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2006年9月 7日 (木)

電子顕微鏡と三菱鉛筆

電子顕微鏡で試料を観察するには、試料に電気伝導性を持たせるのが普通である。試料が元々、電気をよく通す場合はそのままでよいが、電気を通さない場合は金や炭素を試料表面に薄く蒸着してから、観察する。(※ソフトモード、低真空モードとか呼ばれるモードで測定する場合は、その必要はない)

炭素を蒸着するには炭素を含む物質を原料に用いるのだが、それ専用に炭素の材料が売られているわけではない。ひょっとするとそういうものが売られているのかも知れないが、普通は用いない。三菱鉛筆uniのシャープペンシルの芯Bの硬さ太さ0.5mm×長さ60mm)を使うのが主流だ。

シャープペンシルの芯には、炭素だけではなくて、粘土、合成樹脂などが含まれている。粘土が含まれていても蒸着時に悪さはしない(多分)が、合成樹脂があるとやっかいなので、これを除去してやる必要がある。このために「焼き出し」という操作をそれ専用の装置で行うのだが、シャープペンシルの芯を使うことを前提としているらしく、大きさが芯に合わせて使いやすくなっている。(ちなみに日立のシステム)

「焼き出し」は、真空中(7 Pa以下)で、シャープペンシルの芯4本に、15 Aの電流を3分間流して行う。真空に引かないと芯は燃えてしまう。

「焼き出し」の後、試料1個に芯1本を使用して、炭素蒸着を行う。

シャープペンシルの芯は40本、200円である。このように大量生産されているシャープペンシルの芯のおかげで、安価な実験ができる。もし、シャープペンシルの芯がなかったら、電子顕微鏡付属品の専門メーカーが1本100円くらいの法外な価格で流通させているかもしれない。

三菱鉛筆の社員は、製品がこんな意外なハイテク用途に使われていることを知っているのだろうか。

ちなみに炭素源として、B以上の鉛筆の芯を使う方法は昔からよくある方法である。

鉛筆の話に変わるが、三菱鉛筆には「ユニ」という高級鉛筆のシリーズがある。高い順からハイユニ、ユニ、ユニスターである。ハイユニは1本140円もするが、実際に使ってみるとわかる通り、書き味が1本30円のものとはまったく違う。なめらかでひっかかりがない。

486212045801_ss500_sclzzzzzzz_v65930038_ 『頑張る日本の文房具』(ロコモーション刊)によると、この秘密は芯にあるらしい。鉛筆の芯は炭素と粘土を練り合わせて製造し、粘土の割合を多くすれば硬い芯となる。この炭素と粘土を微粉化するのに成功し、とにかく粒径が小さくできたのが秘訣らしい。鱗状CSP(クリスタルスーパーグラファイト)黒鉛(同社製?)では粒径が7~10マイクロメートルという。クリスタルと銘打っているので結晶性も高いのだろうか。

ユニでは6B~9Hまで17種類の硬さの鉛筆が市販されている。紙ではほとんど書けない9Hの鉛筆を何に使うのかについて、「一説によると地質学者が鉱物をマーキングするのに用いる」とある。

実は、ものの硬さとか、塗装膜の丈夫さを調べるのに鉛筆を使う、れっきとした引っかき硬度試験があるのだ。鉛筆で引っかいて、5Hまで傷つかなかったとか、Bでも傷ついたみたいにやるわけである。鉛筆法と言われ、JIS K 5600-5-4に規定されている。鉛筆の全硬度を必要とするのはこの試験のときくらいであろう。

引っかき硬度試験の装置 http://www.fa-mart.co.jp/cotec/06.html

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