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2006年9月29日 (金)

ペットボトル緑茶飲料中のビタミンCの分析

キリン「生茶」、伊藤園「お~いお茶」、サントリー「伊右衛門」など市販の緑茶飲料中には酸化防止剤としてビタミンC(L-アスコルビン酸)が添加されている。ビタミンCが緑茶の成分の代わりに酸化されるので、緑茶が新鮮に保てるというわけである。学生実験、オープンキャンパスの企画として、このビタミンCを分析、定量したのだが、予想外に多くビタミンCを含むことがわかった。

キリン「生茶」ではビタミンC濃度が0.2mg/mL500mLのペットボトルを飲み干せば100mgのビタミンCが摂取できてしまう計算になる。これはレモン5個分のビタミンCである。お~いお茶、伊右衛門も同程度の添加量だった。ダイドー「ごくせん」など濃い目のお茶を売りにしてあるものは、ビタミンCも他のものより大目に添加してあった。

表示義務があるので、ラベルの裏側には添加物としてビタミンCと表示してあるが、いくら添加されているかはまったく記載されていない。通説では、ビタミンCは過剰摂取すると体に悪いという類のものではないとされているが、本人が知らないうちにビタミン剤が不要になるほど大量のビタミンCを摂取してしまっているのはいかがなものか。

厚生労働省によるとビタミンCの適正摂取量は成人1日当たり50mgである。ペットボトル1本でもゆうに上回っている。私は夏場、生茶を1日2リットル以上愛飲していたが、知らないうちにビタミンCを400mgとっていたことになる。

厚生労働省はビタミンCの添加量の表示も義務付けた方がいいのではないかと思う。

高速液体クロマトグラフィーによるビタミンCの分析方法について

カラム: イナートシルODS

検出器: 吸光度 λ 250 nm

溶離液: リン酸バッファ(0.2 w/v %リン酸+5 mmol/L 1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム):アセトニトリル=9:1

流速: 1mL/min

試料量: 1μL

緑茶飲料は0.45μmのクロマトディスクでろ過後、分析した。試料導入後約1.9分でL-アスコルビン酸のピークが出現。ちなみにオレンジジュースでは懸濁物が多すぎて、クロマトディスクではろ過できなかった。

L-アスコルビン酸は酸化された後、デヒドロアスコルビン酸となるが、これら2つはピークが重なるようだ。食品添加物としてのビタミンC(L-アスコルビン酸)ならピークがきれいだが、果汁由来のビタミンCではデヒドロアスコルビン酸も含まれるためピークが広がる。しばらく(数日以上)放置したL-アスコルビン酸水溶液でも、デヒドロアスコルビン酸を生成するためピークが広がる。数ヶ月水溶液を放置するとピークが出なくなる。

ペットボトル開封直後の緑茶中のビタミンCはほとんど酸化されていない。ビタミンCは開封後の劣化を避けるためなのだろう。

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2006年9月28日 (木)

最近読んだ新書・文庫

8月から9月上旬にかけて出張三昧であった。

松本(長野)日帰り出張・・・校務

大阪日帰り出張・・・校務

郡山(福島)出張 1泊2日・・・校務

東京出張1泊2日・・・展示会

東京出張1泊2日・・・展示会

豊岡(兵庫)出張1泊2日・・・講演

最近、移動の電車の中ではもっぱら本を読むことにしている。それも荷物にならない新書・文庫が中心。以前は、車窓の景色を眺めるのが悦楽だったが、同じ路線に何回も乗るとさすがに飽きてしまった。大阪-金沢間、金沢-(越後湯沢経由)-東京間、東京-姫路間など何度乗ったことやら・・・。一時期、もっぱら眠ることにしていたが、前に書いたように乗り物で寝ると腰やらあちこち痛くなるので、それもやめた。

出張が多かったので、読み終えた本もかなりの数になった。リストにまとめる。

新 書

新しい物性物理(伊達宗行著、講談社ブルーバックス)・・・お勧め。同著者、同シリーズの『物性物理の世界―電子の素顔から極限物性まで』もお勧め(但し絶版)。

接着の科学―くっつく仕組みから新しい接着剤まで(竹本喜一・三刀基郷著、講談社ブルーバックス)

