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2007年7月22日 (日)

拙文が大阪教育大学の入試に出題されました

Img_2104s 昨日、大学別入試問題集、赤本を出している教学社(株式会社世界思想社教学社)から、「著作物使用許可願」と表書きのある茶封筒が届いた。

何かなと思って開封すると、私が以前執筆した文章が大阪教育大学の今年度の入試に出題されたという。今年出版する大阪教育大学の赤本に、その問題を掲載するために、文章の著作者である私の許可が必要なので許可を頂きたいという内容だった。

Img_2105s 出題された私の文章は「ごみ問題100の知識」(左巻健男、金谷健編、東京書籍、2004年)の中の「食べ物なのに廃棄物?-おからの話」(以下の通り)で、科目は前期日程の小論文である。

 市場に出回って売られている商品は、お金を払って買わないと自分のものにはなりません。これが「有償」で売られている有価物です。これとは逆に、粗大ごみのように、自分がお金を払わないと持っていってもらえない場合は「逆有償」といって、廃棄物ということになっています。廃棄物か有価物かは、出す側、受け取る側のどちらがお金を負担するかで決められます。両者の中間、つまりお金のやり取りなしの無償で流通する場合(無価物)も廃棄物に含めることが多いようです。

 この考え方のもと、おいしく食べることのできる「おから」が廃棄物とされています。「おから」は卯の花とも言って店で売られている商品です。「おから」が廃棄物がどうかは裁判で争われ、最高裁まで上告されて判例になっています。結論は「廃棄物である」でした。

 豆腐を作るときには、大豆をすりつぶしてよく煮た後、布でしぼります。搾り汁が「豆乳」で、これににがりを加えて固まらせたものが豆腐です。布に残る搾りかすが「おから」です。豆腐も豆乳も、そして「おから」も食べ物ですが、昨今の健康ブームで豆腐や豆乳は売れるのに、「おから」はそれらに比べると売れる量はわずかです。残った「おから」は動物のえさや肥料として無償で牧畜業者に引き取ってもらったり、お金を払って産業廃棄物処理業者に引き取ってもらったりしています。お金をもらって廃棄物を引き取るには都道府県知事の許可が必要になります。

 裁判で争われたのは、無許可でお金をもらって「おから」を引き取っていた業者が、廃棄物処理法違反で検挙された際に、「おから」は食べ物だから廃棄物ではないと主張したことに端を発しています。

 「おから」は良質のたんぱく質を含むものですが、食品、飼料、肥料などに利用できない分は、処理に困る不要物といえます。「おから」はすぐに腐敗するため、空き地などに放置すれば悪臭を放って迷惑になります。実は「おから」に限らず、魚・動物のあら(注 肉などをとった後の残骸)など有効に利用する用途はあっても、実際には利用される量が少ないものは多くあります。これらは産業廃棄物として動植物残さに分類され、処理されているのが現状です。

露本伊佐男「食べ物なのに廃棄物?-おからの話」より(左巻健男/金谷健編「ごみ問題100の知識」所収、東京書籍、2004年)

設問は、この文章と、別の食品の表をみてわかることを中心に、あなたが考える環境に配慮した生活について論じなさい(縦書き600字以上、800字以内)、というものだった。

入試問題になるなどと思いもしていなかったので驚いたとともに、大学入試の出題者も色々な本を読んでいるなと感心した。

今回のことでの雑感。

入試問題を出題した大学自身からは、事前連絡がないのは当たり前だが、事後にも連絡はなく、試験問題を所収したい出版社からの許諾願いで知ることになる。これは以下の著作権法第36条で、試験問題にするときには著作物を複製することが認められているからである。

(試験問題としての複製等)

第三十六条 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 

2 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

しかし、その入試問題をさらに出版社や塾が再録して、赤本や参考書、教材などの出版物にする場合には、元の著作権者(入試問題の作者ではなく、題材の文章の著作者)の許可が必要になってくる。このときに許可なく教材に掲載されたとして、裁判になった下のような例も少なくないのだが、赤本はさすがにきちんとしているようである。

