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2007年3月31日 (土)

「リサイクルせず中古品として再利用」 -環境にやさしいけれども、家電リサイクル法では違法

新聞やテレビでも報道されていたが、不要家電の収集運搬業者が顧客からリサイクル料金をもらって、不要家電を回収したにもかかわらず、家電リサイクル法の決めたリサイクルルートにのせず、中古品販売・輸出業者に横流ししていたという事件が起こった。このような事件はこれが初めてではなく、前にも別の業者で同様な事例が報道されていた。

ヤマダ電機の委託業者:不要家電横流し 経産省など調査

 家電量販最大手のヤマダ電機(本社・前橋市)で、顧客からリサイクル料金を徴収するなどして引き取った不要家電約1600台がリサイクルに回されず、収集運搬業者の関係者によって中古品販売・輸出会社に横流しされていたことがわかった。うち228台は、家電リサイクル法で定められたリサイクル券が顧客に発行されていたにもかかわらず、横流しされる悪質なケースだった。家電小売店は、回収した不要家電をメーカーなどへ引き渡すよう義務付けられており、経済産業省と環境省は同法違反の疑いで調査している。横流しは約1年間続けられており、同社の管理体制が問われそうだ。

 (後略)

2007年3月30日付 毎日新聞記事より引用

家電リサイクル法を持ち出すまでもなく、顧客からリサイクル料金を徴収していながら(この時点で家電は廃棄物扱い)、中古品(有価物)として販売する行為は、一般的には容認されないものだろう。中古品として販売するなら、逆有償(顧客が料金を払う)ではなく顧客から有償で買い取るべきというのが、顧客の立場である。

しかしながら、地球環境への負荷を考えると、この類の事件には複雑な思いが頭をよぎる。

家電に限らず、一般に製品は、別の製品としてリサイクルするよりも、製品そのままの状態で再利用(リユース)する方が地球環境への負荷は小さい

テレビはリサイクルに出すとパーツごとに分解され、銅線は銅に、プラスチックは廃プラとして、ブラウン管はガラス原料として有効利用される。しかし、まだ使えるテレビであれば、テレビとしてそのまま再利用するほうが、廃棄物も少ないし、リサイクルに要するエネルギーは必要ないので、地球環境にはやさしいのである。この業者のやったことは違法行為でありながら、環境にやさしかったのである

本来なら、不要家電の収集運搬業者は、不要家電がまだ動作するかどうか、中古品としての販売・輸出が可能かどうかを判断した上で、顧客にお金を払って買い取るか、逆にリサイクル料金を徴収するか決定すべきなのである。しかし、家電リサイクル法施行以降、引き取り料を顧客側が支払うのがスタンダードになってしまっている感がある。家電リサイクル法が逆有償(リサイクル料金を顧客が払う)をあまりにも強調するので、まだ完全動作する家電製品まで廃棄物扱いされつつあるところが問題なのである。上記の例で言えば、ヤマダ電機は動作する家電製品なら、回収業者でなく、中古品販売・輸出業者をまわして買い取るべきなのである。

毎日新聞によると

リサイクル状況に不審な点があったため、ヤマダ電機が今年1月に内部監査。顧客が家電購入の際に「不要家電がある」と答えながら、リサイクルに回っていないケースが2107件判明した。顧客への聞き取り調査の結果、このうち1594台は顧客が業者に不要家電を引き渡していた顧客にリサイクル券を発行していた228台のほか、454台は業者が領収書を交付。残る912台も顧客が引き取り料を払ったとみられるという。

廃棄物関連は法律と実態が違っていたり、行政担当者の指示、判断がまちまちだったりするので、実に複雑なのだが、私見を言えば、顧客が若干のリサイクル料金(引き取り料)を支払った不要家電が中古家電として再利用されてもかまわないのではないか。法律をそのように制定すべきである。引き取り料を徴収しつつ、中古家電として販売・輸出する行為が、ビジネスとして成立するのなら、そのうち競争が生まれ、引き取り料も妥当な数字に低下するはずである

以前は二束三文だったくず鉄の料金が最近、急上昇したり、廃ペットボトルの料金も時代によって急変動したりするので、いまリサイクル料金が必要な不要家電も将来、有価物となる日が来るかもしれない。もっと柔軟に対応できるように枠組みを決めておくべきではと思う。

行政担当者によってまちまちの判断で思い出したこと。

高校野球で金属バットが大量に廃棄物として出るらしいのだが、その運搬業者が、本来、廃棄物運搬の許可が必要にもかかわらず、許可を受けていないということで問題になり、テレビや新聞で報道されたことがあった。許可が必要なのは法律に照らすと、当たり前なのであるが、その記事を見た当時の小泉純一郎首相の鶴の一声で、廃棄物運搬の許可がなくても運搬してかまわないようになったという。ここまでは新聞記事に出ていた。

これはいったいどのように法律の適用を変えて、運搬できるようになったのだろうか?新聞には記載がなかった。首相の政治力で法律の運用を変えて弊害がないものなのか理解に苦しむ。

廃棄物絡みは理解に苦しむことが多い。

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2007年3月30日 (金)

ホウ素とフッ素の排水基準、温泉旅館への適用は延期へ

平成13年(2001年)7月に施行された水質汚濁防止法で、フッ素、ホウ素、硝酸性窒素が新しく排水基準の規制対象となった。濃度的にもかなり厳しい基準である。

排水基準(平成13年7月に新しく加わったもの)

 ほう素及びその化合物:  10 mg/l以下

 ふっ素及びその化合物:  8 mg/l以下

 アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物:  100 mg/l以下

ちなみに排水基準ではなく、いわゆる環境基準(「人の健康保護に関する環境基準」、自然界の水に適用するもの)は上記、排水基準の10分の1の濃度が設定されている。河川などに排出されると10分の1以下に薄まるだろうという考え方に基づく。

それで、この基準に直ちに対応するのが困難な40業種については3年間猶予が与えられて、平成16年7月まで別の暫定排水基準が適用されることになった。さらに、そのうち26業種については、平成19年7月までもう3年間の猶予が与えられることになった。この26業種に温泉旅館が含まれるので、いろいろと話題になっていた。平成19年7月以降、温泉旅館の一部は廃業を余儀なくされるのではというのである。

