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2007年9月11日 (火)

電気の安全な使用 ~「化学と安全」講義メモ

化学科学生が化学実験を行うとき、電気工学科学生が電気工学実験を行うとき、と言う風に、自分が専門とする実験を実施するときには、気をつけるべき点はわかっていることが多いし、そのための安全教育も比較的よく行われている。

意外と気をつけなければいけないのが、化学科学生が慣れない電気を使用したり、電気工学科の学生が慣れない化学実験をしたりなどという風に、自分の専門と直接関係のない実験をはじめて行うときである。専門の人には常識といえるような、初歩的な手順、作法を間違えることがよくある。

私の個人的な印象では、化学関係者は電気関連で事故、ヒヤリハットを起こすことが多い気がする。ということで、電気の安全についてのノート。

■ 感電した場合

高電圧(例えば27万5000ボルト)・・・即死する。即死を免れても、体幹部を電気が通過した場合は死にいたる。手足などを感電したときは、時間経過とともに手足が壊死を起こすので、切断することになる。(壊死を起こした部位をそのままにすると全身に壊死が広がってしまう)

100V(家庭用電源)・・・心臓を通過すれば死亡。皮膚などには、やけどを起こす。

感電した人を助けた後は、救急車を呼ぶと同時に、人工呼吸、心臓マッサージ、AEDなどによる応急処置を行う。

■ 感電すると自力で動けなくなる

筋肉は筋電流と呼ばれる電流で収縮しているので、感電すると自分の力で筋肉を動かせなくなる。以前、テレビ生放送中のハプニングで、レポーターが車のドアの取っ手を握って感電してしまったことがあるが(漏電事故)、そのときは取っ手を握ったまま自力で外せずに絶叫していた。吸い付くように感電したと表現する人もいる。

■ 感電している人間に触ると、自分も感電する

感電している人間を、手で触って助けようとすると自分も感電するので、自分まで動けなくなってしまう。元の電源を切ってやるか、木の棒など絶縁体を使って、離してやる必要がある。

■ 危険性は電圧(V)ではなく、電流(A)で決まる

電圧と電流は比例するから、一般的には電圧が高ければ電流も大きいが、危険性は電流(A、アンペア)の大きさで決まる。冬場の静電気は数千ボルトと電圧は高いが、電流が小さいので生命を危険にさらすことはない。電流値は、20mAで筋肉の制御ができなくなり、100mAで致命的である。1ボルトは問題のない電圧だが、1アンペアはきわめて危険な高電流である。同じ1単位でも、ボルトは安全で、アンペアは危険である。

電流量による影響 (50~60Hz交流の場合)

電流量  人体への影響
1mA    感覚に感知
5mA    かなりの苦痛
10mA   耐え難い苦痛
20mA   筋肉の収縮、感電回路部から自力で離脱不能
50mA   呼吸困難、相当危険
100mA  ほとんど致命的

■ 危険な電圧は42V(死にボルト)以上

人体の抵抗値などを勘案すると、だいたい42ボルト以上が危険な電圧とされている(静電気のように例外もある)。「100Vの感電は経験しておいたほうがよい」などと生徒に向かって発言する物理教師がいたと聞いたことがあるが(真偽の程は定かでない)、これはきわめて危険である。

■ 高電圧には触らなくても、接近するだけでも危険

電圧が高いと、雷が落ちるように稲妻が空気中を放電してきて、感電する。閃絡(フラッシュオーバー)である。電圧値によって、これ以上接近してはならないという安全距離が定められている。

先月末、高さ50mの高圧送電線の鉄塔頂上に若い女性がいた(自分で上った?)という、不審な事件があったが、そのときも電線に接近するだけで危険なため、送電が止められていた。電線を触ったら危険なことは、よく知られているが、接近するだけで危険なことは余り知られていない。

高電圧に対する安全距離

電圧(kV) 接近しうる安全距離(cm)
3      15
6      15
10      20
20      30
30      45
60      75
100     115
140     160
270     300

■ 電車の架線は交流2万ボルト(JR北陸線など)、または直流1500ボルト(北陸鉄道、JR東海道本線等)

2万ボルトの安全距離は30cmであり、JRの架線の高さは5mである。釣竿などを伸ばしたまま踏み切りを渡るのは危険。

実際に以前、小型のヨットを4人ほどで担いで踏み切りを渡ろうとしたところ、上部が架線に接触(または接近)し、4人がはじき飛ばされて、即死したという事故があった。目撃者の話では、すごい音とともにヨット全体が白く光ったそうである。

■ 濡れた手でスイッチなどを触らない

スイッチなどから漏電して感電することがある。

■ コンセントが抜いてあっても、通電部には直接、触らない方が良い

これも余り知られていないが、テレビのブラウン管などでは、コンセントが抜いてあっても、コンデンサなどに蓄電されているために、感電することがある。

■ 延長コード、コードリールは束ねたまま(巻いたまま)使わないこと

ジュール熱で発熱するため、過熱して危険である。コード被覆が焦げて、火災原因となる。

■ コンセント1ヶ所について15アンペア(1500ワット)以内にする

コンセント1ヶ所について15アンペア(1500ワット)以内にする必要がある。家庭で使用される普通の電気コードは15アンペア以上には耐えない。差し込み口が2つ上下にならんでいるコンセントの場合は、二つ合わせて1500ワット以内にする必要がある差し込み口一つについて1500ワット以内ではない)。

ブレーカーは普通、20アンペア(2000ワット)で落ちるようになっているので、1500ワット以上2000ワット以下の電力を使用した場合、コンセント差し込み口内部の配線が過熱する危険がある。どうして、ブレーカーは1500ワットで落ちるように設定されていないのか、これは前からの疑問である。

■ 長いアクセサリや濡れた長髪は危険

これらが原因となった感電死亡事故は本当に多い。濡れた髪や、耳や首につけた長い金属性のアクセサリなどが接触して感電死することがある。

■ 電気が来ている線(活線)をいきなりつないだり、外したりしない

自分の周囲で見たヒヤリハットで一番多いのがこれである。スイッチを切ったり、コンセントを抜いたりしてから、電線の作業をすること。

私が大学3年生のときの有機化学実験で、ヒーターの制御にトランス(変圧器)を使ったのだったが、トランスにはコンセントから来る電線の端を裸にして、ねじで止めるようになっていた。コンセントを差した状態のまま、トランスに電線を付けたり、外したりする同級生が何人もいて、あちこちで青い閃光と、バシッ、ブーンという不気味な放電音を響かせていた・・・。かなり危険である。

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