音のなんでも実験室 (吉沢純夫著、講談社ブルーバックス)

判断力を高める推理パズル(鈴木清士著、講談社ブルーバックス)

ダイヤモンドの科学(松原聡著、講談社ブルーバックス)

事故と心理―なぜ事故に好かれてしまうのか(吉田 信彌著、中公新書)・・・お勧め

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する (佐々木俊尚著、文春新書)・・・お勧め

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方(竹内薫著、光文社新書)・・・ベストセラーである。読んでも面白かった。お勧め。

図書館を使い倒す!―ネットではできない資料探しの「技」と「コツ」 (千野信浩著、新潮社新書)・・・お勧め

ひらめき脳(茂木健一郎著、新潮社新書)・・・お勧め

だます心 だまされる心(安斎育郎著、岩波新書)・・・お勧め

贅沢な出張 全国鉄道ガイド―最新グリーン車案内(川島令三著、角川Oneテーマ)・・・副題にもあったのだがグリーン車の案内が中心の本。特急の乗るなら普通車のリクライニングシートで十分と考える小生には無関係の内容であった。

できる人の書斎術(西山昭彦・中塚千恵著、新潮社新書)

数式を使わないデータマイニング入門 隠れた法則を発見する(岡嶋裕史著、光文社新書)

関西赤貧古本道(山本善行著、新潮社新書)

マジックの心理トリック―推理作家による謎解き学(吉村達也、角川Oneテーマ)

文 庫

蛍・納屋を焼く・その他の短編(村上春樹著、講談社文庫)・・・飛行機の中で読む短編として買った。短編の『蛍』があの『ノルウェイの森』の原点となっていることを初めて知った。『ノルウェイの森』は19歳のおりに読んだ・・・。

アフターダーク(村上春樹著、講談社文庫)・・・文庫化したので買って読んだ。村上春樹はやっぱり短編の方がいいと思った。これは長編。

異邦人(カミュ著、新潮文庫)・・・今頃、読んだ。普通、高校生のときに読むもんだろうと言われそうだが・・・。

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アウトプットの記録 特許2

出願中だったまた別の特許が成立した。弁理士から届いた成功報酬請求書によって知った。

拒絶理由通知が1度届いたが、請求項の範囲をかなり狭める補正をしたことで、すぐに特許査定となった。この特許は、塩ビなどの塩素含有プラスチックを焼却しても、塩化水素を発生しないようにする技術について。

発明の名称:焼却処分用の塩素含有プラスチックと、その焼却処分方法

出願人:学校法人金沢工業大学 ほか1社

特願2003-134987、特開2004-339289、出願日2003.5.13、公開日2004.12.2

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2006年9月24日 (日)

血圧が高い

先日、生命保険を増やすために、健康診断を受けてきた。尿検査に続いて、問診、血圧測定。血圧が高かった。130-94。上はまずまずだが、下が高い。毎年の健康診断でも140-90だったりしたので、予測されたことではある。原因は体重増加のためと思われる。体重がいまより10キロ程度低かったときは、120-80でちょうどいいくらいだったから。

で、自宅に帰り、家庭用血圧計で何回か、測ると

130-91

133-88

138-85

リラックス状況、姿勢によって、血圧が変動するものとは聞いていたが、上が高くなると、下が低くなる傾向が見られた。増減するなら、上、下両方ともそろって高くなったり低くなったりするのかと思っていたら、どうもそうではないらしい。調べてみると、上が高くなって、下が低くなる変動も理にかなっているそうだ(岩波新書『血圧の話』(尾崎照雄著))。

上(収縮期血圧)は心臓がポンプの役割をして収縮し血液を送り出すときの血液の圧力、下は(拡張期血圧)は心臓が拡張して、血液が心臓に流れ込んでいるときの血液の圧力である。