一部の温泉の原水にはフッ素やホウ素が含まれていて、それをそのまま河川に放流すると、上記の排水基準を上回ってしまうのである。有名な温泉ほどこれらの成分が濃いといい、草津温泉、下呂温泉はフッ素の排水基準を上回るし、別府温泉、白浜温泉はホウ素の基準を上回る。排水のためには、これらの成分の除去装置を設置する必要があって、その費用が数千万円かかるという。

で、さらにさらに3年間の猶予が与えられるかどうかが、注目されていたのであるが、昨日(3月29日)、環境省は排水基準の適用を、さらに3年間先送りすることを発表した(環境省報道発表資料ほう素・ふっ素・硝酸性窒素に係る水質汚濁防止法に基づく暫定排水基準の平成19年7月以降の取扱いについて」)。(某テレビでは厚生労働省が発表したと言っていたが、水質汚濁防止法の管轄は環境省なので、厚生労働省が発表することはまずないと思う)

フッ素、ホウ素の排水処理の技術が成熟していないことを考えると当然の措置である。

水に溶けにくいフッ化物としては、フッ化カルシウム(蛍石)が有名であるが、この水に溶けにくいとされるフッ化カルシウムが水に飽和したときの濃度が16mg/lである。排水基準が8 mg/l、環境基準が0.8mg/lなので、フッ素を沈殿させて除去するのは相当困難といえる。水で薄めて排出するか、イオン交換するしかないのだが、人が体を浸ける温泉レベルの濃度でそこまでやる必要はないのではないか。

法的な問題点も指摘されている。

温泉旅館には水質汚濁防止法が適用されるのに、日帰り入浴施設には同法が適用されないのだ。水質汚濁防止法は「事業所」を対象としているので、旅館業を営む「温泉旅館」は対象になるが、日帰り入浴施設は厚生労働省管轄の公衆浴場法の対象となるため、水質汚濁防止法の「事業所」には当たらず、排水基準の適用対象外なのだそうだ。

おかしな理屈である。環境省が上記の排水基準を温泉旅館に当てはめるのなら、厚生労働省も公衆浴場法を改正して同様の基準を作るべきだし、あるいは逆に、温泉旅館のうち浴場からの排水だけを水質汚濁防止法の適用除外にすることも考えるべきだろう。でないとバランスがとれないのである。

法律の適用ということになると、省庁の管轄が違うなどの縦割り行政が絡んでくるので、公平さ、バランスを欠く事態になることが多いようである。

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2007年3月29日 (木)

高速フーリエ変換 Excel VBA用FFTプログラム

ちまたには高速フーリエ変換(FFT)のプログラムが出回っているが、これをExcel VBA(いわゆるマクロ)で使えるようにしたところ、机上作業の効率が飛躍的にアップした。下記にプログラム等をノートしておく。ちまたに出回っているFFTのプログラムは利用者の知らないうちに窓関数がかけられていたり、周波数を自動的に計算したりするので、あまり教育的ではない。一番シンプルなFFTのプログラムで、生の処理を体験すべきである。

ちなみに、フーリエ変換とは、理工系の大学で習う数学的処理の方法の一つで端的に言えば、横軸が時間となっているグラフをフーリエ変換すると、横軸が周波数のグラフとなるもの。

Sin_t 例えば左図は横軸が時間で、周波数の異なるサインカーブを3つ足し合わせたグラフである。0.001秒毎に(サンプリング周波数1 kHz)、1024個のデータを取得したもの。横軸が時間だと、この波の周波数を読み取るのに一苦労である。

Sin_f これをフーリエ変換すると左のようになる。横軸が周波数となって、何Hzの波が含まれているかがクリアにわかる。時間領域と周波数領域の間を互いに変換するのがフーリエ変換である。

このフーリエ変換のプログラムを、CooleyとTukeyの発見による感動的なアルゴリズムで高速化したのが高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT)である。「高速」のつかないフーリエ変換のプログラムもあるにはあるが普通は用いられない(データ数が2の整数乗個でなくてもよいという点だけがメリット)。

注意事項

  • 高速フーリエ変換を行う元のデータも、変換後のデータもすべて複素数。実際には元のデータが複素数であることはまずないので、虚数部分を0とする。変換後のデータは、複素数の絶対値を求めて使用する。
  • データの数は2の整数乗個でなければならない。例 1024, 2048, 4096
  • 変換後の周波数領域のデータは左右対称となるので左半分を使用する。右半分は削除する。横軸の右端はサンプリング周波数の半分となる。
  • サンプリング周波数の半分以上の周波数成分が信号に含まれていたとしても、観察されるはずがないことを直観で理解して欲しい。同じようにサンプリングした時間よりも周期が大きい波、つまり時間領域のグラフに波1個さえ入れない低周波成分も出てくるはずがない。特に後者は要注意で上の周波数領域のグラフで原点に向かって立ち上がりがあるが、別に低周波成分が含まれていることを示すわけではない。サンプリングしている間に、波が複数入ってないと周期的変動として検知できないのである。

使用法

  1. プログラム中にデータ数を指定する(5行目のnの部分と7行目の括弧の中)。下のプログラム例ではデータ数は1024個になっている。データの個数は2の整数乗でなければならない。
  2. ExcelのA1~A1024に元データの実数部分、B1~B1024に虚数部分を入力する。ただし、虚数部分があるデータはまれだと思われるので、B1~B1024にはゼロを入力しておけばよい。実数部分で、データ数が2の整数乗に足りない場合は余ったところにゼロを入力しておく人もいれば、同じデータを繰り返しておく人もいる(厳密にはよろしくないと思われる)。
  3. Excelの[表示]→[ツールバー]→[Visual Basic]で、VBAのメニューバーを表示、Visual Basic Editorのアイコンをクリックする。Visual Basic Editor上で[挿入]→[標準モジュール]、さらに[挿入]→[プロシージャ]でSub、Publicを選択し、名前を適当に入力して、下記プログラムをコピー&ペースト(最初と最後の1行は重複するので削除)
  4. メニューバーからプログラムを実行する(▲が横向きのアイコン)。
  5. 4列目(Dの列)にフーリエ変換結果の実数部分、5列目に虚数部分、6列目に(複素数の)絶対値が表示される。
  6. 普通は6列目を使用する。グラフを描くと、左右対称になっていることがわかるが、左半分のみを使用する。横軸の左端は0 Hzとなるが、左半分の右端(左右対称のグラフだと中央、512個目のデータ)はサンプリング周波数の半分に対応する。例えば、元のデータが0.001秒毎に取得したデータであれば、サンプリング周波数は1000 Hzなので、グラフの右端は500Hzとなる。この500Hz、つまりサンプリング周波数の半分のことをナイキスト周波数と呼ぶこともある。