作品、勝手に受験問題集に 谷川俊太郎さんら提訴
2007年06月21日19時03分 (Asahi.comの記事より引用、太字筆者)

 松谷みよ子さん、谷川俊太郎さん、五味太郎さんら作家や詩人が、中学受験大手のSAPIXと希(のぞみ)学園(大阪市)がそれぞれ発行している問題集に勝手に作品を載せられて著作権を侵害されたとして、21日、東京地裁に出版差し止めの仮処分を申請。希学園に対して、約2400万円の損害賠償請求訴訟を起こした。

 SAPIXについては経営母体のジーニアスエデュケーション(東京都中央区)と、教材発行のりいふ・しゅっぱん(同区)に、松谷さん、谷川さんら14人が計22作品を勝手に使われたとして教材の出版、販売、配布の差し止めを求める。

 申立書などによると、作品が掲載されていたのは同社の通信教育用教材「ピグマシリーズ」と市販教材「ぴぐまりおん」。小学生が対象で、科目は国語。松谷さんの場合、4年生用の同シリーズ07年5月版に8ページにわたって物語文が上半分に、下半分に登場人物の気持ちなどを尋ねる設問があった。

 希学園については五味さんら13人が同社の「ベーシック講義テキスト」「ベーシック錬成問題集」などに計16作品を勝手に掲載されたと主張している。

 著作権法は教育分野についても、許諾手続きが不要なのは入試問題など一部の「例外」に限っている。進学塾発行教材での作品使用は例外に当てはまらず、著作権者に許諾を得る必要がある、というのが原告側主張だ

 松谷さんは「作家の作品を使うときに許可を取るのは最低限の礼儀。利益が生まれる場合は、応分の著作権料も支払うべきだ」と話す。

 原告側は、日本ビジュアル著作権協会(東京都新宿区)の会員。同協会は、塾内教材や問題集など教育分野での著作権管理を担う団体として急成長した。

 SAPIXは「許諾なしに使用した作品があるのは事実だが、日本ビジュアル著作権協会と交渉中だった」としている。

 希学園は「訴状を見ていないのでコメントできないが、著作権については誠実に対応したい」と話している。

ちなみに著作権使用料(印税)がいくらもらえるかであるが、社団法人日本文藝家協会の支払基準が

 使用料=発行部数×本体価格×(使用ページ数÷本の総ページ数)×印税率5%

 (ただし翻訳作品の場合は印税率2.5%)

で、その基準に従っているようである。普通の出版物の印税は10%であるが、入試問題を再録して二次使用するという性質のためか、その半分の5%が基準のようである。妥当な線か。赤本の場合、最低保証額があり、2000円/年だった。

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2007年7月12日 (木)

上海リニアモーターカーに乗ってきた

先週、7月1日~8日まで上海に学会出張してきたのだが、最高時速431kmの上海リニアモーターカー(磁浮列車)に乗ってきた。この速度はギネスブックに載っているという。

今のところ、上海浦東国際空港(Shanghai Pudong International Airport)駅と地下鉄2号線の龍陽寺(Longyang Lu)駅の2駅の間、わずか29.863km7分20秒で結ぶだけなので、比較的空いている。浦東国際空港から上海中心部に行くためにリニアを使うと、龍陽寺駅で大きな荷物をかかえて、リニアの高架上ホームから、地下鉄に乗り換える必要があるため、結構、面倒である。今は、リニアモーターカーに乗ってみたいと考える人しか乗っていないようだ。

上海浦東国際空港を降り、磁浮列車(Shanghai Maglev Train)の案内に従って、2階に上り、渡り廊下を渡ると、すぐリニアの駅である。ちなみに上海では「リニアモーターカー」と言っても通じず、「マグレヴ(Maglev Train)」と言う必要がある。