心臓の一回の拍動で送り出される血液の量が減ると、心臓が血液を吸い込むときと送り出すときの圧力差が小さくなる。そのため、上が低くなり、下が高くなるという。全身にまわる血液量が変動しないように、同時に脈拍が増える。これは寝ている状態から座る姿勢に変えたときに起こるという。

同書によると、高血圧が遺伝する確率は、身長の高低が遺伝する確率よりも少し低いらしい

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2006年9月21日 (木)

腰痛が痛い

「腰痛が痛い」は、「頭痛が痛い」、「アメリカへ渡米した」と同様、正しくない日本語である。正しくは「腰が痛い」だ。Googleでこれらの語句を検索して、どれだけヒットするか調べれば、文法的に正しいかどうかは抜きにして、日本語としてどのくらい使用されるようになっているかの目安になる。

腰痛が痛い ・・・ 39800件

腰痛がする ・・・ 61200件

腰が痛い ・・・ 850000件

正しくない用法であるが、「腰痛が痛い」は日本語としてかなり熟してきているといえる。普段から慢性的に腰痛があって、その腰痛が普段にまして痛くなったときは、つい「腰痛が痛い」と言いたくなってしまう。痛いことを強調したいのなら「腰痛が痛い」でもいいではないか。

同じような理由で「次の停車駅は○○駅に停まります」は間違いなのだが、車内放送で車掌が頻用している。騒々しい車内や、日本語の苦手な外国人に対してなら、「停車駅」か「停まります」が聞き取れれば意味が伝わるので、繰り返している意義はあるわけだ。

話を腰痛に戻す。

今、ふだんから慢性的にある腰痛が痛くなった。以下は自分の腰痛の記録。私の教訓 「歩けないほどの腰痛がするときは、無理して医者に行くことはない。痛まない姿勢で寝ているのが一番。ただし、早く治したいときは注射してもらうのもよい(注射できない整形外科に急性期に行く価値はない)。はり、マッサージ、お風呂はしばらくたってから。(内臓疾患が原因のときは別だが、このときは安静にしてても痛む)」

2006年8月~9月 左股関節後ろ側~でん部~腰部に痛み。夜に調子がよく、朝起きたときが一番痛む。骨盤を浮かして寝返りを打つ動作、左の腰を後ろにそらす動作をすると痛む。まだ痛い。7月末に日帰りで、松本に出張したのだったが、直江津・長野間の在来線ロングシートで居眠りしてから、同じ部分に筋肉痛っぽい違和感があった。大事にせずに8月中スポーツジムに通って、筋トレを続けたのが長引いた理由かもしれない。腰痛ベルト、テーピングをするとかなり楽になる。夜に調子がよいことから、血行不良が主因かもしれない。

2006年1月 飛行機の中で居眠りして目覚めると、腰に違和感。翌日に目覚めるとさらに痛みが激しくなった。歩きにくいほど痛んだが、安静にしないまま、治る。

2003年5月 朝起きようとすると、歩けないほどに腰が痛む。その1週間前にウォールクライミングなどという、壁に出ている微小な突起物に手足をかけて、壁をよじ登るという慣れないことをやったのが理由と思われる。痛み出す前日まではまったく痛みがなく、飲み会にも参加していたが、その翌日、急激に悪化。医者に行かず、安静にして、数日で治る。

1996年9月 朝、通勤に使っている自転車を降りると、腰に異常な強い痛み。前傾姿勢でないと歩けないほど。勤務先の近所の治療院に行ったら、施術直後だけ軽快したが、しばらくして前より悪化、痛みが前より激しくなる。早く治したいと思い、自宅にいつか投函されていたビラを見て、出張はり師を呼んだがよくならない。さらに翌日、自宅近くの整形外科に行ったら、問診のみで、典型的なヘルニアの坐骨神経痛ですと診断。前はどうやって治したのかと質問され、注射を打ってもらったと答えると、うちでは注射できませんといわれる。治療はなし。無理して出勤したら、結局、大学附属病院にいく羽目に。救急部で治療される。レントゲン撮影の後、ラセーグ徴候テスト、あちこちの腱反射をチェック、まだヘルニアではありません、寝てれば治りますと言われる。1週間ほど安静にして治る。隣には睡眠薬を大量に服用した若い女性がお母さん付き添いで運ばれてきていた。