Public Sub fft()
Dim g, h, i, j, k, l, m, n, o, p, q As Integer
i = 0: j = 0: k = 0: l = 0: p = 0: h = 0: g = 0: q = 0
'データ数nを指定(2の整数乗である必要あり)
n = 1024: m = Log(n) / Log(2)
'xr,xiはデータ数以上、s,cはデータ数の半分以上を指定しておく
Dim xr(1024), xi(1024), xd, s(512), c(512), a, b As Single 
'データの読み込み 1列目を実数部、2列目を虚数部とする
For i = 1 To n
xr(i - 1) = Cells(i, 1): xi(i - 1) = Cells(i, 2)
Next i
'FFTの計算
a = 0: b = 3.14159265359 * 2 / n
For i = 0 To n / 2
s(i) = Sin(a): c(i) = Cos(a): a = a + b
Next i
l = n: h = 1
For g = 1 To m: l = l / 2: k = 0
For q = 1 To h: p = 0
  For i = k To l + k - 1: j = i + l
   a = xr(i) - xr(j): b = xi(i) - xi(j)
   xr(i) = xr(i) + xr(j): xi(i) = xi(i) + xi(j)
   If p = 0 Then
    xr(j) = a: xi(j) = b
   Else
    xr(j) = a * c(p) + b * s(p): xi(j) = b * c(p) - a * s(p)
   End If
   p = p + h: Next i
k = k + l + l: Next q
h = h + h: Next g
j = n / 2
For i = 1 To n - 1: k = n
If j < i Then
xd = xr(i): xr(i) = xr(j): xr(j) = xd: xd = xi(i): xi(i) = xi(j): xi(j) = xd
End If
k = k / 2
Do While j >= k
j = j - k: k = k / 2
Loop
j = j + k
Next i
'データの出力
For i = 1 To n   '4列目に実数部、5列目に虚数部、6列目に絶対値を表示
Cells(i, 4) = xr(i - 1): Cells(i, 5) = xi(i - 1)
Cells(i, 6) = (xr(i - 1) ^ 2 + xi(i - 1) ^ 2) ^ 0.5
Next i
End Sub

先人の業績をExcel VBAで使えるようにしたものなので、ご自由にご利用いただいて構いません。

参考文献

科学計測のための波形データ処理(南茂夫編著、CQ出版) amazonへリンク 古書としてのみ入手可能・・・本書は名著中の名著。FFTに関しても面白くてためになる。しかし、PCの方が進歩しすぎたためか、残念ながら絶版。

ニューメリカルレシピ・イン・シー C言語による数値計算のレシピ(技術評論社) amazonへリンク・・・これも名著。内容が充実している。FFTでは実際にはデータが実数で、虚数部分のゼロが計算の無駄になるので、計算を工夫して、2つ分のフーリエ変換を同時に行うプログラムが同書に提案されている。

補足 逆フーリエ変換(周波数領域→時間領域)について

逆フーリエ変換は、上と同じプログラムで実行できる。ただし、注意点として、元となる周波数領域のデータ(複素数)は、左右対称のデータを用いる必要がある(フーリエ変換直後のデータと同様、右半分と左半分が対称なものを作成する)。また、縦軸の倍率が変わるので、縦軸の数値を全データ数(1024とか4096とか)で割った上、正負を逆にする必要がある。

時間領域のデータから出発して、フーリエ変換→逆フーリエ変換を行って、元のデータと比較すれば理解できる。フーリエ変換→逆フーリエ変換を行った後、時間領域のデータの虚数成分は完全なゼロにはならず、ゼロに近い数値になるが、これは誤差のためである。

補足 C言語のFFTについて

上述の技術評論社のニューメリカルレシピ・イン・シー(C言語による数値計算のレシピ)のp.390に記載されています。

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2007年3月27日 (火)

能登半島地震 記録と雑感

昨日の能登半島地震では家屋が相当大きく揺れたが、さいわい我が家では人的被害、物的被害とも一切なかった。本棚の端に横積みにしていたファイル類は落下していたけれども、被害のうちに入らない。以下はその記録と雑感。

昨日、午前9時42分、自宅リビングにいると家屋が激しく振動するのを感じた。ちょうど立っているときだったのだが、立っていられない程ではなかったものの、机の下に隠れた方がいいのではと思わせるほどの大きな長い横揺れだった。金沢にはこんな地震は珍しい。このようなときは震源地が遠方にあり、震源地付近ではもっと大きな震度が記録されていることが多いのだが、この不安通り、金沢では震度5弱、七尾、輪島では震度6強であった。これまで東京に住んでいたときに震度4を経験したことはあったが、震度5弱ははじめての経験だった。

安否確認のために電話しようとしたのだが

  • NTTドコモ FOMA(フォーマ): 通話、メールとも一切、不通。どこにもつながらなかった。
  • NTTドコモ mova(ムーバ): メールは金沢・七尾間でもつながった(10:12送信、10:24受信)。通話は金沢・七尾間は不通だったが、金沢・東京間(10:17)、金沢・兵庫間(10:35)はつながった。
  • NTT固定電話 一般回線: 金沢・七尾間で10:15頃に通話可能だったが、それ以前の時刻では不通。

最新機種のFOMAではメール、通話とも不通で、movaだとつながったのが皮肉である。movaの方が利用者が少なくなっているからなのか。いまだにmovaを持っているのは、山岳地帯でつながりやすいと聞くからである。ちなみに携帯よりも固定電話、固定電話よりも公衆電話、公衆電話よりも国際電話の方が優先度が高いらしい

