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2007年8月 2日 (木)

自分の論文を自分のWebで公開していいかという著作権の話

研究者は研究成果が出ると、学会や出版社の発行する「学術雑誌」(Journal)に論文(Original Paper)を投稿する。所定の審査を受けた後、掲載されたり(Accepted)、掲載されなかったり(Rejected)する。学術雑誌に掲載された論文が、研究者の主な研究業績である。

私は、発表した学術論文のリストをHP上に載せている。先日、論文タイトルの一覧だけでは、無味乾燥だと思い、論文本体のPDFファイルを一緒に載せようとしたのだが、著作権の問題が気になった。自分が書いた論文で、学術雑誌に掲載されたものを、自分や自分の所属する研究室のWebに載せていいかどうかである。雑誌によっては、そのような行為を禁止していることがあるかもしれないからだ。

普通に考えれば(自然法的な考え方では)、自分の著作物を自分がどう使おうと自由なのだが、自分の論文を学術雑誌に掲載するときには、著作権譲渡書(Copyright Transfer Form)に署名して、一応、自分の著作権を学会や出版社に譲渡していることになっているのである。

それで、いろいろと調べてみた。

エルゼヴィア(Elsevier)社の場合、下記のように自分の論文を自分のHPに載せることを許可している。ただし、雑誌のHPか、論文のDOI(デジタルオブジェクト識別子)を一緒に記載することになっている。

Elsevier社のHP
http://www.elsevier.com/wps/find/authorsview.authors/copyright#internetより

Can I post my article on the Internet?

You can post your version of your journal article on your personal web page or the web site of your institution, provided that you include a link to the journal's home page or the article’s DOI and include a complete citation for the article.  This means that you can update your version (e.g. the Word or Tex form) to reflect changes made during the peer review and editing process.

シュプリンガー(Springer)社も、現行の著作権譲渡書(Copyright Transfer Statement)で同様な条件付で自分の論文を自分のWebに載せることを許可している。

現行のSpringer社Copyright Transfer Statementより引用

An author may self-archive an author-created version of his/her article on his/her own website and his/her institution’s repository, including his/her final version; however he/ she may not use the publisher’s PDF version which is posted on www.springerlink.com. Furthermore, the author may only post his/her version provided acknowledgement is given to the original source of publication and a link is inserted to the published article on Springer’s website.
The link must be accompanied by the following text: “The original publication is available at www.springerlink.com”.
Please use the appropriate DOI for the article (go to the Linking Options in the article, then to OpenURL and use the link with the DOI). Articles disseminated via www.springerlink.com are indexed, abstracted, and referenced by many abstracting and information services, bibliographic networks, subscription agencies, library networks, and consortia.

米国物理学協会(American Institute of Physics)の場合も、同様な条件付きで自分の論文を自分のWebに載せることを許可している。

米国物理学協会のHP
http://www.aip.org/pubservs/web_posting_guidelines.html より

On the authors' and employers' webpages:

  • There are no format restrictions; files prepared and/or formatted by AIP or its vendors (e.g., the PDF, PostScript, or HTML article files published in the online journals and proceedings) may be used for this purpose. If a fee is charged for any use, AIP permission must be obtained.
  • An appropriate copyright notice must be included along with the full citation for the published paper and a Web link to AIP's official online version of the abstract.

米国セラミックス学会(発行元はBlackwell Publishing)の場合も、下記のように同様な条件付きで自分の論文を自分のWebに載せることを許可している。

Blackwell PublishingのHP
http://www.blackwellpublishing.com/bauthor/faqs_copyright.asp#1.3 より

  • you may post an electronic version of the Article on your own personal website, on your employer's website/repository and on free public servers in your subject area. (For most journals there is a requirement that posting of the Article online does not take place until a specified minimum period has elapsed.)
  • Electronic versions of the accepted article must include the following statement, adapted as necessary for your Article:
    Author Posting. © {Insert name of copyright holder as shown on the published article}{insert year of publication} This is the author's version of the work. It is posted here by permission of {insert name of copyright holder} for personal use, not for redistribution. The definitive version was published in {insert journal name}, {insert volume, issue number and pages}. http://dx.doi.org/ {insert doi number}
  • Please note that you are not permitted to post the Blackwell Publishing PDF version of the Article online.
  • よくわからないのが米国化学会(American Chemical Society)である。私が最も多く著作権譲渡書(Copyright Transfer)に署名したのが、このアメリカ化学会なのだが、著作権譲渡書の文面が毎年、微妙に変化している。90年代半ばでは再配布は「in print format onlyで許可する」だったのが、90年代後半に"only"が削除された文面となった。電子媒体での再配布を許可するニュアンスかと思ったが、現行のCOPYRIGHT TRANSFERではまた変わって、印刷物としての配布が50部以下に制限された一方で、要約(本文以外)、表、図は自分のWebに載せてよいことになっている。

    アメリカ化学会の現行のCOPYRIGHT TRANSFER抜粋

    Authors/employers may post the title of the paper, abstract (no other text), tables, and figures of their own papers on their own Web sites, and include these items in their own scholarly, research papers.

    abstract (no other text)の解釈について迷う。本文(text)は載せてはいけないという意味に反対解釈すべきなのか、本文については指針を定めていないという意味なのか。いずれにしろ、私が署名したのは、現行のものではなく90年代のもので、自分の論文を自分のWebにuploadする権利まで、Transferしたかどうかは不明瞭な状態となっている。他の学会と同じように、明快に許可してくれればいいのであるが・・・。

    ちなみに国内の日本セラミックス協会日本分析化学会は、それぞれJ. Ceram. Soc. Jpn.Anal. Sci.の本文PDFファイルを無料でWeb上で公開している状態にあるので、迷うことなく安心してPDFファイルにリンクできる。

    インターネットが発達する1990年代半ばまでは、研究者は雑誌に論文が載ると、自分の論文のコピーや別刷り(自分の論文の部分だけを印刷した抜き刷り、reprint)を、同分野の研究者に挨拶代わりに配ったり、あるいは見知らぬ研究者からのリクエストに応じて、送付したりしていた。これは著作権譲渡うんぬん以前に、研究者コミュニティの習慣として容認されていた権利である。

    インターネットが発達した現在では、雑誌に載った自分の論文をE-Mailで送ったり、自分のWebに載せたりすることが権利として認められてしかるべきだと思う。実際に、ほとんどの学会や出版社は上に書いたようにはっきりと容認している。

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    コメント

    Elsevier社の場合には、出版社の作成したきれいなPDFバージョンは認められていないということなんですよね?

    ホームページでの公開を検討していますので、何卒ご回答を宜しくお願いします。

    投稿: Tabuchi | 2012年7月27日 (金) 19時49分

    署名されたCopyright Status Formなどの書類を読むのが早いと思いますが、文面は曖昧ですがPDFそのままというのはダメと言っている気がします。

    投稿: つゆもと | 2012年7月27日 (金) 23時36分

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