1993年12月 なぜか朝起きると歩けないほどの痛み。近所の大病院の整形外科へ。レントゲンを6枚もとられた結果、尾骨の先が折れている、仙骨が歪んでいることがわかる。筋弛緩剤と思われる注射を背筋に打って、2、3日で治る。

1990年8月 スクワットした後、腰に異常な痛み。風呂に入るとさらに痛みがひどくなる。立っていても痛いが、イスに座っているのがもっと痛くてつらい状態。数日で治る。

1985年9月 高校の背筋力の検査で、240kgを記録した。その後、少し無理したためか、腰に違和感。歩くのには問題ないが、激しく動くと腰が痛む状態に。しばらくして治る。

およそ3年周期で急性の腰痛(いわゆるぎっくり腰)になっている。

2000年~2001年にかけて慢性的に腰痛が激しく、2002年頃に少し楽になった経験がある。2002年に住居を変えて、うつぶせで本を読んだり、パソコンを打ったりする習慣をやめたことと、日常的に仕事で使う机を7cm高くして、自分の身長に合うようにしたこととが、楽になった原因と思える。後者は、簡単なことだったが、意外に実感として楽になった。

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2006年9月11日 (月)

純度99.5%のエタノールを飲用してはいけない訳

化学実験室ではエタノールをよく使用する。

たまに、実験室のエタノールを水で薄めて、飲もうとする輩がいる。結論から言うが、純度95%と純度99.5%のエタノール、水で薄めて飲むといけないのは99.5%の方である。

実験室でよく使用される、純度95%や純度99.5%のエタノールは、お酒の製造に転用される可能性があるということで、酒税相当分が価格に上乗せされて流通している。1リットル当たり800円強が上乗せされているという。厳密には「酒税」ではなく、「酒税相当分」というらしい。

一方、お酒の製造に転用できないように、わざわざ不純物を添加したエタノールもあり、工業用アルコール、変性アルコールと呼ばれている。こちらは、酒税に相当する分が上乗せされていないので安い。工業用アルコールは、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどが、意図的に加えてあって、飲むと危険である。(プロパノールなどが入ると、おそらく味的にも飲めたもんではない)

工業用アルコールを飲むと危険なのは知っている人が多い。しかし、酒税相当分が上乗せされている純度95%のエタノールと純度99.5%のエタノール、これらを比較した場合、飲むと危険なのは、純度99.5%の方である。純度の低い95%の方ではないのだ。もちろん、実験室にあるエタノールは、お酒に使われる醸造用アルコールとは違うので、飲用しない方がいいのは言うまでもない と記したけれども、お酒に使われる醸造用アルコールと実験室で使う試薬の95%エタノールとは実は同じものらしい。醸造用アルコールが財務省、試薬のアルコールが経済産業省と、監督官庁が異なるだけと聞いた)

なぜか?

エタノールは蒸留を何回も繰り返して、精製される。エタノールと水の混合物を蒸留する場合、エタノールの濃度が95%に達すると、それ以上、濃縮されず、95%でとまってしまうのである(モル比で表すと、エタノールのモル比が0.9でとまる)。化学的に言うと、液相のモル比が0.9のとき、それが蒸発してできた気相のモル比も0.9となる(これを共沸点という)。そのため気相を冷却して凝縮させても、モル比は同じく0.9のまま。だから濃縮されないのだ。

95%よりも、もっと濃くしたい場合どうするか?エタノールと水の系にベンゼンを加えて、蒸留するのである。だから。99.5%のエタノールには微量だがベンゼンが残留している可能性がある。ベンゼンは発がん性のある物質だから、飲んではいけないし、吸うだけでもよくない。

