考えて、結晶にX線を当てたのかだが、どうもエバルトEwaldと散歩しながら会話していたときに、ある仮説に至ったらしい。それまで知られていた可視光の回折では、波長が長すぎて、結晶では回折を起こさないといわれて、ピンと来たらしい。「X線は波長の短い電磁波ではないか。だとしたら、結晶で回折を起こすはずだ」と仮説を立てて、実験を行ったのであろう。

偶然の発見を、後からストーリー立てして、この発見パターンにアレンジすることも少なくない。学術としてはこのパターンの方が美しく見えるが、後々のためには正直に偶然と報告すべきと思う。

■ 人海戦術型

片っぱしからやってみて、うまくいくやつを探すというスタイル。偶然に頼るのとは違い、とにかく片端からやってみて、一番うまくいくやつを採用する。一番うまくいく要素を複数組み合わせれば技術、ノウハウとなる。

たとえば○○に用いるのに、一番、耐久性の高い材料を探せということで、素材メーカーから無数のサンプルの提供を受けてすべて試験をするなど。企業の研究所では、このスタイルで研究が進められることが多いような気がする。大学などアカデミックではこのタイプの研究はあまり見られないとようである(たぶん)。

■ 共同作業型(要素技術結集型)

たとえば、「フロッピーディスクの発明」には、外観を提案するとか、必要性能を思考上で限定するだけでなく、実際にその性能を実現するために、さまざまな要素技術が必要である。読み書きヘッドの設計、ヘッドの材質、ヘッドにつながる電気回路、ディスクの回転保持機構、ディスクの回転と同期させて読み書きする制御方法、フロッピーの磁性体の構造、磁性体の製造法、ディスクの積層構造、ディスクの表面処理法、フォーマット法など。

誰か一人が発明するというよりは、様々な分野の技術者の開発した要素技術の結集といえる。技術者同士が緊密にコミュニケーションをとりながら、進める技術開発である。日本企業が得意とするところらしい。

■ 既存のものの組み合わせ型

既存のものを組み合わせるだけで思わぬブレークスルーを得ることがある。組み合わせる技術のうち一つは新しめの技術であることが多い。赤外吸収分光(IR)にフーリエ変換(FT)を組み合わせたFT-IRなど。今はFTのつかないIRは売られていないほど、FT-IRが普及している。IRにフーリエ変換を組み合わせることにより飛躍的に性能が改善した。

■ 発想の転換型

30年くらい前、新幹線の速度の上限は時速二百数十kmといわれていた。それ以上になると車輪がレール上で空回りを始めてしまう(たとえば車輪が100メートル進む分回転していても、車両が80メートルしか進まない)というのが理由であった。

最近、「のぞみ」は時速300kmで営業運転しているし、技術的には時速360kmも可能である。フランスのTGVは最高時速574.8kmを記録している。

これには、別に車輪が空回りしても構わないじゃないかという発想の転換があったという。確かに空回りしても、車輪とレールの粘着力が完全にゼロになるわけではないだろうから加速は可能であろう。(この鉄道技術については要確認)

■ 天才のひらめき型

アインシュタインの「一般相対性理論」。量子力学黎明期におけるボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガー、ディラック、パウリ、ド・ブロイら。なぜかユダヤ系の科学者に多い。天才型が輩出するのか。真似をしようとすべきではないと思われる。

ちなみに一般相対性理論。何かに役に立つのかと思われてきたが、最近、理論提唱後100年にして、産業上、役に立ち始めたそうだ。GPSで位置を決める計算では、一般相対性理論に基づく計算を行わないと位置がずれる。

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無重力下で雪の結晶を成長させると

雪の結晶を顕微鏡で見ると、きれいな対称形をしている。6回対称、つまり6分の1回転させても、元と重なる形をとっている。正六角形が何重にも重なった形もあれば、中心から六角形の頂点方向に枝分かれしながら伸びる「樹枝状」の形もある。