チケットを窓口で買って、空港にあるのと同じようなX線による手荷物検査を受けた後、自動改札機を通って中に入る。料金は普通席が片道50元、往復80元。貴賓席がその倍。当日の航空券(半券やe-ticketは不可)を提示すると、2割引になるらしいが、半券不可ということは浦東空港→龍陽寺には割引が使えないということになってしまう(詳細はよくわからない)。ちなみにタクシーで同じ距離を行くと110元くらいの料金になるので、1人ならリニアの方が安い。

Homeimg_3158 浦東空港駅の場合は、改札が終わっても、すぐにはホームに行けず(階段にロープが張ってある)、コンコースで時間まで待つことになる。龍陽寺駅の場合は、ホームで待つことができて、リニアが入線してくる様子を見ることができた(左写真)。

席は自由席である。一部車両のドアが開くのでそこから乗車する。日本の首都圏のホームライナー号に乗るときのような感覚。今のところ、立っている客は見当たらず、空席が目立つ。客が少ないときには、一部の車両が締め切ってあり、行き来できないようになっていた。座席は3人掛けの座席が左右両側にあるところ、2人掛けの座席が左右両側にあるところの2パターンある。2人掛けのところの方がもちろん広い。座席は向きは変えられず、JRの特急に比べると、少しチャチだが申し分ない。関空特急はるかのように、大きな荷物を置くスペースも作ってある。

Seatimg_3159リニアは音もなく、カクンという衝撃もなく発車する。発車のときに少し浮いた気がすると表現する人もいるが、上海リニアの場合は、停車中でも走行中と同じように8mm程度浮いているらしい。乗り心地は日本の新幹線に似ているが、時速400kmを超えたあたりから、トラックで砂利道を走るようなガクガクする振動が床下に伝わってくる。走行中の揺れは、メモをとろうとすると字が大きく乱れるくらいで、鉄道の特急と同程度と思う。時速431kmの車窓の眺めは、さすがに今までに経験したことのないスピードだった。

カーブを曲がるときには遠心力を逃がすために、大きく内側に傾くし、すれ違いの時には風圧で車体がかなり大きな衝撃を受ける。

時速は発車45秒後に100km、1分後に124km、2分後に264km、2分40秒後に347km、3分後に385km、3分30秒後に最高時速の430kmに達した。その後、減速を始める4分20秒後まで、約50秒間時速430kmと431kmの間を行ったりきたりしていた。その後、3分間かけて減速し停止した。すべて車内の電光表示板に表示される。

車輪がないので、騒音が少ないと思われがちだが、騒音はかなりひどい。新幹線ののぞみの通過する音のようでもあるし、飛行機が離陸するときの音のようでもある。リニアモーターカーの運転時間は現在、午前7時から午後9時までだが、最高時速の431kmを出すのは午前8時30分から午後5時30分の間だけである。それ以外の時間帯は最高時速300kmでの運行である。

上海リニアモーターカーは、上海トランスラピッドとも言い、ドイツのトランスラピッドの技術を導入して作られたものである。磁気浮上の方式は日本のJRが研究しているものとは異なる。日本のものは磁石同士の反発力を利用して浮き上がるが、トランスラピッドは磁石同士の吸引力を使って浮き上がる。吸引力を使う場合は、吸引力を強くしすぎると吸い付いて接触しまい、浮いたことにならないため、浮いた状態で留めるための微妙な制御が難しいとされていた。日本では一昔前、日本航空がこの磁力吸引型の磁気浮上列車を研究していたのだが、開発を断念したという経緯がある。

リニアモーターカーというと超伝導を使った電磁石を思い浮かべるが、上海リニアモーターカーは常伝導、すなわち超伝導を使わない普通の電磁石を使っている。上海は電力不足という話を聞いたことがあったが、かなりの電力をこのリニアモーターカーが使っているはずである。動き出すときには、ブラウン管テレビのスイッチを入れたときのような、ブゥウンという小さな音が床下からしていた。

私が小学生の頃に読んだ子供向けの本では、リニアモーターカーは昭和60年頃に乗れるようになると書いてあったが、日本国内ではまだ実用化されていない。技術的にはもう完成の域にあるが、建設のための公的予算がまかなえないらしい。リニアより、地方の新幹線整備が先という政策のためである。

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