ベンゼンがどれくらい残留していて、水で薄めて飲んだときにどれくらいの健康被害を与えるか、私は評価したわけではないし、知らない。しかし、ベンゼンが微量にでも残留してると飲用できないのは事実なので、99.5%のエタノールに酒税相当分を上乗せする必要はないのではというのが私の意見である。

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「新聞の社説を毎日読んでいる」にYesと答えると、ウソつき

就職用の適性検査、心理テストの類には、まじめに答えているか、ウソをついてないかを見るための質問がまじえてある

そのための質問で有名なのが「私はうそをついたことがない」で、これに○をつけると、逆にウソつきと判定される。「私はうそを言ったことがありません」、「私がうそをつく人間に見えますか」などはウソつきがする発言なのだ。

先日、大学生用の適性検査を見る機会があったのだが、その検査では「新聞の社説を毎日読んでいる」という項目があって、これに○をすると、ウソつきと判定されることになっていた。かなり大胆な設定である。

今の大学生は、絶対に新聞の社説を毎日読まないと言い切れるのだろうか。毎日、社説を読んでいる大学生だって、少数派かも知れないが、いるだろう・・・。

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2006年9月 7日 (木)

東大の債務に関する信用力

こんな記事があった。(asahi.comより引用)

東大、債務返済力の格付け取得 トヨタ並み「AAA」
2006年09月07日19時03分
 東京大は7日、格付け会社の格付投資情報センター(R&I)から、企業の債務返済能力を示す「格付け」を取得した。結果は「AAA」。トヨタ自動車や武田薬品工業と同等の最高ランクだった。

http://www.asahi.com/business/update/0907/143.html

東大の債務返済力が、利益1兆円(売り上げが1兆円ではない)のトヨタ並みとは意外だった。国からの交付金をたくさん受けているということが理由らしい。

この債務返済力というか、信用力は東大本部にある事務局が大口の契約をするときの話なのであろう。

しかし、末端の研究室の実情を語ると、小さい買い物をするときの信用は微たるもので、全然、支払いに関して信用してもらえないことも多々あった。

あるとき運搬して欲しい荷物があって、S川急便に頼んだことがある。電話では、公費でまとめて後払いでお願いしたいと頼んだが、荷物を受け取りに来た末端のセールスドライバーには頑として断られてしまった。この場で現金でお願いしますと。ドライバーは、個々の研究室の運送費は、伝票をどこにもっていっても支払ってくれないんですと語った。

S川急便の運送費は、泣く泣く自腹で現金で払ったのであった。

確かに、旧国立大学の会計はややこしくて、研究のための予算では、運送費を払えないだとか色々複雑な取り決めがあったと思う。仮に研究費で拠出するのが何とか認められたとしても、会社の角印のある見積書、請求書、納品書がそれぞれ2通ずつ必要となった。たかだか1000円程度の運送費を得るのに、こんな面倒くさい伝票を作ってくれる会社などまずなかったのだ。

大学生協でさえ、これらの伝票(見積書、請求書、納品書を2通ずつ)を作成してくれるのは2000円以上の買い物のときだったと記憶している。

例外は年度末のゼロ合わせのときで、予算が7円とかの数円単位で余るのである。国家予算である関係上、余ると、この7円を使い切って、最終残高をゼロ円にしないといけないのだった。銀行の利子の存在を忘れて、7円を何とか使い切った後、研究費の銀行口座を解約すると利子が付いてたので、あとさらに3円使ってくださいなんてこともよくあった。

生協も手馴れたもので1円で何買えますか?と聞くと、クリップ1個と答える。2円以上だと封筒が買えるようになって、色々なサイズの封筒の組み合わせで、ぴったり使い切れた。生協の職員はこの数円の買い物のために、見積書、請求書、納品書を2通ずつ作成してくれるのであった。さらに、研究室では最後の数円をどういう風に使ったかを示すための、A4 1枚の書類を作るのだ。これが教育研究職の助手の年度末の仕事であった・・・。

残った1円に、私費を29円足して、30円の鉛筆を買ってはいけないのかだが、私が東大にいた頃は、私費と公費を合算して品物を買ってはいけないように指示されていたように記憶している。今はどうか定かではない。

