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2007年6月20日 (水)

渋谷の温泉施設爆発事故 メタンガスの危険性

昨日、渋谷区松濤1丁目にある温泉施設「渋谷松濤温泉シエスパ」の従業員用施設で爆発事故が起き、建物が全壊、女性3人が死亡するという大惨事が起こった。

事故原因は今現在、確定されていないが、温泉と一緒にくみ上げられる天然ガス(主成分メタンCH4)の引火爆発ではないかと推定されている。まだ確定されてはいないが、天然ガス(メタン)が事故原因であると考えて、以下の話を進める。

メタンは無色、無味無臭である。不純物が混じっていれば、その臭いを感じることがある。ヘドロの発酵でメタンが発生するときは腐敗臭が不純物として混じっているが、温泉掘削のときに発生するメタンにはおそらく臭いなどついていなかったのだろう。一般家庭で用いられる都市ガス(13A)は約90%のメタンを含むが、メタンなど燃焼成分が無臭のため、わざわざ臭いがつけてある。メタンなど無臭の可燃性ガスを扱う場所では、人の鼻では役立たないので、ガス警報機が備え付けられているのが普通である。

メタンの爆発限界(燃焼限界)は、空気中の場合5~15容量%(体積で比べた濃度)である。5%より薄ければ爆発しないし、15%より濃くても空気(酸素)が足りないから爆発しない。メタンの場合は9.5%のときに化学量論組成(メタンと酸素が過不足なく反応)となり最も激しく爆発する。(※東京化学同人『化学辞典』はメタンの燃焼限界を15~50%と記載しているが同書にしては珍しく誤記である。5~15%が正しい。)

発熱反応によってできた火炎、いわゆる熱風のかたまりのようなものが、音速よりも速く伝わる場合を爆轟(ばくごう)という。爆轟でない場合は、爆燃(ばくねん)といい通常の燃焼とあまり変わらないが、爆轟となると衝撃波を伴い、破壊力は桁違いにすさまじくなる。今回の事故はどう見ても爆轟である。爆轟は密閉された場所、換気のない室内にガスが漏れ、引火したときに起こりやすい。密閉されているか、開放されているかで、破壊力が桁違いに変わるのである。同様に(あまり良い例ではないが)、火薬を開放系で爆発させてもあまり破壊力を持たないが(花火と同じ)、鉄パイプなど強固なところに密閉して着火すると爆発が桁違いに激しくなり、殺傷能力をもつようになってしまう。

ちなみに空気中にメタンガスが9.5%含まれる場合に爆轟を起こすと、理論計算では、秒速1801メートル、17.2気圧、2510℃となる(Chapman-Jougetの理論による)。

今回の事故は、換気の悪い室内上部にメタンガスが5~15%滞留しているところに何らかの原因で引火したものと推定される。

亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

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コメント

東京で生物を専攻してる学生です。
全ての記事をとても興味深く読ませていただきました。

ありがとうございます。 m(_ _)m

投稿: 純 | 2007年6月20日 (水) 20時47分

ガソリンスタンドを閉鎖する時、油を抜いた後にメタンガスを入れていますが、撤去の際そのまま切断しても爆発等の危険性はないのでしょうか。
ご存知の方教えてください。

投稿: dakkus1018papa | 2010年1月30日 (土) 16時13分

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