雪は氷の一形態である。氷は水分子が規則正しく配列した結晶構造をとるが、その単位格子(繰り返し積み重ねると結晶になる最小単位)は正六角柱の形をしている。低温の上空で、水分子が集まって最初の正六角柱の形を作った後、六角柱の水平方向に水分子がくっついていって成長するか、上下方向に成長するか、このバランスで最終的な形が決まる。この雪の結晶の成長の様子は、上空の気温、水蒸気量(過飽和量)など様々なパラメータに左右されて、まだ定量的に完全には説明できていないようである。

地球上で空から降ってくる雪は重力に従って、落下してくるから、落下の途中で、空気中の水分子が雪の結晶に衝突し、取り込まれてどんどん形を変えていく。では、重力のない無重力状態で雪の結晶成長をさせるとどうなるかが、昔から科学的な話題になっていた。また、重力があると、温かくなった軽いものが上に、冷たくなった重いものが下に移動するという「対流」が起きるので、対流が結晶成長にどう影響を与えているかも学術的に重要なポイントである。無重力下では、対流の影響がない状態で結晶成長させることができる。

2008年12月2日の読売新聞によると、「国際宇宙ステーション(ISS)に設置された日本実験棟「きぼう」で2日、氷の結晶の成長過程を調べる初めての科学実験が始まった。茨城県つくば市の宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センターからの指令で行われたが、見事な「氷の花」を咲かせることに成功した」とのことである。

「初めての科学実験」と記事にはあり、「日本実験棟で行われる科学実験」が初めてなのか、「宇宙環境で氷の結晶の成長を調べようとする」のが初めてなのか、この記事ではあいまいだが、少なくとも後者ではない。

1979頃の『朝日少年少女理科年鑑』という本に、無重力下でないと行えない科学実験が、小学生にもわかるように紹介されていて、わくわくしながら読んだ記憶がある。軽い金属と重い金属を混合して合金を作ろうとすると、重力があると上下に分離してしまってできないが無重力下ではできる可能性があるという話や、プラスチックだと気体の泡を中に入れて、発泡スチロールなどの発泡プラスチックが作れるが、金属の発泡体は金属が重いので、地球上では気体と分離してできない。無重力下で発泡金属が作れるのではなど。

その中に、無重力下で、雪が結晶成長するとどうなるかわかっていないという話も出ていたように思う。

それから、3年後の1982年の元旦。朝日新聞の元日特集版に、「こんど打ち上げられるスペースシャトルで、無重力下で雪を作る実験を行うことになっている。雪の結晶の形がどうなるか、皆さんで予想してください」という内容の懸賞が出ていた。私は応募したのではっきりと覚えている。何と予想したかまでは覚えていないのだが、正解者の特賞景品がNECの「PC-6001」というパソコンであった。当時、PC-8801などの上位機種が既に販売されていたので、特賞にしてはしょぼい景品だな・・・と思ったのを覚えている。

忘れた頃に、実験結果が小さく報道されていて、(無重力下では)雪の結晶はできなかった、という結果だった。雪を作ろうとしたが、雪の結晶はできず、装置の隅っこにごくごく小さい氷ができていたという話だった。しかし、これだけの結果で、無重力で雪の結晶はできないと結論づけるのは間違いであって、広い意味での実験の失敗と言ってよかったのだと思う。先に述べた懸賞では、どんな答えを正解としたのかわからないが、実験結果が明らかになった頃には、PC-6001なんて、だいぶ陳腐化して、そんな景品欲しくないという状況だった気がする。

1982年当時の実験装置の詳細は知らないが、今になって考えれば、実験装置のノウハウ不足か何かで「雪の結晶ができない」と結果も十分、ありえたと思う。

先に述べたISSでの2008年12月の実験では非常にきれいな対称性に優れている氷の結晶、すなわち雪の結晶が得られたそうである。

息の長い基礎研究だと感じた。

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2008年12月30日 (火)