以前から「石川県で30年以内に大地震が起こる確率は、最大5%」と報道されていたのだが気に留める人は少なかった。他の地域に比較すれば、低い確率であるが、その5%が起こるべくして起こったのであろう。

地震発生後、10時台、11時台のテレビはNHK、MRO(TBS系)、HAB(テレビ朝日系)、テレビ金沢(日本テレビ系)とも臨時ニュースに切り替わっていたが、石川テレビ(フジテレビ系)だけが、なぜか『笑っていいとも 増刊号』を放送し続けていた(ただし左端、上端に字幕でニュース速報あり)。

報道機関が金沢市内(震度5弱)に集中しているため、地震発生後1時間以上経つまで、甚大な被害が懸念される能登地方の被害状況が一切、報道されていなかった。午前10時55分頃にNHKやMROで「輪島市門前町で家屋が倒壊している」と報道されたのが第一報で、それまで家屋倒壊情報は皆無であった。こういった過疎地域の被害状況は、マスコミよりもインターネットの掲示板の方が早く正しく伝わっていたのである。

石川県知事が緊急登庁したのが午前10時半頃、陸上自衛隊に災害派遣要請を公式に出したのが11時8分である。決して遅くはないけれども、テレビニュースで家屋倒壊が報道されたのが10時55分だから、知事はテレビニュースで被害の大きさを知って、派遣要請したのではと推測される。阪神淡路大震災のときにも、時の村山総理大臣がNHKニュースを見て、被害の大きさを知って驚いている様子が放映されていたけれども、総理だとか、知事だとかお偉い人が一般人と同じようにテレビニュースから情報をとっている現状も危機管理上、如何なものかと思う自衛隊は地震発生直後から、航空機で偵察を行っていたといい、自衛隊の情報が知事にあがっていればもっと早く、派遣要請が出たはずであろう。

ちなみに、陸上自衛隊、航空自衛隊、海上自衛隊にはそれぞれ別々に知事名で派遣要請を出さないといけないそうだ。日航機123便墜落事故のとき、当時の群馬県知事はそれを知らず、陸上自衛隊だけに派遣要請を出したため、航空自衛隊からこちらにも早く要請してくれと促されたという。

輪島市内の重蔵(じゅうぞう)神社では、高さ12メートル程の大鳥居が地震で倒壊し、倒壊したときの衝撃で石柱が割れてしまった。人的被害がなかったのが不幸中の幸いだが、大鳥居には建築基準法の耐震基準が適用されてないのか。テレビの映像では、地中深くまで基礎杭が打たれている様子はなかったし、割れた状況を見ても石柱には鉄筋などの補強材が入っていなかったようである。この大鳥居がいつ建造されたものか知らないが、歴史的建造物であるなどの理由で耐震基準を満たせないのなら、少なくともその旨、周知させるような注意書きが必要であろう。とにかく神社には鳥居だけでなく、灯篭など地震のときに簡単に倒壊する危険なものが多いので、注意喚起すべきである

私が小学生のとき、同じ小学校の児童が神社の灯篭に登って遊んでいて、石の下敷きになり重傷を負うという事件があったのを記憶している(1979年のこと)。例えば、東京の図書館の書庫などには「地震時には書庫は危険ですので、書庫の外に出てください」などの注意書きがあるのだが、神社にも必要である。神社境内の地震時の危険性を認識できてなければ、避難所として神社境内に集まってしまう住民もいるはずだ。地震のとき、神社境内は危険である

地震の時に机の下に隠れる、あわてて外に飛び出さないなどは、大多数の日本人にとっては常識で、文化といってもよいくらいなのだが、外国人にとってはそうではないようである。地震に慣れない国の人がパニックを起こしてベランダの窓から飛び降りて怪我をした例もあり、外国人が多いところでは注意が必要とされる。

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2007年3月19日 (月)

血圧が高い 第3報

3月13日(火)のブログに「続 血圧が高い」と題して、12日の血圧の下が105を超えてしまっていて驚いたと書いた。

Ketsuatsu それで、3月13日(火)から節制をはじめて、塩分摂取量を減らすことを心がけたところ(1日に塩分10グラム以下)、13日から16日にかけて顕著に血圧が下がった(左図)。しかし、16日~18日にかけて、卒業記念パーティなどがあって、バイキング料理を好き放題に食べて飲酒してしまったら、また血圧が元に戻って、高くなった。血圧には食事の影響が日単位で表れることを実感した

基本的には、これまでと違う食事をしているので、全体的な傾向としては血圧が下がる傾向にあるようである。

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2007年3月17日 (土)

登山道スレスレに張られた高圧送電線 27万5000ボルト

一連の臨界事故隠ぺいに関する北陸電力社長の悠長な記者会見を聞いていて、こんなことがあったのを思い出した。

1111127_imgs2003年3月30日の日曜日、石川県辰口町にある観音山(かんのんやま)に登った。標高402mの小さな山でものの30分ほどで山頂に着いた。 山頂にある広場から道が続いていたので、少し下っていくと、高圧送電線が登山道の上部を横切っていて、その送電線の高さが地表からほんの4~5メートルほどしかなかったのである。測ったわけではないが、電車の架線なみの高さだった。(写真は2枚とも2003年3月30日撮影)

1111126_imgs 北陸電力に電話して確認すると、加賀東・金津線という名称の高圧送電線のNo.57鉄塔付近で、流れている電圧は27万5000ボルト、裸電線である。

北陸電力の担当者の話によると、法令で地表から7メートル離すように定められているので、そんなはずはないという話であったが、どう見ても7メートルの高さはなかったのである。

高電圧に対する安全距離は27万5000ボルトの場合、3メートルである(『第7版実験を安全に行うために』、化学同人刊)。3メートル以下に接近すれば、電線に接触しなくても、雷が落ちるように放電が起こり閃絡(フラッシュオーバ)することもある

私の目測どおり約4~5メートルだとすると、雨の日に登山者が傘をさして、下を通れば閃絡の危険もあるわけである

北陸電力小松支所に上記の旨、電話したのは2003年4月3日で、「見に行ってみる」と担当者は回答していたのだけれど、その翌年2004年6月13日に同じく観音山に登ったときに、もう一度送電線の状況を見てみたら、状況はまったく同じであった。担当者は本当に「見に行った」だけなのだろうか・・・。こういう状況になってしまった経緯はよくわからないが、何か対処はできないものか。

