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2007年5月 6日 (日)

ジェットコースターの死亡事故についての雑感

2007年5月5日、大阪の遊園地「エキスポランド」で、6両編成のジェットコースターのうち2両目が脱線して大きく傾き、乗客の女性会社員が脇の鉄柵で頭を強く打って死亡する事故が起きた。

死亡事故を起こしたエキスポランドの幹部が記者会見で、「今後は金属疲労などを定期検査し、どれくらいの頻度で部品交換が必要か数値計算で明らかにしていきたい」と語っていた。これを聞いて正直、背筋が凍った。安全運行のための基礎データと思えるが、これまで全くやってきていなかったのである。ジェットコースターに限らず、どのような定期点検、部品交換を、どれくらいの頻度で行うと安全を保てるかといったノウハウは、安全運行に必要不可欠な基礎技術である。新幹線にしろ、新交通システムにしろ、その技術を確立して初めて営業運転が可能になるのである。記者会見を聞く限り、日本ではジェットコースターを安全に運行する技術が確立されているとはいえない

車両の設計を見ると、最後尾の車両以外は前方の左右2ヶ所に車輪があるだけである。鉄道車両のように前方と後方の左右4ヶ所を支えているのかと思っていたら、そうではないらしい。前方の車輪だけでは後方が引きずるようになってしまうが、それを連結部を通じて後ろ側の車両に任せてあるようだ。車輪は1ヶ所につき、レールを囲む形で上に2個、横に2個、下に1個である。この5個のセットを車両と固定する車軸(直径約50mm)が破断したのが、事故の直接的な原因である。折れた車軸は車輪の回転軸とは別の軸で、固定のためにだけ使用されている軸だ。

安全のための設計指針は、車軸の破断を想定するか、想定しないかで、まったく話が違ってくる。例えば、航空機の設計では、左右のエンジンのうち、片側が動かなくなることは想定してあるし、着陸時に前の車輪が出ないことも想定してある。ジェットコースターの設計時にどの程度の安全設計上の議論がなされて、どの程度のイレギュラーな出来事を想定するようになっているか不明で、そのような話を聞いたことがないので、おそらくそこまで議論されていないのではないかと推察される。

車軸の破断を想定するのであれば、一つの車軸が破断しても車両が傾いたり、脱落したりしないための設計が必要である。例えば、1両につき4ヶ所に車輪を装着し、1つが脱落しても安全に運行、あるいは停止できるようにする、もしくは連結部を強固にして、1両が脱落する状況となっても残りの車両で支えるなどである。

車軸の破断を想定しないのであれば、車軸の破断をあらかじめ防ぐために、定期的な非破壊検査、あるいは部品交換が必要になってくる。金属疲労は現状の定期検査で行われている目視や打音検査ではわからない

今回の事故でジェットコースターの監督官庁がエレベータなどの昇降機と同じく国土交通省であることをはじめて知った。そもそもジェットコースターのような遊園地の乗り物に関して、安全のための公的な技術基準が定められているのかどうか?業界に任せてあるのであれば、改めるべきであろう。ボルトの緩みがないか調べるといった当たり前の定期検査だけでなく、金属疲労などによる事故を未然に防ぐための定期検査、車輪やレールの磨耗状況、緊急ブレーキに関する具体的な技術基準、部品交換のガイドラインなどが必要になるのではと思う。

いずれにしろ、ジェットコースターの安全運行のための技術が未確立であることを、不幸にも死亡事故という形で露見してしまったといえる。亡くなられた方のご冥福をお祈りしたい。

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