個人的な今年の重大ニュース

その昔、大学生のころ、学生新聞(だったと思う)に「教授の選ぶ今年の十大ニュース」という特集記事があって、「ベルリンの壁崩壊」、「消費税導入」などの項目を挙げる先生がほとんどの中、「家族みんなで温泉旅行」、「息子が引っ越し」など個人的な出来事を上げている先生が一人だけいらした。アンケートの取り方が悪かったのかどうか知らぬが、どちらも十大ニュースにはちがいない。ここに書こうとしている重大ニュースは後者の方である。

■ 新車「日産セレナ ハイウェイスター」購入

1999年からトヨタ「ラウム」に乗っていたが、車検も3回やったし、走行距離も10万キロを超えたし、塗装もはげてきたしということで、クルマを新しくした。カーナビ付きで総額約285万円である。今、乗っているが、高めで、かつよく売れているクルマは伊達ではなかった。7人乗りだが、3列目のシートも普通に広いし、見晴らしがよく、2歳の子どもがチャイルドシートに座るのを嫌がらないようになった。

車格が違うので比較しにくいが(ラウムは1500cc、セレナは2000cc)、ラウムは運転しているとフワフワフワフワした乗り心地だったが、セレナは足がしっかりと安定している。どっちが好きかは好みの問題ではある。高速道路を走ると時速90キロで走っているトラックを追い越すことが多いのだが、ラウムだと90キロから100キロに加速するのにかなりの時間がかかり、追い越し車線でバッシングされることもしばしばだった。セレナだと90キロのトラックはスムーズに追い越すことができる。

トヨタのヴォクシー、ノア、アルファードなども考えてみたが、トヨタのミニバンは全て後部座席の床面が少し高くなっていて、足の置き心地がよくないのである。狭いところで座面の低いイスに座らされている気分である。長距離乗るのは耐えられないということになった。あれは何とかならないものだろうか。

また、プリウスは低速走行時にエンジン音が出ず、歩行者の後ろから接近した時に気付かれにくいので却下した。普通の車で路地を走るとよくわかるが、歩行者は普通、後ろから接近するエンジン音に無意識のうちに対処しているものである。実際、私は自分のすぐわきを後ろから、プリウスにすり抜けられたことが何回もあって、燃費がいくらよくても、歩行者を驚かせる(場合によっては接触してしまう)車はダメだろうと考えるようになった。騒音はよくないが、歩行者に接近するときに何らかのシグナルは必要である。

最後まで候補に残ったのは、トヨタ「ウィッシュ」、ホンダ「ステップワゴン」、日産「セレナ」であった。ウィッシュは3列目が狭いので、候補から消えて、最後はステップワゴンとセレナの二つで迷った。衝突安全性の試験結果(国土交通省のページ)はステップワゴンの方が少し良かったのである(ホンダは安全性がいまいちという印象を持っていたので意外だった)。結局、車内からの見晴らしがいいという理由でセレナを選んだ。どの販売店の営業担当もそうだったが、衝突安全性への関心がほとんどなかったのが困ったところである。

ちなみに、セレナを購入した(株)日産サティオ石川なのだが、9月に倒産するというオチまでついた。自動車の販売店が倒産すると、そのメーカーの自動車のブランド性、信用性にかかわるので、メーカーが資金援助して倒産させないのが普通と聞いていたが、日産はそうでもないらしい。

■ 同級生の突然死

中学、高校と同級生で(中高一貫校なので中学の同級生は高校でも同級生である)、大学でも一緒だった友人(I君)が今年の8月に亡くなっていたことを、12月になって知ったのだった。40歳、前厄の年だった。いわゆる「心臓突然死」で、あまりにも突然の出来事で、ご家族は旧知の友人への連絡のとり方がわからなかったそうで、亡くなった4ヶ月後に訃報を知ることになった。知ったきっかけも、大学時代の友人が「久しぶりに飲みに行こう」と携帯にメッセージを残しても返信がなく、連絡が取れない。それを何回か繰り返した後、ご家族から「8月に亡くなりました」と連絡があったのだった。