ちなみに石川県内の登山道や林道には、「加賀東・金津線 No.57 ↑」のような案内プレートがあちこちに貼ってある。これは、電力会社の送電線巡視のための案内なのだが、登山用の道しるべと非常に紛らわしいのである。はじめそれと知らず案内に従って行ってみると、送電線鉄塔があって行き止まりになっていたことがあった。一緒に登った仲間が間違えて、送電線巡視路に迷い込むところだったこともある。きちんと「送電線巡視用」などとプレートに一緒に記載すべきである。

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2007年3月16日 (金)

北陸電力、志賀原発で臨界事故

北陸電力志賀(しか)原発1号機(沸騰水型、出力54万kW)で1999年6月の定期検査中、制御棒3本が外れ、原子炉が誤って臨界状態に達していた。臨界状態が制御不能のまま15分間続くという、想定外の重大な事故にもかかわらず、北陸電力は国などに報告せず隠蔽していたという。

この事故は死傷者こそでていないものの、事故そのものは、その3ヶ月後に起きた茨城県東海村のJCOの臨界事故よりも深刻であり、重大である。にもかかわらず、新聞、テレビ等報道機関の取り上げ方が、思ったよりも小さいのが気になる。今回の事故は原子力推進派の人でさえ、これはちょっと・・・と思うのではないだろうか。ちなみに私は原子力反対派でも、推進派でもないことを前置きしておく。物議を醸すので、原子力のことはブログのネタにしないつもりだったのだが、今回は例外である。

地元の北國新聞夕刊(2007年3月15日付)では、1面の右側3分の2だけを使って、黒地に白抜きで「臨界事故報告せず」、副題に「志賀原発 99年検査中」、「北電、緊急停止も隠ぺい」、「保安院 1号機停止指示へ」である。(注 地元では北陸電力を北電と略す。決して北海道電力のことではない。ちなみに北大というと北陸大学で、キン大は金沢大学を意味する

朝日新聞の扱いも似たようなもので、1面右側3分の2の取り上げ方だった。

昨夜の報道ステーション(テレビ朝日)でも扱いはトップではなく、都知事選、市長宅にトラックが突っ込んだ話に次いで3番目であった。

報道機関は、事故の重大性が認識できていないのか、死傷者がでなければ大きく取り上げないというガイドラインがあるのか知らないけれども、よくある他の原発の不祥事と同じレベルで扱うには深刻すぎる事故である。

新聞には、隠ぺいしたということだけを批判対象にしているような論調があるけれども、この事故は隠ぺいされずに公表されていたとしても、重大かつ深刻な事故である。

臨界とは、核分裂が連鎖反応によって継続し、熱や放射線を出している状況を言う。臨界事故とは、この臨界状態を制御できなくなった状態である。

誤解が多いが、営業運転している原発はすべて臨界状態である。ただし、普通はきちんと制御されている。今回のは15分もの間、臨界状態が制御できなかった重大な臨界事故である。

例えば、割りばしにライターで火を付けるとする。すこしあぶっただけでは、ライターの炎を離すと火は消えてしまう。しかし、しばらくあぶっていると、割りばしに火がつき、ライターの炎を離しても、消えなくなる。ライターを外すと火が消える状態ではまだ臨界ではなく、火がついたままになる状態が臨界である。制御できないと一気に燃え広がることもある。割りばしの例では、燃焼によって出てきた熱が、となりのまだ燃えてない部分の着火に使われ燃焼が継続するという連鎖反応だが、核燃料では核分裂によって発生した放射線が、まだ分裂していない燃料の核分裂に使われるという形での連鎖反応である。

いずれにしろ制御できていないと、割りばしが一気に燃え上がるのと同様、原子炉が最悪の事態になりかねない。

今回のニュースを聞いて、背筋が凍ったのは次の事柄である。

  • 定期検査中のため、原子炉を覆う格納容器と圧力容器のフタは開けられたままだった。
  • 自動停止信号で緊急に制御棒を挿入する安全装置が解除されていた。
  • 弁の開閉に関する日立製作所作成の作業手順書に誤りがあった(これがそもそもの発端だった)。
  • 複数(3本)の制御棒が落下した。

チェルノブイリの原発事故でも想定し得ない複数の運転規則違反が、事故の原因となったことを知っていたから、想定し得ないありえないはずの事故が北陸でも起こってしまうのではと不安が頭をよぎった。

大学生のとき卒業研究で、ナトリウム22という放射性物質(RI)を取り扱うことになり、放射線の害について勉強したことがある。それで、原子力工学科で開講されていた「放射線安全工学」という講義を受けたときに、こんな問題が出題されていたのを覚えている。

チェルノブイリ原発事故の第一報で「現場にはキノコ雲が見え、数千人規模の住民が即死した」という現地報道が伝えられたことがある。この報道はもちろん間違いであったのだが、これが間違いであることを科学的に説明しなさい。

準備された模範解答がどういうものかわからないが、最悪の原発事故でも、核爆弾のような強力な爆発を起こすことはないということが一つ。もう一つは大量の放射線を浴びたことによる急性放射線障害では即死せず、しばらくたった後に悲惨な容態となって死亡するということであろう。ただし、核爆弾の爆発では、火傷で即死もありえる。

核爆弾は強力な爆発を起こすように、別の爆薬が核燃料の周囲に配置されて、しかも高度な技術で同時に爆発させることが必要とされているそうなので、原発事故での爆発の規模は核爆弾に比較すれば小さいものであろう。

しかし、原発事故の事故で、放出される放射性物質の量は、核爆弾の比ではない。チェルノブイリの事故では、広島型原発500個分の放射性物質が環境中に放出されたと伝えられている。昔、よく出回った地図に、チェルノブイリの事故で汚染された地域の広さを日本列島に当てはめると日本本土がほとんどカバーされてしまうというのがあったが、同様の最悪の事故が起こればその通りになりかねないのだろうか。

