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2007年3月 8日 (木)

アスベストは塩酸、りん酸に溶ける -アスベストの無害化

悪性中皮種など肺がんの原因になるアスベスト(石綿)。昔はいたるところで使われていた。小学校では石綿付き金網を使っていたし(理科の教科書に登場していた)、家では蚊取り線香を置くシート(カナックという商品名で売られていたと記憶している)や豆炭あんかにもアスベストが使われていた。建築資材としては、断熱用にアスベストが壁に吹きつけられていたし、タイルにもアスベストを含むものが多かったらしい。

処分に困るのが、吹き付けられたアスベストである。

P3200045s 吹き付けられたアスベスト(光学顕微鏡写真)は、セメントで一部分が固定されている以外は、空気中にむき出しになっているので、飛散しやすい。写真の鋭い繊維がアスベスト、白い粉末が吹き付けに用いられたセメントである。

アスベストを飛散しないように固めるのではなく、別の物質(化学形態)に変えてしまう技術として溶融処理がある。しかし、もともと熱に強いアスベストであるから、溶融処理にはかなりの高温を要する。

意外と知られていないが、アスベストは酸に簡単に溶ける。以下に述べる実験は、アスベストの中でも、白石綿(クリソタイル、Chrysotile)について行ったものである。既に論文報告などされていて("A Novel Approach for the In-Situ Chemical Elimination of Chrysotile from Asbestos-Containing Fireproofing Materials", J. Block ほか, Environmental Science and Technology, Volume 34, pp. 2293-2298 (2000))、学術的には何も新しくないので、下にノートしておく。

セメント(吹き付け材)を含む白石綿を、濃塩酸(濃度36%)に加えたところ、発泡して溶解し、溶液は黄褐色になった。セメントも一緒に濃塩酸に溶解した。(黄褐色なのは3価の鉄イオンと思われる)

同じくセメントを含む白石綿を、リン酸に加えたところ、激しく発泡して(特異臭)、溶解した。リン酸水溶液の濃度は34~85%の範囲で行ったがすべて同様だった。

白石綿を溶解させた後の酸の処理をどうするかという問題が生ずるが、酸はアルカリを加えて中和すれば下水放流できるので(他の有害物質を含んでいないことが前提)、アスベストを高温で溶融処理するのに比べれば、環境負荷は低いのではないかと考えている。

アスベストを含むかどうかチェックする方法として、粉末X線回折がある。気をつけなければならないのは、吹き付けに用いられたアスベストをそのまま測定しても、セメントのピークに埋もれてしまうため、検出されないのである。実際、上の顕微鏡写真の試料をそのまま測定したところ、白石綿のピークは観察されなかった。あれだけ大量に含まれているにもかかわらずである。このため、前処理としてセメント分をギ酸に溶かしてから、測定するように定められている。

私の雑感。アスベストの場合は、悪性中皮種という肺がんの中でも特殊な症状として現れた。この病気はアスベスト以外の原因ではならないので、衆目の一致するところで原因がアスベストと確定し、厳しく規制されるようになった。アスベスト以外にも有害なものは数多くあるが、もしそれらがこのように他の原因ではならない特殊ながんのような形で現れてくれれば、原因がクリアになり、対策がとりやすいのだろう。しかし、現状ではそうでないため、規制の是非があいまいになっているケースもある。色々な有害物質が現実にどの程度、がんの原因になっているか気になるところである。

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コメント

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