それで、遅ればせながら、大学時代の友人7名で、姫路にあるI君の実家を弔問してきた。東京から4名、大阪から2名、金沢から1名(私)である。「このメンバーが集まったら、必ずいるはずのあいつがいないんだよ」とO君が言った。

霊前に焼香した後、在りし日のI君を偲んだ。

ショックを受けたのは、前から心臓を病んでいたわけではなく、体型も標準で4日前までサッカー観戦やら飲み会にでかけて、普通に生活をしていたということであった。健康体そのもので職場から健康優良の表彰を受けていたという。中学、高校も皆勤賞であった。体が丈夫なことを自負していたを覚えている。血圧が少し高いとは言っていたらしい。亡くなる日に体調不良で会社を早退、翌日、出社せず、連絡も取れないことを不審に思った会社の同僚に自宅マンションで亡くなっているのを発見されたという。

弔問後、「姫路城に昇らねばならぬ」ということで、姫路城の天守閣まで昇ってきた。相変わらず急な階段だった。I君の母校ってどれ?と聞かれたので、「あれがI君(と私)の母校の淳心学院」と天守閣から母校を見下ろして指さした。

姫路城周辺は3階建てより高い建物は建てられないので、母校も含め周辺の建物は3階建て以下になっていることやら、姫路城は標高46メートルの姫山という山の上に建っているのでそびえるように見えること、城周りの内堀以外にも、国道2号線沿いに見える高さ1m程の石垣が中堀の跡で、姫路駅は外堀を埋めて作られたこと、中堀の石垣沿いには昔、木造民家が並んでいたこと、「姫路市本町68番地」という住所が姫路城一帯の広い地域を表す住所として使われていて、68番地以下の枝番がなかったのでかなり不便だったこと(一つの番地で国内最大世帯数だった)、デパートはヤマトヤシキと山陽百貨店の二つしかないこと、姫路市立美術館のレンガ造りは美術館のために建造したのではなく前は市役所で、その前は陸軍第10師団の兵器庫、被服庫で、明治時代の建物であること、大手前公園は昔、練兵場だったので年配の人は今でも「練兵場」と呼んでいること、太平洋戦争のとき姫路は大きな空襲に遭ったが姫路城だけは無傷で残ったこと、などをつらつらと案内した。

弔問に集まった7名、ほとんどが十数年ぶりに会う人たちで、久しぶりのプチ同窓会のような雰囲気で旧交を温めることができた。これもI君が引き合わせてくれたようなものだと思う・・・。

I君の御冥福をお祈りします。

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2008年10月31日 (金)

石こうボードが雨水と反応して、硫化水素が発生!?

ホテルの地下室に、石膏ボードなどの廃材を不法投棄したとして、29日、ホテルチェーンの元社長が逮捕された。

今年5月、「東横イン松江駅前」で地下室から硫化水素が大量に発生して、近くにいた男女8人が手当てを受ける騒ぎがあったのだが、地下室に廃棄されていた石こうボードが発生源であった。逮捕された元社長は、この不法投棄を指示したという。

石こうボードが雨水に反応し今年5月28日、致死量を上回る濃度の硫化水素が発生」(日経)

酸素が少ない状態で石膏ボード内の硫酸カルシウムと雨水が反応し、硫化水素が発生したとみられ」(朝日)

と硫化水素が発生した原因を説明しているが、これには注釈が必要である。

石こうボード(硫酸カルシウム)と雨水だけの化学反応では、硫化水素は発生しない。たとえ雨水が酸性雨だったとしてもである。

石こうボードは、石こう、すなわち硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2H2O)が主成分である。この硫酸カルシウム二水和物中の硫黄原子Sの酸化数は+6一方、硫化水素H2S中のSの酸化数は-2である。

