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2007年6月22日 (金)

東京農工大でフッ化水素による事故

渋谷の温泉スパ施設の爆発事故の影に隠れてしまって、あまり大きく扱われていないが、6月20日午後7時55分頃、東京農工大工学部1号館3階(東京都小金井市中町)で、トルコからの男子留学生(24)とイエメンからの男子留学生(32)の2名が、シリコン加工の実験中に、使った液体を廃液用のポリタンクに捨てたところ、突然フッ化水素ガスが噴き出して、顔面などに浴び、顔にやけどの軽傷を負った。駆けつけた学生3人と男性教員(54)の4人もガスを吸って気分が悪くなるなどし、計6名が病院に搬送された。いずれも症状は軽いという。

※読売新聞は「フッ素ガスが発生」としていたが、同紙にしては珍しく誤記である。正しくは「フッ化水素ガス」だ。通常の化学反応でフッ素ガス(F2)が発生することはまずない。仮にフッ素ガス(F2)が発生したとしても、空気中に存在する水分と反応してフッ化水素(HF)に変化してしまう( 2F2 + 2H2O → 4HF + O2 )。それほどF2の反応性は高く、フッ化物に変わりやすい。もしF2だとしたら、被害はさらに大きくなっていただろう。

フッ化水素HFも、非常に高い反応性を持っている。廃液用のポリタンク内で、何らかのフッ化物(フッ素化合物)と強酸が反応して、フッ化水素が遊離、発生した可能性が高いフッ化水素自身は弱酸(腐食性は強いが、酸としては弱い)なので、フッ化物に強酸が加わると、弱酸であるフッ化水素が遊離する(弱酸遊離の反応)。廃液ポリタンク内でのこういった反応には、気をつけておかねばならない。普通は廃液の種類別にポリタンクが分類されているが(分類のされ方は大学によってまちまち)、研究室で使用している薬品をよく把握し、何と何を混ぜてはいけないか研究室内で徹底しておく必要がある。例えば、酸化剤と可燃物を混ぜてはいけないなどは、基本中の基本だが、危険な組み合わせは事実上、無限にあるので、薬品を使う前によく考える必要がある。

フッ化水素が水に溶けた酸をフッ酸というが、学生実験中、フッ酸が手の甲にかかっただけで手が倍近くに腫れ上がった事故を身近に経験した。処置が遅れて、フッ酸が手の内部まで腐食すれば、手を切断しなければならなくなるところである。

他にも、恨みに思っている同僚の靴にフッ酸を塗ったところ、同僚がその靴を数日間、はき続けたために、フッ酸が骨を侵し、両足首から下を切断せざるを得なくなった事件もあった。この事件は被害者も加害者も、日本で働く中近東の人であったように記憶している。

フッ酸は、これほど危険なので、できることなら使いたくないのだが、ガラス、ケイ素酸化物を加工するのに適しているため、産業上、よく使用されている。きれいなガラスをフッ酸で加工すれば、表面が侵されて、すりガラスになる。

フッ化水素(フッ酸)は、「毒物」に分類されている(劇物よりも毒性が高いという位置づけ)。高速道路を、化学関係者でドライブしているとき、「」のプレートをつけたタンクローリーの後についたので、物質名を確認しろということになり、見ると「弗化(フッ化)水素」と書いてあった。「車間をあけないと、すりガラスになってしまうぞ」と、冗談を言い合ったことがある。

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コメント

前略
 フッ化ナトリウムNaFと塩酸又は胃酸HClはフッ化水素HFを発生するという見解があります。HFは、化学反応としては、理論的に可能かもしれませんが、実際的に常温又は胃内で化合・発生するものでしょうか? 化学的及び生体的に、HFの化合・発生の条件、例えば温度and/or加熱、pH、触媒その他の条件を教えて下さい。 

投稿: 松田政登 | 2009年4月11日 (土) 03時40分

前略
 フッ化ナトリウムNaFと塩酸又は胃酸HClはフッ化水素HFを発生するという見解があります。HFは、化学反応としては、理論的に可能かもしれませんが、実際的に常温又は胃内で化合・発生するものでしょうか? 化学的及び生体的に、HFの化合・発生の条件、例えば温度and/or加熱、pH、触媒その他の条件を教えて下さい。 

投稿: 松田政登 | 2009年4月11日 (土) 03時43分

前略
 フッ化ナトリウムNaFと塩酸又は胃酸HClはフッ化水素HFを発生するという見解があります。HFは、化学反応としては、理論的に可能かもしれませんが、実際的に常温又は胃内で化合・発生するものでしょうか? 化学的及び生体的に、HFの化合・発生の条件、例えば温度and/or加熱、pH、触媒その他の条件を教えて下さい。

投稿: 松田政登 | 2009年4月11日 (土) 03時45分

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虫歯 の原因は食品の糖や細菌たち。これらを防ぎ、取り除く物の力を借りて、虫歯 を予防しましょう。《フッ素》歯 の質を強化し、酸の生産を抑えます。フッ素入り歯 磨き剤などを使用しましょう。《キシリトール》イチゴやラズベリー、ホウレンソウなどに含まれているとても安全な甘味料で、カロリーは砂糖より25%も低く、虫歯 のもととなる酸が発生しません。さらにキシリトールを長期にわたって使用すると、砂糖からも酸を生産しなくなるのです。《唾液》食事などで発生した酸を中和し、最石灰化(失われ...... [続きを読む]

受信: 2007年6月28日 (木) 18時54分

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