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2007年10月17日 (水)

炭酸ガスレーザーで遠くにあるものを発火させられるか? 月9「ガリレオ」第1話

昨日、フジテレビ系のドラマ「ガリレオ」第1話を見ていたら、妙に科学的なことを扱っていた。福山雅治の演ずる変人物理学者が主人公のドラマである。

炭酸ガスレーザーを遠隔操作して、離れた場所の人間の頭部を発火させて、死亡させるというトリックが主題だった。このドラマ、科学的に正しいことをかなり具体的、専門的に踏み込んで取り扱っているところもあったのだが、科学的にありえないことをあたかも正しいように説明しているところもあった

まず、金属加工に用いられるクラスの炭酸ガスレーザーを遠く離れた場所に照射して、モノを発火させるのはまず不可能である。炭酸ガスレーザーに対して無用の不安を与えかねない。

炭酸ガスレーザーは金属の切断などに使用できるが、このときは太陽光を虫メガネで集めて黒い紙を燃やすのと同様に、レーザー光を凸レンズで集光し、その焦点付近での高エネルギーを利用して、金属を切断するのである。凸レンズを使わず、ただ炭酸ガスレーザーを当てるだけでは金属は切断できない。直接当てた場合、至近距離ならやけどをする程度に加熱される危険性はある。

しかし、炭酸ガスレーザーの光は、進むにつれて広がっていくので、離れるにつれて加熱能力は減ってしまう。ビームの広がり角(beam divergence)を一般的な2 mrad(ミリラジアン)とすると、100メートル進めば、直径約20cmの円形に広がってしまう。工場で用いられるクラスの10ワット~100ワットの出力のレーザーを用いたところで、電気ストーブに当たっている程度の暖かさである。ドラマで言っていたような「頭蓋骨が黒焦げになる」ほどの威力はない。いずれにしろ、レーザーだからといって、急に発火することはなく、何だか暑いなと感じて、よけるくらいの時間はあるはずである。この点を視聴者が誤解してしまわないかと不安であった。

レーザーと言っても何か意味不明の怖いものではなく、レンズで集光しない限り、体に与える影響は赤外線ヒーターの強いものと言ったイメージでよいと思う。ただし、目に入ると危険である。

だいたい燃えるものを数秒で発火させようとすると、10cm角に0.5kWくらいの熱を照射する必要がある(不燃材料の認定試験では、それくらいの熱エネルギーを照射して試験する)。100ワットのレーザーを使っても、せいぜい二十数メートルくらい離れたものしか発火させられないと考えられる。

炭酸ガスレーザーには10kWの高出力のものもあるようなので、これくらいの高出力になると100メートル先のものでも危ないかもしれない。民生用としては用いられていないはずだ(エアコン100台分以上の電源が必要である)。

炭酸ガスレーザー(波長10.6μmの赤外線を発する)は目に見えないので、ヘリウムネオンレーザー(波長633nmの赤い光を出す)を使って、光軸合わせをすると言っていたのは正しい。使ったことのある者しか知らないことである。

レーザーの実験中、保護メガネをかけていたのは良いのだが、なぜかレーザー用の保護メガネでなく、化学実験用の保護メガネだったのも、ご愛嬌だった。

赤外線は、赤外線ヒーターでおなじみだが、分子を振動させて、モノを暖める性質がある。赤外線より波長が長いマイクロ波を、うまく使うと、別の原理で、モノを暖めることができる。波長12cmのマイクロ波を当てると、水分子だけを回転させることができて、水分を含む物体を暖めることができるのである。これを応用したのが電子レンジである。なぜかドラマ中の講義でふれられていた。

レーザー(LASER)が開発された当初は、このマイクロ波をレーザー発振させるメーザー(MASER)と呼ばれるものが主流だった。これは炭酸ガスレーザーより、悪用すると危険なはずだ。ドラマを見ながら、犯人はマイクロ波をレーザー発振させたという結末かと思っていたが、予想は見事に外れてしまった・・・。

※「レーザー」は、最近「レーザ」と表記する方向に変わりつつあるようですが、「レーザー」としました。

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2007年10月 7日 (日)

アドバルーンの中はヘリウム?水素?

今日、昼間、テレビを見ていたら、アドバルーン監視員のアルバイトを特集していた。アドバルーンを上げている間、何をしていてもいいが、現場を離れたり、寝たりしてはいけない。仕事が楽で暇な割には、普通のアルバイト並みの時給をもらえるという話だった。「女だらけレディGO」という番組の「今すぐやりたい日払いバイト」の企画である。

アドバルーンが浮かぶのは、中に空気よりも軽い気体が入れてあるからだ。空気より軽い気体としては水素、ヘリウムが代表的だが、水素は都市ガス同様、引火、爆発する危険があるので、普通はヘリウムが使われる

だから、中に入れる気体は、ヘリウムだと思い込んでいたのだが、今日の番組では、アドバルーンをつなぎとめた場所に、でかでかと「火気厳禁」の4文字が目立つように掲示してあった。ヘリウムなら火気厳禁のはずがないので、ひょっとしたら水素を使っているのか?

しかし、ナレーションではヘリウムガスと言っていた。アドバルーンに穴があいてないかのチェックのため、アドバルーンの中に首を突っ込んで、光が漏れていないかチェックしている様子まで流していた。タレントはお約束で、そのときにヘリウムを吸って、アヒル様の高い声まで出していた。

ヘリウムだとしても、これはかなり危険な行為である。酸素が含まれていないヘリウム100%に顔を突っ込んで呼吸すれば、窒息する危険がある。酸欠の気体は、ひと呼吸するだけで失神する危険があるのだ。

もし、気体が水素だとしたら、こんなことをすると、ますます危険である。水素だとヘリウムより高い声になるが、吸い込んだときに引火爆発すれば、どうなるかわからない・・・。

この番組のアドバルーンが本当にヘリウムだったとすると、「火気厳禁」の掲示は何のためだったのか?

番組のことは別にして、少し調べてみた。

どうも現在の日本でも、アドバルーンにヘリウムでなく、水素を充てんすることがあるようである。

水素を入れたアドバルーンは各市町村の火災予防条例で規制されており、水素ガスを充てんする気球の設置届出書を提出するのが普通らしい。届けを出さずに、水素を使っているケースも皆無ではない気がする。

水素は危険だが、ヘリウムに比べると格段に安いので、水素を使うのである。水素は7立方メートル(通常は47リットルのボンベに150気圧で充填して用いる)の価格が約4000円だが、ヘリウムは高価で、同量で約18000円もする。

ヘリウム資源は貴重である。宇宙には多い元素だが、地球上には希少なのだ。気象庁が高層気象観測のために上げる気球(ラジオゾンデ)も通常ヘリウムでなく、水素を用いることになっている。

日本海側の沿岸にハングル文字の書いてあるアドバルーンのような気球が落ちていて、タバコを吸いながら近づいたために引火爆発して、やけどを負ったという事件を何回か耳にしたことがある。よその国では水素を使っているのかと思っていたが、日本でも水素を使うケースがあるようだ。

ちなみに水素は赤いボンベ、ヘリウムは灰色のボンベに入れることになっている。アドバルーンや風船の側に赤いボンベが置いてあれば、水素を入れていると思ってよい。

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