アメリカでスリーマイル島の原発事故(沸騰水型)が起きたとき、ソ連の原発関係者はソ連の原発はアメリカと形式が違うから大丈夫ですと言っていた。しばらくして、チェルノブイリの原発事故(黒鉛減速軽水冷却型炉)が起きた。今度は、日本の原発関係者が、日本の原発はソ連と形式が違うから大丈夫と主張していた。確かに形式は違っていて、燃える黒鉛を使用していないからチェルノブイリタイプの事故は起こりにくいというのは事実かもしれない。しかし、形式の似たスリーマイル島と同レベルの事故は想定しておく必要があるだろう。

今回の事故は、もう少しでスリーマイル島レベルの事故になるところだったのではと思えてならない。

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2007年3月13日 (火)

続 血圧が高い

昨年(2006年)の9月24日のブログに「血圧が高い」と書いたとき、上が138、下が85くらいだった。久しぶりに血圧を測ると、そのときより高くなっていたので驚いた。寒さのせいか。特に昨日、朝から頭が重い気がしていたので、家に帰って血圧を測ると、下が105を超えていて、一瞬、固まってしまった。

3月10日 午前10時 154 99 脈拍68、140 97 脈拍71、138 95 脈拍73

      午後3時  136 93 脈拍70、134 92 脈拍71

3月12日 午後8時  150 106 脈拍77、132 99 脈拍82、141 100 脈拍74

      午後9時  148 97 脈拍90、149 96 脈拍85、142 89 脈拍87 

3月13日 午前9時  158 99 脈拍69、140 95 脈拍68、132 99 脈拍67

      午後7時  133 104 脈拍82、135 97 脈拍 85

血圧の下が高いのは、血管をホースにたとえると、中の液体で常にパンパンに膨れ上がっている状態と同じだそうである。上が高いのは、心臓が脈打ったときに血管がパンパンになっているのだが、下が高いのは心臓が脈打ってないとき(拡張期)でも血管が膨れ上がった状態になっているようである。

塩分を取りすぎると、血液中のナトリウム濃度が増える。そのナトリウムを薄めようとして血管の中に水分が集まるため、血管を流れる液体が増えて、膨れ上がってしまうそうだ。だから、塩辛いものを食べた後、水を飲んで体内で薄めても、無意味である。

それで、食事の塩分量に気をつけてみることにした。以前、99年に出版した『図解雑学ダイオキシン』のコラムで、私はカップラーメンを食べるのをやめましたと書いたが、とりあえず今後、外食のラーメン、ポテトチップスを食するのをやめて様子を見ることにした。

コンビニのおにぎりを見ると、Na 360mgのように記載してあり、カップヌードルもナトリウム2.0グラムなどと記してある。(注意 1グラム=1000mg 「タウリン1000ミリグラム配合」と「タウリン1グラム配合」では「1000ミリグラム配合」の方がたくさん入っているように感じる人が多いらしいが原則として同じである

さらに、勘違いされやすいが、Na(ナトリウム)の量と、塩分量(食塩、塩化ナトリウムの量)とはまったく異なる。塩化ナトリウム(NaCl)には化学式を見てわかるとおり、Na(ナトリウム)と一緒にCl(塩素)がくっついているので、塩分量で記したときの方が数字は大きくなる。Naの原子量23.0、Clの原子量35.5なので、

Na量×(23.0+35.5)/23.0=塩分量

つまり、Na量×2.54=塩分量

である。

塩分量は一日10グラム以内におさえるのが理想的とされているが、これはナトリウム量(Na量)だと一日3.9グラム以下におさえる必要があるということになる。

食品に表示されているナトリウム量と塩分量を混同するととんでもなく塩分を取りすぎることになるので要注意。

そもそも換算しやすいよう、塩分量で表示すればいいのだが、それだと食塩から出てくるナトリウムしか計算できなくなるので、不都合なのだ。食品にはいろいろな添加物が入っていて、味の素として使われているグルタミン酸ナトリウムからもナトリウムは出てくるし、防腐剤の安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムなどなどからもナトリウムが出てくるので、これらを合計しないと健康への悪影響を見積もれないのである。

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2007年3月 9日 (金)

超伝導フィーバーの追憶

私の経歴は学部が工学部工業化学科卒業、大学院博士課程は工学系研究科応用化学専攻修了であるが、修士課程は工学系研究科超伝導工学専攻という全国でも珍しい専攻名の修了である。

これは実は初めから志望したわけではなく、工業化学専攻で入試を受け入学する予定だったのが、新設の超伝導工学専攻の定員を満たす必要があるという一種の政治的な理由で、意向を確認された上で振り替えられたのであった。超伝導工学専攻は新設計画時は「超電導工学専攻」と表記していたが、これもなんらかの理由で出来たときには「超伝導工学専攻」に変わっていた。意味は同じだが、超電導は通産省、超伝導は文部省がよく使っていた表記である。

そういう経緯なので、超伝導工学専攻修了と言っても、超伝導自体の勉強や研究をしていたわけではない。固体の電気的性質の研究を行っていただけである。

ただ、超伝導関係で有名な先生が多く周辺にいらしたので、超伝導関連の話はよく伺っていた。

超伝導フィーバーのきっかけとなった最初の研究は、1986年の春にIBMチューリッヒ研究所のベドノルツとミュラーがバリウム-ランタン-銅系の複合酸化物で、高温超伝導の「可能性」を指摘した論文である。実際、彼らの論文のタイトルは"Possible high Tc superconductivity in the Ba-La-Cu-O system", (J. G. Bednorz, and K. A. Muller. Z. fur Phys., Vol. 64, p.189−193, 1986)であり、見てわかるように「超伝導の可能性」(「可能性のある超伝導」、「ありえるかも、超伝導」)という弱い表現である。おそらく超伝導であるということを確定させるためには、マイスナー効果を確認するだとか、臨界電流を調べるだとかの実験が必要なために、弱い表現にとどまったのだろう。レフェリー(論文査読員)にそう指摘されて変更したのか、初めからこの弱い表現だったのかは不明である。とにかく、それまで超伝導といえば金属であり、酸化物でしかもより高温で超伝導状態になるというのは本当だったら衝撃的なことであった。