言ってみれば、石こう中の硫黄は陽イオンのようなもの(厳密にはちょっと違うが)で、硫化水素中の硫黄は陰イオンである。前者から後者に変化するには還元剤が必要で、雨水がかかるだけとか、酸性の薬品がかかるだけでは、この反応は進行しない。

石こうが硫化水素に変化するためには、もっと複雑な条件が必要である。実際の反応では、硫酸塩還元菌という菌が悪さをして、硫酸塩(石こう)を硫化水素に変えている。最終処分場などの土壌中には、このような菌がいるから、気をつけなければいけないが、ホテルの地下室でもこのような反応が起こったのは意外であった。

廃棄物最終処分場に埋め立てられた石こうボードから硫化水素が発生することは、かねてから問題になっていて、廃棄物関係者の間では、比較的よく知られた話である。

石こうボードに貼ってある紙が硫酸塩還元菌の栄養分になるから、紙をはがして埋め立てれば大丈夫という話が一時あったが、紙をはがしても栄養分はほかにあるから、やっぱりダメということになったという話があった。

詳しい発生条件は、国立環境研究所研究報告第188号 「安定型最終処分場における高濃度硫化水素発生機構の解明ならびにその環境汚染防止対策に関する研究」
http://www.nies.go.jp/kanko/kenkyu/pdf/r-188-2005.pdf

に記載されている。2005年発行だから、比較的最近の報告である。

上の報告書に詳しいが、とにかく硫酸塩還元菌がいて、かつこの菌が活動できる条件(酸素が少ない、有機物があるなど)が整うと、石こうなど硫酸塩から硫化水素が発生する。

石こうボードが不法投棄されていたホテルの地下室は配管室だったというが、使用中の建築物中で発生するのは、新知見ではないかと思う。不法投棄はとがめられるべきだが、地下室の石こうボードから硫化水素の発生を予測しなければならないのは、少し酷である。

とにかく、石こうボードは部屋の仕切りに多用されているが、それに水(酸性雨含む)がかかるだけで反応して、硫化水素が発生するというのは、誤解である(新聞記事を見て、そのように思っている人が多い)。硫化水素の発生には、硫酸塩還元菌の作用が必要である。

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2008年10月23日 (木)

北陸鉄道 鶴来・加賀一の宮間廃止へ

新聞地方版、ローカルニュースによると、北陸鉄道石川線の一部、鶴来-加賀一の宮間(2.1キロ)が来年11月1日までに廃止される。今日、国土交通省北陸信越運輸局に廃止届が提出された。

現在、北陸鉄道(本社・金沢市)は鉄道事業として、野町-加賀一の宮間(15.9キロ)の石川線、金沢-内灘間(6.8キロ)の浅野川線の2路線を運行しているが、廃止されるのは石川線の南端の鶴来-加賀一の宮間

石川線は利用客の減少が続き、1988年に200万人、1998年に169万人いた利用客は昨年度は127万人まで減少。約10年で約4分の3。ピーク時(1966年)の約5分の1。

廃止区間の年間利用客は6万7千人(一日180人)とひときわ少ない。廃止される区間は一日15往復の運行なので、1列車の平均乗客数約6人。白山比咩(はくさんひめ)神社への初詣客の利用が多く、その時期を除いて計算すると1列車平均約5人

昨年度の赤字は5900万円。廃止区間だけでも900万円の赤字。

現在、野町-鶴来間は一日34往復(休日は30往復)走っているが、廃止される鶴来-加賀一の宮間は一日15往復。

「線路、橋梁、変電所の老朽化が進み、今後5年間に維持、更新費用が約5億円必要だが、その余力はない。廃止予定は来年11月1日だが、可能であれば早めたい」と社長が記者会見で述べた。

鶴来-加賀一の宮間は1927年(昭和2年)に金名線の一部として開通した。金名線は、1984年に廃止された加賀一の宮-白山下間と合わせて、金沢と名古屋を結ぶ予定で建設されたものである。金名という名称はその名残。

