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2007年8月29日 (水)

バイオマスの有効利用 -エタノールを作って燃料にする

北陸地方でバイオマスの利用を進めようという話があって、先週土曜日と昨日と、立て続けに講演会があったので、参加してきた。以下はそのノート。黄色の背景の部分に記したのが講演のメモで、白い部分に書いたのが私の雑感である。ノートさせて頂いた講演者の方々に感謝致します。

■ 北陸木質バイオマス活用セミナー2007(平成19年8月25日、石川県産業展示館3号館、主催:北陸バイオマス発見活用協議会、後援:農林水産省北陸農政局、北國新聞社)

● 基調講演:「木質バイオマスのエネルギー利用」 金沢大学大学院自然科学研究科 森 茂 教授

バイオマスの定義・・・動植物から作られる再生可能な有機資源。例として、生ごみ、下水汚泥、稲わら、もみ殻、家畜排泄物、剪定枝、林地残材、建設発生木材など

歴史に学ぶべき

人が環境に与える影響には、良い影響と悪い影響がある。

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」(ビスマルク)という有名な言葉がある。環境問題についても、「経験に学ぶ」ことにならないように、歴史を十分に学ぶべきである。

自然に対して、人為的な手を入れることが良いか悪いか議論されることがある。例えば、山にある竹林に人の手を入れず、自然に任せたまま放置して拡大させると、土砂災害の危険性が増す。このような場合に、竹林を手入れすることは人為的なことだが、環境には良い影響を与える。原野を開墾して、田畑にすることも、一般的には良い影響を与えるとされている(ケースバイケース)。

木材資源の価格の高い順

木材 > パルプ原料 > 燃料 > 堆肥 > 埋立処分

木材は、燃料として用いるよりも、木材やパルプとして用いる方が、高い価値を生み出す。木材やパルプ原料として使用できない廃材などに限定して、燃料にするのがよい。

エフェソス遺跡(トルコ)が滅びたのは、森林収奪が原因

栄えた古代文明が数多くあるが、これらが滅びたのは人為的な活動によって、自らの生存基盤が損なわれたためであると聞いたことがある。

外国では1立方メートル当たり200~250ドルの単価でバイオエタノールが製造できている。

エタノール1立方メートルは約790キログラムである。外国ではバイオエタノールがガソリンと十分、競合できる価格になっていると聞いて驚いた。

● 先進事例発表:「省エネルギーに寄与する木質バイオマス発電事業の紹介」 (株)明電舎 安井和之氏

NEDOとの共同研究。

木くずを乾留して、木ガス(もくガス)、タール、木酢液、木炭に変化させ、そのうち木ガスを使用して、ロータリーエンジンを回して、発電するシステムが紹介された。

乾留とは空気を供給せずに加熱することである。タールは乾留の燃料としても再利用される。タールと木酢液は、蒸留で分離するがその熱源にロータリーエンジンの廃熱を使用する(コージェネレーション)。

木ガスの成分

  CO2  12 %,  CO  21~24 %,  CH4  5 %,  H2  12~14 % 残りはN2

木くず、バーク(木の皮) 100 kg/h(含水率約20%)から

  発生ガス 100 Nm3/h、木炭 16 kg/h、木酢液・タール 40 L/h

  木ガスの発熱量 8400 kJ/Nm3

  発電電力 36 kW、熱供給量 243 MJ/h

ロータリーエンジンを使用している理由は、低発熱量のガスでもノッキング等を起こさずに使用できるから。

発電効率、発電出力はガスの流量によって異なる

  50 Nm3/hなら、発電効率17 %、発電出力 20kW

イニシャルコストは億円単位

この木くずをガス化(乾留)して作った木ガスで発電するシステムに関しては、エネルギー収支(投入した総エネルギー量と発電量の関係)などは、まだわかっていないようだ。研究途中での紹介なので、将来性などは未知数である。木(木のペレット)を燃やして、ボイラーを焚き、単純に火力発電をするシステムと比較して、どうかというところがネックになると思う。

■ ほくりく環境・バイオマス研究会設立総会・記念講演会(平成19年8月28日、金沢都ホテル、主催:北陸ものづくり創生協議会)