これが1986年の暮れに、超伝導を専門とする日本の研究グループによってホンモノであることが確認された。この結果を1986年12月、米国ボストンのMaterials Research Societyでの特別講演で北沢宏一先生(当時東大工学部助教授)が速報として発表し、超伝導フィーバーを巻き起こしたのであった。このフィーバーで固体試料をすりつぶすメノウの乳鉢が急な需要増加で、地球上から消えてなくなったという噂もあった。

1987~1988年の北沢先生の講義はほとんど休講状態だったと記憶している。研究者として一生に一度経験できるかどうかわからないような大騒ぎの中に身を置いたのだから当然だろう。誰も文句を言っていなかった。自分の研究分野でそういう大騒ぎが起こることだけでも、研究者として一生に一度出会えるかどうかの幸運である。

1989年になると少し落ち着いてきたのか、講義で北沢先生の話を伺える機会が増えた。ほとんどが超伝導フィーバーに関するエピソードであった。

フィーバーの最中、常温超伝導体の報告が相次いだ。1987年5月にはインド国立物理学研究所が299K(26℃)である種のセラミックスに含まれる相が超伝導を起こしたと発表。1987年6月にはアメリカのエナジー・コンバージョン・デバイシズ社が280K(7℃)、ソ連モスクワ大学低温研究所のモシャルコフが308K(35℃)と報告した。1987年6月25日付けの日経新聞では、電総研(通産省工業技術院)が「摂氏50度以上の新物質を開発」とスクープ。住友電工も27℃で1週間以上超伝導状態の続く物質を発見と報告した。私は大学に入学した直後だったので、新聞報道をかなり興味をもってチェックしていたのだった。

20年たった今では、その後の話を聞かないので何かの間違いだったと思われるのだが、ある先生はこれらの物質をUSO(Unidentified Superconducting Object)と命名されていた。

ちなみに未確認の常温超伝導の報告が相次いだ理由として、こんなことが考えられるという。電気抵抗がゼロになることを確認するためには、まず直流電源を使って一定電流を試料に流し、そのときに生じた電圧を測定して、オームの法則(抵抗=電圧/電流)で抵抗を求めるのが一般的である。つまり、測定した電圧がゼロなら、抵抗もゼロである。

しかし、酸化物には熱電変換効果(ゼーベック効果)といって、試料の両端に温度差があると電圧(熱起電力)を生じる性質がある。測定中に試料に温度勾配があると、試料内部に電圧(熱起電力)を生じる可能性がある。この熱起電力と実際に生じていた電圧が打ち消されて、電圧の測定値がゼロになってしまっていたのではないかと噂されている。ちなみに熱起電力の影響がないことを確認するために、流す電流を反転させて(プラスとマイナスを逆にして)、同じ数値が出るか確認するのが基本である。また、直流4端子法と言って、電流を測る電極と電圧を測る電極を別々に試料に装着することも基本である。

ところで、なんで急に超伝導フィーバーのことを思い出したかというと、一昨日(3月7日付け)の朝日新聞に「実用化探る高温超伝導ケーブル 送電試験、米で本格化」と題した記事が出ていたからである。酸化物の高温超伝導体は発見当初から加工しにくいことが難点に挙げられていた。金属の超伝導体なら曲げたり延ばしたりできるのだが、酸化物セラミックスだと陶器と同じで曲げると折れてしまうのだ。その難点を克服しての実用化である。

印象的なのは同系統の物質の発見から20年あまり経っているということである。特許なら切れてしまう時間だ(今、特許は原則、出願から20年間有効。当時は特許成立から15年間有効だったはず)。

一昨年(2005年)、愛知万博でJR東海のパビリオンを訪れたときにも、酸化物超伝導体の展示をしていたので、係員に確認したら、2005年秋から酸化物超伝導体を使ったリニアモーターカーの走行試験に入りますという話であった。

酸化物超伝導体、どこにいってしまったのかと思っていたが、そろそろ実用化されそうである。

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2007年3月 8日 (木)

アスベストは塩酸、りん酸に溶ける -アスベストの無害化

悪性中皮種など肺がんの原因になるアスベスト(石綿)。昔はいたるところで使われていた。小学校では石綿付き金網を使っていたし(理科の教科書に登場していた)、家では蚊取り線香を置くシート(カナックという商品名で売られていたと記憶している)や豆炭あんかにもアスベストが使われていた。建築資材としては、断熱用にアスベストが壁に吹きつけられていたし、タイルにもアスベストを含むものが多かったらしい。

処分に困るのが、吹き付けられたアスベストである。

P3200045s 吹き付けられたアスベスト(光学顕微鏡写真)は、セメントで一部分が固定されている以外は、空気中にむき出しになっているので、飛散しやすい。写真の鋭い繊維がアスベスト、白い粉末が吹き付けに用いられたセメントである。

アスベストを飛散しないように固めるのではなく、別の物質(化学形態)に変えてしまう技術として溶融処理がある。しかし、もともと熱に強いアスベストであるから、溶融処理にはかなりの高温を要する。

意外と知られていないが、アスベストは酸に簡単に溶ける。以下に述べる実験は、アスベストの中でも、白石綿(クリソタイル、Chrysotile)について行ったものである。既に論文報告などされていて("A Novel Approach for the In-Situ Chemical Elimination of Chrysotile from Asbestos-Containing Fireproofing Materials", J. Block ほか, Environmental Science and Technology, Volume 34, pp. 2293-2298 (2000))、学術的には何も新しくないので、下にノートしておく。

セメント(吹き付け材)を含む白石綿を、濃塩酸(濃度36%)に加えたところ、発泡して溶解し、溶液は黄褐色になった。セメントも一緒に濃塩酸に溶解した。(黄褐色なのは3価の鉄イオンと思われる)

同じくセメントを含む白石綿を、リン酸に加えたところ、激しく発泡して(特異臭)、溶解した。リン酸水溶液の濃度は34~85%の範囲で行ったがすべて同様だった。

白石綿を溶解させた後の酸の処理をどうするかという問題が生ずるが、酸はアルカリを加えて中和すれば下水放流できるので(他の有害物質を含んでいないことが前提)、アスベストを高温で溶融処理するのに比べれば、環境負荷は低いのではないかと考えている。

