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2007年11月24日 (土)

過熱水蒸気で焼くオーブン -シャープ「ヘルシオ」を買いに行って、三菱を薦められたわけ

水を沸騰させたときに発生する水蒸気は100℃である。常圧で水を加熱するという単純な方法で水蒸気を発生させる限り、水蒸気の温度は100℃以上にはならない。

■ 新しい方式の調理用ウォーターオーブン

この100℃の水蒸気を、さらにヒーターで加熱して、300~380℃の過熱水蒸気にし、加熱調理に使用するオーブンがこの頃、流行っている。ヒーターの輻射熱(放射熱)で加熱する従来のオーブンに比べると、過熱水蒸気を接触させて加熱する方法はメリットが多いとされている。例えば、とりのから揚げを天ぷら油を使わずにできるらしい。

熱の伝わり方には伝導、放射、対流の3種類がある。

従来のオーブンは、ヒーターで赤外線を当てるという放射による加熱に加えて、周囲の高温になった空気と接触することによる熱伝導(伝導)により加熱する。

シャープの「ヘルシオ」は、340℃の過熱水蒸気(空気をほぼ含まない濃度99.5%)を料理に接触させて、伝導だけで加熱する方式である。料理に赤外線放射は行われない

ナショナル、東芝、日立、三菱は過熱水蒸気と接触することによる伝導と、従来のオーブンと同じ赤外線放射を併用しているようである。

どちらが良いかを判断する立場にないが、技術的に難しいのはシャープの方式であろう。家庭用の100ボルト、15アンペア、つまり1500ワット以内で、作るのに苦労したらしい。ちなみに電力に余裕のある業務用の製品は、三菱が先に作っていたという。

■ 高温の水蒸気は危険 -熱を伝えるのが速い

サウナ風呂などでは温度が100℃前後のことはよくある。中に入ってやけどすることはない。しかし、100℃の熱湯を浴びたりすると、大やけどである。この理由を化学工学的に言うと、空気の伝熱係数が小さく、熱湯の伝熱係数が大きいためである。これに加えて、サウナでは発汗による気化熱で体温上昇が抑えられることもある。

伝熱係数を比較すると、過熱水蒸気は、同じ温度の空気に比べて桁違いに大きい。美浜原発で高温の水蒸気を浴びた作業員4名が死亡した事故があった(2004年8月)。このときの水蒸気は140℃だったとされている。空気ならこんな危険はない。

同様に、オーブンの中の300~380℃の過熱水蒸気を浴びると危険だが、そのような危険はないように工夫されている。

※熱湯と空気の比較では熱伝導率(W/(m・K))の違いによるという説明も間違いではないが、厳密には伝熱係数(W/(m^2・K))の違いというべきである。過熱水蒸気と空気では、熱伝導率はそれほど大きく変わらないが、伝熱係数は大きく異なる。これは、水蒸気が凝縮して液体の水に変化するときに大きな熱を発生するからである(凝縮伝熱)。

■ シャープのヘルシオを買いに行って、三菱を薦められたわけ

近所のヤマダ電機に、シャープのヘルシオを見に行った。説明を聞こうと、家人が店員の一人に声をかけた。ちらっと見ると、名札を入れるホルダーにMITSUBISHIのロゴがある。ああ、これがメーカーから派遣されている販売員か、今年の春ごろに新聞ダネになってたなと、考えた。ヘルシオを一通り説明した後、日立、東芝、ナショナルと説明して、最後に「いちばん最初に作ったメーカーご存知ですか?三菱なんです」と、三菱製品を説明する。

ナショナルがいちばん安いんですかと聞くと、「三菱も安くできますよ。ピザがいちばんおいしく焼けるのもこれです」と述べて、ヘルシオの欠点もつけ加えた。

家人は、店員の名札のMITSUBISHIのロゴに気づいていなかったらしく、「シャープがいいと思ってたけど、三菱がいちばんいいみたいや」と言い出した。

場を離れて、「あれは三菱電機の人やがな」と伝えると、実に予想外だったらしく、「信用できん!何を信用していいかわからんようになった。三菱の人なら、三菱の人と断ってから説明してほしい」と何度も何度も口にし、一日中、憤慨していたのであった。

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コメント

初めてお邪魔します。
 
文中にヤマダ電機でメーカーから派遣された社員とありましたが、その人は電機メーカーの社員ではではありません。
 
以前は確かに販売促進活動はメーカーの営業社員が休日出勤して対応していたようです。しかし、もう何年も前になりますが、労働基準監督署の指導で休日出勤での対応ができなくなったことに目を付けた派遣会社がメーカーと販売会社(ヤマダ電機等)に販売促進活動をする社員を派遣する事業を行っています。その社員は実際には学生を含めたアルバイトである実態が多いようです。
 
と言うのも繁忙期だけの採用であるので土日祝日と夏休みと年末年始に契約が集中しているからです。そして、研修期間は脆弱で数時間程度です。それから、販売ノルマがあったり、あるいは、完全歩合給である場合もあって、必死に売ろうとするから性質が悪いのです。
 
御存知でないようなので、コメントさせて戴きました。
 
貴下のような有識者の方であれば、からかってみるとボロが出るので楽しめる部分もあるかもしれない程度の知識の場合が多いのですが、理系の学生の場合は講義で得た知識等で補完した理論武装をしている場合もあって見抜けない素人さんも多いのかもしれません。
 
この方式のオーブンは、山崎パンで業務用に開発をしようとしている時期に就業先の役員が話を戴き耳にしたことがある技術です。ヒーターを直接使って空気を熱するよりも、水を加熱した方が熱伝達率が良く、パンも良い状態に仕上がることから採用を検討していたようでした。今や、一般家庭にも導入され驚いています。

投稿: たぁ坊 | 2008年1月 8日 (火) 11時54分

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