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電子顕微鏡と三菱鉛筆

電子顕微鏡で試料を観察するには、試料に電気伝導性を持たせるのが普通である。試料が元々、電気をよく通す場合はそのままでよいが、電気を通さない場合は金や炭素を試料表面に薄く蒸着してから、観察する。(※ソフトモード、低真空モードとか呼ばれるモードで測定する場合は、その必要はない)

炭素を蒸着するには炭素を含む物質を原料に用いるのだが、それ専用に炭素の材料が売られているわけではない。ひょっとするとそういうものが売られているのかも知れないが、普通は用いない。三菱鉛筆uniのシャープペンシルの芯Bの硬さ太さ0.5mm×長さ60mm)を使うのが主流だ。

シャープペンシルの芯には、炭素だけではなくて、粘土、合成樹脂などが含まれている。粘土が含まれていても蒸着時に悪さはしない(多分)が、合成樹脂があるとやっかいなので、これを除去してやる必要がある。このために「焼き出し」という操作をそれ専用の装置で行うのだが、シャープペンシルの芯を使うことを前提としているらしく、大きさが芯に合わせて使いやすくなっている。(ちなみに日立のシステム)

「焼き出し」は、真空中(7 Pa以下)で、シャープペンシルの芯4本に、15 Aの電流を3分間流して行う。真空に引かないと芯は燃えてしまう。

「焼き出し」の後、試料1個に芯1本を使用して、炭素蒸着を行う。

シャープペンシルの芯は40本、200円である。このように大量生産されているシャープペンシルの芯のおかげで、安価な実験ができる。もし、シャープペンシルの芯がなかったら、電子顕微鏡付属品の専門メーカーが1本100円くらいの法外な価格で流通させているかもしれない。

三菱鉛筆の社員は、製品がこんな意外なハイテク用途に使われていることを知っているのだろうか。

ちなみに炭素源として、B以上の鉛筆の芯を使う方法は昔からよくある方法である。

鉛筆の話に変わるが、三菱鉛筆には「ユニ」という高級鉛筆のシリーズがある。高い順からハイユニ、ユニ、ユニスターである。ハイユニは1本140円もするが、実際に使ってみるとわかる通り、書き味が1本30円のものとはまったく違う。なめらかでひっかかりがない。

486212045801_ss500_sclzzzzzzz_v65930038_ 『頑張る日本の文房具』(ロコモーション刊)によると、この秘密は芯にあるらしい。鉛筆の芯は炭素と粘土を練り合わせて製造し、粘土の割合を多くすれば硬い芯となる。この炭素と粘土を微粉化するのに成功し、とにかく粒径が小さくできたのが秘訣らしい。鱗状CSP(クリスタルスーパーグラファイト)黒鉛(同社製?)では粒径が7~10マイクロメートルという。クリスタルと銘打っているので結晶性も高いのだろうか。

ユニでは6B~9Hまで17種類の硬さの鉛筆が市販されている。紙ではほとんど書けない9Hの鉛筆を何に使うのかについて、「一説によると地質学者が鉱物をマーキングするのに用いる」とある。

実は、ものの硬さとか、塗装膜の丈夫さを調べるのに鉛筆を使う、れっきとした引っかき硬度試験があるのだ。鉛筆で引っかいて、5Hまで傷つかなかったとか、Bでも傷ついたみたいにやるわけである。鉛筆法と言われ、JIS K 5600-5-4に規定されている。鉛筆の全硬度を必要とするのはこの試験のときくらいであろう。

引っかき硬度試験の装置 http://www.fa-mart.co.jp/cotec/06.html

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2006年9月 6日 (水)

「周期表」と「周期律表」

元素を原子番号順に周期的に並べた表は「周期表」である。

「周期表」のことを「周期律表」と表現する人たちがいて、どうも50代~60代の方に多いようだ。未確認であるが高校で「周期表」のことを「周期律表」と教育した時期があったようである。1973年初版のチャート式化学では周期律表の表記は一切ないので、それ以前の時期らしい。