Haishi_s_2 

上は廃止を伝える地元の北國新聞の記事(本日付朝刊)。

北陸鉄道石川線は私もよく利用していたが、おもな乗客は終点の野町にある津田駒への通勤客と、沿線の金沢工業大学や高校への通学客である。

同じ北陸鉄道が運行する路線バスに比べてそれほど速いわけでもなく、便利なわけでもない。野町-工大間はバスで12分、鉄道で10分である。

廃止される鶴来-加賀一の宮間はバスで7分、鉄道で6分。廃止されるのは残念だが、1列車5人という利用客数から考えても、廃止区間はバスで十分、代替可能なのは事実である。

環境負荷の面でも、電車を1両動かす時に排出するCO2量(火力発電を考える)と、バス1両を動かす時のCO2排出量はほぼ同じである。北陸鉄道は2両編成で運行されているから、エネルギー消費量(CO2排出量)でも、バスの方に分がある。

私は石川県に来てすぐの時、白山麓に向かう国道157号の途中、手取川にかかる橋の下に加賀一の宮駅が見え、そこにステンレス製の電車が太陽光を受けて輝きながら止まっているのを見て、こんなところまで電車が走っているのかと、えらく感動した覚えがある。付近は集落の点在した田園地帯である。国道157号は田園地帯にしては比較的交通量の多い道路なので、この道路が整備されるまでは、電車の利用者が多かったのだろうなと、そんなことを考えていた。

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2008年7月30日 (水)

水とお湯を同時に冷凍庫に入れるとお湯が先に凍る -本当かウソか

「水とお湯を同時に冷凍庫に入れると、お湯の方が先に凍る」という一見信じがたい、ウソのような話がある。

発見者の名前を冠して、ムペンバ効果(Mpemba effect)と名前まで付いている。念のため、常に座右に置いてある『化学辞典』(東京化学同人)、『化学大辞典』(共立出版)、『物理学辞典』(培風館)、『理化学辞典』(岩波書店)を見てみたが、載っていなかった。

以前から、「水より、お湯の方が先に凍る」という話をトピックス的に聞いたことはあったが、深く追求しないまま、そのままにしていた。この実験が、7月9日にNHKの「ためしてガッテン」で放映されて、話題になっているらしい。

冷凍庫に、水とお湯を同時に入れた場合、お湯の方が先に凍るということは冷却条件によっては起きるようである。

東京都水道局のHPには「水のおもしろ実験<お湯が先に凍る?>」と題して、東京大学滝川洋二客員教授監修の実験が掲載されている。

このHPの実験ではコップに100mLずつ、20℃の水と60℃の湯を入れ、冷凍庫に入れている。割り箸をコップの下に2本敷いているところがポイントである。これによりコップの下から冷気が当たって、下方から冷却されるようになる。さらに重要なポイントは、水面(水の上部)が凍るのは、通常通り水の方が先だが、下から凍るスピードはお湯の方が速いところである。最終的に、全体が凍るのは、お湯の方が早くなる

私が、はじめこの実験事実を聞いたとき、ウソだと思ったが、よく考えるとあり得る話であった。

ウソだと思った根拠は、温度は状態量だから、60℃のお湯は、必ず20℃の水になってから、氷点下に冷える。60℃から冷却される途中、20℃の状態を必ず経由するのだ。だから、「60℃のお湯が氷になる」ためには、「20℃の水が氷になる」のに必要な時間にプラスして、「60℃のお湯が20℃に冷える」までにかかる時間が必要なはずである、というものだった。

もし、60℃のお湯の方が先に凍るとしたならば、「60℃から冷やされて20℃になった水」と「はじめから20℃にしてある水」が異なる状態にあることになる。これを当初、あり得ないと考えていたのだが、これら2つの液体上部から下部にかけての温度分布が異なることは十分あり得る。

