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2007年3月16日 (金)

北陸電力、志賀原発で臨界事故

北陸電力志賀(しか)原発1号機(沸騰水型、出力54万kW)で1999年6月の定期検査中、制御棒3本が外れ、原子炉が誤って臨界状態に達していた。臨界状態が制御不能のまま15分間続くという、想定外の重大な事故にもかかわらず、北陸電力は国などに報告せず隠蔽していたという。

この事故は死傷者こそでていないものの、事故そのものは、その3ヶ月後に起きた茨城県東海村のJCOの臨界事故よりも深刻であり、重大である。にもかかわらず、新聞、テレビ等報道機関の取り上げ方が、思ったよりも小さいのが気になる。今回の事故は原子力推進派の人でさえ、これはちょっと・・・と思うのではないだろうか。ちなみに私は原子力反対派でも、推進派でもないことを前置きしておく。物議を醸すので、原子力のことはブログのネタにしないつもりだったのだが、今回は例外である。

地元の北國新聞夕刊(2007年3月15日付)では、1面の右側3分の2だけを使って、黒地に白抜きで「臨界事故報告せず」、副題に「志賀原発 99年検査中」、「北電、緊急停止も隠ぺい」、「保安院 1号機停止指示へ」である。(注 地元では北陸電力を北電と略す。決して北海道電力のことではない。ちなみに北大というと北陸大学で、キン大は金沢大学を意味する

朝日新聞の扱いも似たようなもので、1面右側3分の2の取り上げ方だった。

昨夜の報道ステーション(テレビ朝日)でも扱いはトップではなく、都知事選、市長宅にトラックが突っ込んだ話に次いで3番目であった。

報道機関は、事故の重大性が認識できていないのか、死傷者がでなければ大きく取り上げないというガイドラインがあるのか知らないけれども、よくある他の原発の不祥事と同じレベルで扱うには深刻すぎる事故である。

新聞には、隠ぺいしたということだけを批判対象にしているような論調があるけれども、この事故は隠ぺいされずに公表されていたとしても、重大かつ深刻な事故である。

臨界とは、核分裂が連鎖反応によって継続し、熱や放射線を出している状況を言う。臨界事故とは、この臨界状態を制御できなくなった状態である。

誤解が多いが、営業運転している原発はすべて臨界状態である。ただし、普通はきちんと制御されている。今回のは15分もの間、臨界状態が制御できなかった重大な臨界事故である。

例えば、割りばしにライターで火を付けるとする。すこしあぶっただけでは、ライターの炎を離すと火は消えてしまう。しかし、しばらくあぶっていると、割りばしに火がつき、ライターの炎を離しても、消えなくなる。ライターを外すと火が消える状態ではまだ臨界ではなく、火がついたままになる状態が臨界である。制御できないと一気に燃え広がることもある。割りばしの例では、燃焼によって出てきた熱が、となりのまだ燃えてない部分の着火に使われ燃焼が継続するという連鎖反応だが、核燃料では核分裂によって発生した放射線が、まだ分裂していない燃料の核分裂に使われるという形での連鎖反応である。

いずれにしろ制御できていないと、割りばしが一気に燃え上がるのと同様、原子炉が最悪の事態になりかねない。

今回のニュースを聞いて、背筋が凍ったのは次の事柄である。

  • 定期検査中のため、原子炉を覆う格納容器と圧力容器のフタは開けられたままだった。
  • 自動停止信号で緊急に制御棒を挿入する安全装置が解除されていた。
  • 弁の開閉に関する日立製作所作成の作業手順書に誤りがあった(これがそもそもの発端だった)。
  • 複数(3本)の制御棒が落下した。

チェルノブイリの原発事故でも想定し得ない複数の運転規則違反が、事故の原因となったことを知っていたから、想定し得ないありえないはずの事故が北陸でも起こってしまうのではと不安が頭をよぎった。

大学生のとき卒業研究で、ナトリウム22という放射性物質(RI)を取り扱うことになり、放射線の害について勉強したことがある。それで、原子力工学科で開講されていた「放射線安全工学」という講義を受けたときに、こんな問題が出題されていたのを覚えている。

チェルノブイリ原発事故の第一報で「現場にはキノコ雲が見え、数千人規模の住民が即死した」という現地報道が伝えられたことがある。この報道はもちろん間違いであったのだが、これが間違いであることを科学的に説明しなさい。

準備された模範解答がどういうものかわからないが、最悪の原発事故でも、核爆弾のような強力な爆発を起こすことはないということが一つ。もう一つは大量の放射線を浴びたことによる急性放射線障害では即死せず、しばらくたった後に悲惨な容態となって死亡するということであろう。ただし、核爆弾の爆発では、火傷で即死もありえる。

核爆弾は強力な爆発を起こすように、別の爆薬が核燃料の周囲に配置されて、しかも高度な技術で同時に爆発させることが必要とされているそうなので、原発事故での爆発の規模は核爆弾に比較すれば小さいものであろう。

しかし、原発事故の事故で、放出される放射性物質の量は、核爆弾の比ではない。チェルノブイリの事故では、広島型原発500個分の放射性物質が環境中に放出されたと伝えられている。昔、よく出回った地図に、チェルノブイリの事故で汚染された地域の広さを日本列島に当てはめると日本本土がほとんどカバーされてしまうというのがあったが、同様の最悪の事故が起こればその通りになりかねないのだろうか。

アメリカでスリーマイル島の原発事故(沸騰水型)が起きたとき、ソ連の原発関係者はソ連の原発はアメリカと形式が違うから大丈夫ですと言っていた。しばらくして、チェルノブイリの原発事故(黒鉛減速軽水冷却型炉)が起きた。今度は、日本の原発関係者が、日本の原発はソ連と形式が違うから大丈夫と主張していた。確かに形式は違っていて、燃える黒鉛を使用していないからチェルノブイリタイプの事故は起こりにくいというのは事実かもしれない。しかし、形式の似たスリーマイル島と同レベルの事故は想定しておく必要があるだろう。

今回の事故は、もう少しでスリーマイル島レベルの事故になるところだったのではと思えてならない。

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日刊現代ではなくて『日刊セイケイ』です。・・・とは言っても本当に何も知りません。  でも、僕は長崎出身なので、金子源次郎知事は顔は知らないけど、解ります。だって、親父さんは僕らの世代では有名な岩三さんです。確か金子水産の取締役じゃなかったかな・・・???。長崎では超有名な人だよ・・・。 ... [続きを読む]

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