とある教授は大学用教科書のコラムで「"周期律表"を間の抜けた"周期表"という用語に改作してしまったのは誰なのか」と、「周期律表」の表記が正しいというの自説を披露しておられたくらいである。

周期表が登場しはじめる昭和初期の専門書・教科書では「周期表」と「周期律表」が混在しており、その後「周期表」に統一されたというのが真相のようである。

周期律はperiodic lawであり、周期表はperiodic tableであるから、英語をリスペクトする限り、周期表は「周期律表」ではなく、「周期表」である。

詳しくは岡山理大 坂根先生のHP参照http://www.chem.ous.ac.jp/~gsakane/periodic.html

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2006年9月 4日 (月)

「物質量(モル)」か「モル数」か

「物質量」という化学用語が高校化学の教育課程に登場したのは、我々が高校生の時代からである。

正確に言うと1982年の高校1年生からで、化学はそれまで化学I・化学IIだったものが、理科Iと化学に再編成された。余談だが、大きく変わったのが数学で数学Iはそのままだったが、数学IIBが「基礎解析」と「代数・幾何」、数学IIIが「微分・積分」、「確率・統計」という今となっては新鮮な科目名に再編成された。数IIB習いましたか?基礎解析習いましたか?と聞くと、だいたいの年がわかる。

化学の話に戻す。

このとき、何モルか?を表すのに「モル数」という表現は姿を消し、「物質量(モル)」あるいは単に「物質量」と表現されるようになった。検定済みの教科書だけでなく、参考書からもほとんどきれいになくなった。高校の教育現場も相当混乱したようで、私の母校でも、新課程に準じて「物質量(モル)」を使って授業した教育実習生を、ベテランの化学教諭(S先生)が「おかしいんじゃないか?モル数と教えるべきだ」と叱責したエピソードがあり、学校の紀要にも記録されている。

どうして、「モル数」を使ってはいけないか、「物質量(モル)」と表現しないといけないかの理由は単純明快に与えられている。例えば、体積(リットル)のことを「リットル数」とは言わない、温度(ケルビン)のことを「ケルビン数」とは言わないからである。モル数という表現は、体積をリットル数と表現しているのと同じだというわけだ。

しかし、物質量という言い方はどうもなじめない。質量と紛らわしいし、直感的にわかりにくいからである。モルというのは、温度などと違って、アボガドロ数という数字を使用した、少しわかりにくい概念であるから、温度や体積と同列に並べて考える必要はなく、モル数でも良いのではとないかというのが私見である。

鉛筆が何ダースあるかを、ダース数と言っても問題ないし、場合によっては体積をリットル数といっても許させるのではと思う。個人的には物質量は「モル数」としたい

Chart_2 しかし、時代の流れは着実に「物質量」を使う方向に流れているようで、私の所有するチャート式化学では新しくなるにつれて、「物質量」の登場頻度が増えている。1973年初版(左)では「物質量」の表記なし。1983年初版(中)では「物質の量」の表記が出ているが、「物質量」としてまとめた表記はない。ただし、同時代の啓林館発行の文部省検定済み教科書では物質量の用語が登場しているが、章としてはまとまっていない。2003年初版では、「物質量」が索引に登場し、節のタイトルとなっている。現行の文部科学省検定済み教科書にも「物質量」とはの説明がある。

Img_3042s ちなみに、もっと古くなるが、私の所有する中で最も古い教科書と思われる明治11年1月23日版権免許(1878年である)、同12年5月第1版発行の『無機化学 非金属部』(丹波敬三訳、下山順一郎校補)。この本は索引がイロハ順である。原子番号も周期律も概念として、伝わってきていない時代の本だ。

この本では、1モルのことを1グラム分子(グラムには瓦の字が当ててある)と表現している。「グラム分子」の表現は私は聞いたことがなかったが、上の1973年発行のチャート式にも「グラム分子」の説明が補足してあるので、比較的最近まで使われていたようである。「グラム分子」も質量と紛らわしい表現だと思う。

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