以下は私の考察である。

60℃のお湯から出発した場合は、液体上部が温かいので上部(表面)は凍らないが、20℃の水は、液体上部が冷えてまず表面が凍る。一方、液体下部は両方とも、ほぼ同じように冷却され、下部からも凍る。下部から凍っていくスピードは、上部(表面)に氷がない方が速くなる。

液体の水の場合、温かい水の方が軽いので上部に移動し、逆に冷たい水は下部に集まる。いわゆる対流である。この温度分布(温度勾配)に従って、下部から凍らせていった方が順調に全体を氷に変えることができる。水の表面(上部)から凍った場合は、対流でできる温度分布に逆らって、温かいところからまず凍らせることになるために時間がかかるのである。表面にできた氷が、対流による順調な熱伝達を阻害しているためという言い方もできる。

以上の考察が正しかったら、60℃のお湯から出発しなくても、20℃の水のコップ上部を発泡スチロールか何か断熱材でふさぎ、表面が凍らないようにして、できるだけコップ下部から冷却するようにすれば、早く凍るようになるはずである。であれば、60℃のお湯から出発するのはナンセンスである。

化学工学的に式を書き下してみる。

コップは円柱型で、上面(空気との界面)、または底面(コップとの界面)における熱伝達を考える。単純化するためにコップ側面の熱伝達はここでは省略する(これは本質的ではない)。

氷の成長に伴って、水と氷の界面は移動していくが、この界面の温度は常に0℃に保たれる(過冷却は考えない)。この界面において発生する凝固熱は氷中を熱伝導で、より低温の上面(空気)あるいは底面(コップ)に逃げていく。氷の成長速度、つまり氷/水界面の移動速度は、上面、底面がよほどの低温でない限り、ゆっくりである。界面がわずか移動しただけで大量の凝固熱が発生するが、熱伝導でより低温の方向へ取り除かれる熱量が少ないからだ。

ある時点での、界面付近の氷中の高さ方向の温度分布を考える。底面(または上面)の温度をΘ、氷の厚みをX、底面(上面)からの距離をxとすると、温度θは

Eq1

0℃の界面からΘの底面(上面)まで、高さ方向に直線的に温度分布していることを示している。

さて、時間dtの間に、氷の厚みがdx増加するとすると

「凝固で発生する熱量」 = 「界面から熱伝導で除去される熱量」なので

Eq2_3

ここでρは氷の密度、Lは単位質量あたりの凝固熱、λは氷の熱伝導率、aはコップの断面積、(dθ/dx)x=Xは氷/水界面における温度勾配である。

対流の影響を考慮すると、上式の右辺にさらに対流の項が加わる

自然対流による熱伝達は、グラスホフ数(Grashof number)という無次元量の影響を受ける。この数は、液体の密度差による浮力を含んでおり、

Eq4

で表わされる。xは代表長さ、gは重力加速度、βは体膨脹係数、νは粘度、θは温度。(Wは底面(上面)、∞は遠方を表す)。

対流項に温度差が含まれていることがポイントである。液体の上下での温度差が大きいほど、対流による熱伝達はスムーズにいくことになる。

また、氷が上から凍った場合、氷と水の界面に空気の泡が入ることが多く、この空気の泡が順調な熱伝達を阻害している可能性もある。

以上は比較的単純なことだと思うが、冷却・冷凍に関する化学工学では知られていないのだろうか、未確認である。

ちなみに、上の効果とはあまり関係ないが、水を冷却して、氷に変える技術はいろいろなところで研究されている。

食品を冷凍する時も、表面から順に中心に向かって凍らせていくのではなく、全領域を同時に均一に凍結させる技術が実用化されているそうだ。わざわざ電子レンジと同じマイクロ波を当てながら、マイナス10℃にし(この状態では凍結しない)、マイクロ波の照射をやめて、一気に凍結させる技術のようである。「電磁冷凍」と呼ぶそうだ。

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