アスベストを含むかどうかチェックする方法として、粉末X線回折がある。気をつけなければならないのは、吹き付けに用いられたアスベストをそのまま測定しても、セメントのピークに埋もれてしまうため、検出されないのである。実際、上の顕微鏡写真の試料をそのまま測定したところ、白石綿のピークは観察されなかった。あれだけ大量に含まれているにもかかわらずである。このため、前処理としてセメント分をギ酸に溶かしてから、測定するように定められている。

私の雑感。アスベストの場合は、悪性中皮種という肺がんの中でも特殊な症状として現れた。この病気はアスベスト以外の原因ではならないので、衆目の一致するところで原因がアスベストと確定し、厳しく規制されるようになった。アスベスト以外にも有害なものは数多くあるが、もしそれらがこのように他の原因ではならない特殊ながんのような形で現れてくれれば、原因がクリアになり、対策がとりやすいのだろう。しかし、現状ではそうでないため、規制の是非があいまいになっているケースもある。色々な有害物質が現実にどの程度、がんの原因になっているか気になるところである。

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2007年3月 4日 (日)

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

光文社新書『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(太田直子著)を読んだ。読みやすい文体で、非常に面白い内容だった。著者の太田直子氏は映画字幕翻訳者である。

外国映画の字幕を作成する翻訳者(字幕屋)は、英語のセリフを100%聞き取れるくらいの英語力は持っているものだと思い込んでいたら、それがそうでもないらしい。

字幕や吹き替えに頼ることなく、ナマのせりふを自分の耳で聴き取って外国映画を楽しめたらどれほどいいだろう。辞書を引くことなく、すらすら外国語が読めたらどれほど楽ちんだろう。ああ、あこがれのバイリンガル。わたしには夢のまた夢だ。

と著者自身、書いている(p.37より引用)。これが一番印象的だった。すべての字幕翻訳者がそうではないだろうけれど、字幕翻訳者が英語のせりふを全部聞き取れず、英語台本を読みながら、辞書を引きながら翻訳しているのは意外だった。せりふをすべて聞き取れるかどうかは翻訳者の能力に依存するので一概には言えないが(中にはすべて聞き取れる人もいるだろう)、英語台本を見ながら訳すというのは一般的なスタイルらしい。

かくいう私もTOEICのスコアは950、リスニングが485、リーディングが465。満点が990点だから、リスニングは満点に近い点数なのだが、映画のせりふはさっぱり聞き取れない。これは映画の種類にもよって、OO7シリーズならだいたいわかるが、シュワルツネッガー主演映画になるとさっぱりである。なまりのある英語だと全然だめということだ。TOEICの高得点者で似たような話はよく聞く。日本語の達者な外国人が吉本新喜劇や寅さんを見てさっぱりわからないと言ってるのと同じであろう。

字幕作成でいちばん能力を必要とするのはせりふ1秒あたり4文字以内におさめるという字数制限だそうである。これは少しくらい融通を利かせて欲しいと思う。字幕を短くしたせいで逆にわかりにくくなり、観客がそこで意味を考え込むため、映画に集中できないという事態が起こりうる。実際、私が映画を見ていると、短く略された字幕の意味がとりにくいことがよくあって映画に集中できないのだ。

こんな例が載っていた(p.34)。

むっつり黙り込む女に男が問いかけるシーン。

男「どうしたんだ」 → 五文字以内

女「あなたが私を落ち込ませているのよ」 → 五文字以内

男「僕が君に何かしたか」 → 五文字以内

これらを字数制限にあわせて改変すると

男「不機嫌だな」

女「おかげでね」

男「僕のせい?」

著者の太田さんも書いているが、2番目の「おかげでね」がかなり苦しい。私が映画の観客だったらすんなりいかず、数秒考えて意味がとれるだろう。字数制限オーバーでも「あなたのせいよ」くらいの方が、見ていて引っかからなくてよい。

英語以外の言語の映画で、英語の映画で活躍している字幕翻訳者の名前を見かけることがよくあって、「おっ、○○さん、△△語もできるのか」と感心していたことがあったのだが、これは誤解だった。英語以外で作られた映画には、原語台本と英訳台本が準備されていて、普通は英訳台本を見ながら訳すのだそうだ。それだと重訳(翻訳の過程が2回入る)で意味がかけ離れる場合があるので、最終チェックを原語に詳しい人にやってもらうとか。意外だった。

字幕屋は、字幕を英語台本と映画を渡されてから約1週間、早ければ3~4日で仕上げるそうである。その間に翻訳に必要な関連知識も調査しなければならないのだろうから、かなりタイトな時間制限である。下手をすると、拙速ということにもなりかねない。その間、寝る間もないのではないかと人ごとながら心配している。

ドストエフスキー『白痴』はNHKの放送コードにひっかかるのではと悩んだ話。日本人は「忍びがたきを忍び・・・」と玉音放送を聞くシーンで終戦をイメージするが、外国人はそうはいかない。これと同じことが外国映画にもあって字幕屋泣かせだという話。慣れない吹き替え翻訳に臨んだ際、訳を自分で読み上げて映像と時間を合わせたのに、せりふが足りなくて間が持たないとクレームがついた話。声優さんと著者の太田さんの滑舌が全然違うからという落ちだった。(太田さんはゆっくり話す人なのだろう)

私は映画を見る方だが、どうも吹き替え版が好きになれない。字幕派である。テレビでやっている吹き替え版も鼻につく。役者の味のあるナマの肉声、息遣い、せりふ回しが聞きたいというのもあるが、そのナマの肉声から乖離した吹き替え声優の滑舌のよさが好きになれないのである。吹き替え声優の数が少ないのか、どの映画でもだいたい同じような声質、せりふ回しの声優が吹き替えをやっていて、うんざりしてくる。あれはあれで日本語版吹き替えのスタイルとして確立されているのものかも知れないが、もう少しバリエーションが欲しいところである。

こう思っていたら、さっきテレビで、なだぎ&友近というお笑いユニットが「ディランとキャサリンのシネマ青春白書」なんていうコントをやっていて、吹き替え声優を思いっきり揶揄して、笑いを取っていた。揶揄されるほど吹き替えがマンネリ化されているということだろう。

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