● 講演「木質バイオマスのエネルギー利用 -EU諸国の動向を踏まえて」 岐阜県立森林文化アカデミー学長 熊崎実氏

北欧は平坦地にある森が多い

オーストリアは日本と同様、森林は傾斜地にあり、日本の参考になる

森が平坦な場所にあるかどうかで、林業の効率が大きく変わってくる。日本はその点、不利である。文化にも大きな影響を与えている。北欧の森には妖精が住むが、日本の森には天狗が住む。

昔のように、薪をもやすのは効率が悪い・・・熱効率 10~15 % (不完全燃焼、炭化などのため)

木をチップ、ペレット化して燃やすと効率が大きく改善・・・熱効率 85~90 % (このチップ、ペレット化した木質燃料がヨーロッパで急速に伸びている)

木をガス化、液化して発電はあまり実用化されていないが、木質チップ、ペレットを燃焼させる発電はある。しかし、効率を考えると、発電はやめた方がいいという流れになっている。

効率は直接燃焼85~90 %、発酵させてエタノールに変えた場合40~50 %、発電に用いた場合25~30 %

オーストリアの家庭用木質ボイラの効率は、1980年に50~55 %だったが、2000年には90~95 %に飛躍的に改善。完全燃焼を達成したことが大きな理由。石油の価格が上昇したため、木材を燃料に使っても見合うようになった。

薪を細かく砕いてチップ化、ペレット化するだけで、燃焼効率が急上昇したという点は特筆すべきである。木のリサイクル、特に燃料として使用する際は、形態が重要ということだ。オーストリアと違って、日本にはチップ化する装置、チップ用ボイラーにあまり良いものがないそうだ。

● 講演 「バイオ燃料開発の現状」 産総研バイオマス研究センター 佐々木義之氏

バイオマスから燃料のエタノールを作る話。大変、面白い内容だった。

熱、光、運動、磁気、電気、原子核、重力、化学の8つのエネルギー形態のうち、実質必要なものは、熱、光、運動の3つのみ

考えたことはなかったが、確かにそうだ。我々が直接利用するエネルギーの形態は上の3つである。

コーンからエタノールを作るとき

コーン1キログラム(米国で17円)から、エタノール0.47リットル(市場価格26円)が生産できるので、ペイする(2007年7月現在)。

しかし、東京市場でコーンは1キロ27円、米は1キロ200円なので、今の状況では日本でペイしそうにない。

日本では今のところ農作物が高いから、諸外国のように農産物から作ったエタノールを燃料にするのは無理のようである。

木材からエタノールを作ろうとすると

コーンなどに比べて、収穫、輸送が困難で、粉砕が必要になり、セルロース以外の成分(リグニン)などを取り除かねばならない。また、セルロースをブドウ糖に変える反応は、コーンなどの食品をブドウ糖に変える反応に比べて難しい。

コーンなどの食品からエタノールを作る反応は、お酒を作る反応と同じだ。デンプン→ブドウ糖→エタノールは、人類がいちばん最初に制御した化学反応である。

しかし、セルロースはそうはいかない。セルロースを分解する酵素は人間が持っていないセルラーゼという酵素(シロアリの体内などにある)なのだが、これを使った反応制御はお酒を作る反応よりも技術を必要とする。

スギの丸太で 1キロ32円 程度の価格。エタノールの原料としてはペイしない。

廃木材、木くず、不要な紙などを使うのであれば、ペイする可能性はあるかもしれない。

● 講演 「全農のバイオエタノール構想」 全農 高梨文孝氏

今度は、日本のコメから、エタノールを作ってみたらという話。

原料とする玄米(超多収品種)を1キロ20円で購入するとすると、エタノール生産原価は1リットル114円となる。

エタノール製造プラントは、玄米15000トン/年、エタノール生産量6700キロリットル/年の規模を仮定した。玄米を1キロ20円で売ると農家は大赤字である。

エタノール生産原価の目標は27円/リットルなので、コメをかなり安く買ったとしても、エタノールは割高になってしまう。

コメの量を稼ぐ必要があるので、飼料用品種の「北陸193号」を栽培したところ、生産費は1キロ50~54円と試算された。でも、コーンの1キロ9円、規格外小麦の1キロ21円にはかなわない。

コメから、エタノールを製造して燃料にするのはかなり割高になるのは当然といえよう。コメ自体が高いからである。

石油の価格が今の2倍になったり、エタノール製造量が年10万キロリットル以上のような巨大プラントが作られたりすると、価格構造が変わってペイするようになるかも知れない。

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