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2007年6月23日 (土)

渋谷の事故で爆発したメタンの量はどのくらいか? 大ざっぱな見積もり

6月19日の渋谷温泉スパ施設の爆発事故で、全壊した従業員施設は鉄筋コンクリート造り地下1階、地上1階建て、建築面積が89平方メートルである。爆発で、屋根やコンクリート製の壁が吹き飛び、1階のコンクリート製の床は崩壊し、残るのは瓦礫と鉄骨だけの無残な姿になっていた。

私の実験室でも、引火、爆発の可能性のあるガスを使用しているので、いったいどれくらいの量が滞留して、爆発すれば、あのような鉄筋コンクリート造りが、全壊するのか非常に気になった。

そこで報道されているデータだけから、だいたいの量を見積もってみた。以下は、その非常に大雑把な計算。桁が合っていればいいほどの粗い見積もりである。

爆発に伴うエネルギーで、①~③の被害が起こった。

① 鉄筋コンクリートが20cm角ほどのコンクリート片に粉砕された

② そのコンクリート片が半径75メートル以上に飛散した。(朝日新聞「施設のコンクリート片やガラス片は円を描くように半径75メートル以上に飛散していた」)

③ 半径120メートルで爆風被害(風圧による被害)があった。(40メートル地点で、80cm四方の窓が割れた)

物理的に言うと、「メタンの燃焼反応で発生した熱エネルギーが①~③の仕事をした」ということになる。熱エネルギーが100%仕事に変換されることはないから(熱力学第二法則)、①~③の「仕事」に必要なエネルギーよりも発生した熱エネルギーは大きい。仕事をさせるために組み立ててある「ガソリンエンジン」でさえ、ガソリンの燃焼熱のうち、仕事に変換されるのは16%ほどである。だから、この爆発では、メタンが燃焼して発生した熱のうち、16%以下が建物の破壊という「仕事」に変換されたのではと考えられる。この爆発では、仕事に変換された割合は10%程度だと見積もっても、そう外れてはいないだろう。

建築面積が89m2なので、壁の高さが2.5m、壁、床の厚みが15cmと仮定すると、壁、床、天井に使用されているコンクリートの体積は合計約41立方メートル、重量にして約94トンである。

① この重量94トンの鉄筋コンクリートを、20cm角のコンクリート片に粉砕するのに必要なエネルギーはどれくらいか?ということになる。20cm角の鉄筋コンクリートの断面を1ヶ所、完全に破断するには、だいたい数トンの荷重を数cmにわたって、加える必要がある。このエネルギーをすべて合計すると20MJ(メガジュール)~50MJほど。だいたい10の7乗ジュールの桁(オーダー)であろう。

② コンクリート片を75メートル遠方に飛散させるには、水平に対して45度の上方向に向けて初速27m/sで飛ばす必要がある。94トンすべてがその運動エネルギーで四方八方に飛散したと考えた場合、運動エネルギーは35MJとなる。これも10の7乗ジュールの桁である。

③ 80cm四方のガラスを割るには約5000N(ニュートン)の力が必要である。この力でガラスを10cmほど動かすエネルギーを、半径40メートル地点でもっていたとすると、風圧のエネルギーの合計は16MJ。これも①②と同じく10の7乗ジュールの桁である。

以上より、おおざっぱに、この爆発は、およそ10の8乗ジュールほどの「仕事」をしたと見積もられる

これほどの仕事をするにはメタンの燃焼熱として、10の9乗ジュールほどの発熱があったはずである

メタンの燃焼熱は891kJ/molなので、25℃における体積でいうと、10の9乗ジュールの発熱は27立方メートルのメタンに相当する。

概算では27立方メートルほどのメタンが爆発したのではないかと、粗く見積もられる。

6月20日のブログの爆発限界のところに書いたが、爆発のためには、空気と混合して、15%以下の濃度となることが必要である。

15%とすると180立方メートルのメタン・空気混合気体が、部屋に滞留して爆発したことになる(10%とすると270立方メートル)。地下室の天井高が不明だが、地下室の体積のほとんどすべてがメタン・空気混合気体で占められていた計算になりそうである

なお、以上は概算なので、実際には一桁下から、一桁上の範囲でずれている可能性もある。

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