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2008年1月30日 (水)

中国製冷凍ギョーザから有機リン系農薬「メタミドホス」が検出 -千葉、兵庫で食中毒

JTフーズが輸入した中国製冷凍ギョーザを食べた千葉県、兵庫県の3家族10名が食中毒を起こし、うち9名が入院し、3名が重症、5歳の女児1名が意識不明の重体となっている(30日現在の報道)。

冷凍ギョーザを分析したところ、有機リン系農薬のメタミドホス(Methamidophos)が検出されたという。ギョーザのパッケージの裏から、メタミドホスが検出されたという報道もある。メタミドホスは日本では農薬に使用されていないためか、「毒物」には指定されていない。しかし、その毒性を見ると、水銀や青酸カリと同じ分類の「毒物」に指定されてもおかしくないレベルの強い毒性をもっている。

■ メタミドホスの構造

Methamidophos_3メタミドホス(Methamidophos)は分子量141.1、分子式C2H8NO2PSで、構造式はの通りである。水によく溶ける(水1リットルに200グラム以上)ので親水性農薬とも呼ばれる。

メタミドホスは、同じく農薬として使用されているアセフェート(Acephate)が分解しても生じる。アセフェートは、メタミドホスのアミノ基をアセチル化(-COCH3)した構造であ る(下)。

純粋なメタミドホスの融点は44.5℃だが、実際に使用されている不純物を含むものの融点は37~39℃。メタミドホスは沸点に到達する前に熱分解してしまうため、メタミドホスに沸点はない。また、熱分解による生成物も有毒とされている。

Acephate_4

アセフェートAcephateの構造式

■ 有機リン系農薬メタミドホスの急性毒性について

ヒトに対する毒性は動物実験の結果から推定される。毒に対する抵抗性は体重に比例するので、体重60キロの成人なら、半数致死量は0.6~3.0グラムというところか。体重の軽い子どもなら、もっと少量で致命的になる。

オレゴン州立大学のWebによると

経口摂取時の半数致死量(LD50)
  ラット:体重1キロ当たり16~21ミリグラム
  ブタ:体重1キロ当たり30~50ミリグラム
  ウサギ:体重1キロ当たり10~30ミリグラム

経皮吸収の半数致死量(LD50)・・・皮膚から浸透した場合
  ラット:体重1キロ当たり50ミリグラム
  ウサギ:体重1キロ当たり118ミリグラム

吸入した場合の半数致死量(LD50)・・・呼吸で吸い込んだ場合
  ラット:体重1キロ当たり9ミリグラム
  マウス:体重1キロ当たり19ミリグラム

決して怖がらせるつもりではないが、毒性が発現するメカニズムはコリンエステラーゼ阻害、あの毒ガス「サリン」と同じである。

ギョーザの原料に、農薬が残留していた可能性があるわけだが、このような状態では中国産野菜を安心して食べるわけにはいかないであろう。この農薬は水によく溶けるので、みずみずしい野菜の中に溶け込んでいるケースも考えられる。工場で加工時に混入した可能性もある。

私は、JT関連会社の作る食品の味が好きになれないので、たまたま意識して買わないことにしていたのだが、JTに限らず、他のメーカーでも十分考えられる事件である。

余談
 専売公社が日本たばこ(JT)株式会社になってから、色々な飲料を発売しているが、以前の缶コーヒー(Rootsブランドになる前の昔のもの、Rootsはだいぶましになったが・・・)はひどい味であった。バブルの頃、派手にCMしていた「クリーミーカフェ」という名の缶コーヒーがあったが、全くとんでもない味で、缶コーヒーを飲みきらずに捨てたのは、あれが初めてだった。あの頃は、JRブランド(岩清水と銘打ってJR東日本が出していた)とJTブランドの飲料はダメダメというのが、私の周囲での一致した意見だった。「桃の天然水」は売れているらしいが、甘すぎることはおいておいても、加糖したドリンクを「天然水」と銘打って売るのは企業倫理に反する行為である。ミネラルウォーターと誤認される。「華茶果茶(かちゃかちゃ)」という発酵した風な妙な味のお茶も出していたが、すぐに消えてしまった。飲料開発のノウハウがなかったのか、開発者がただの味オンチだったのか気になるところである。

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2008年1月20日 (日)

JR東日本が東京駅で「発電床」の実験 -実用性は・・・?

■ 圧電素子による発電は実証実験する段階か?

日経新聞などによると、JR東日本が東京駅八重洲北口改札で「発電床」の実験を1月19日から始めるという。改札口に敷いた発電用マットを乗客が「踏む」ことによって発電するものである。この実験は一昨年に続いて2回目。

約90平方メートルの発電用マットに、直径35mmの円盤状の「圧電素子」が5万4000個敷き詰めてあり、乗客が一人歩くごとに10ワット秒100ワットの電球を0.1秒点灯、すなわち10ジュール)発電し、一日でトータル500キロワット秒100ワットの電球を80分点灯)の発電を目標にするという。割り算すると一日で5万人が踏むのだとわかる。

500キロワット秒という単位は耳慣れないが、電気代の計算に使うキロワット時(kWh)に直すと、1日でわずか0.14キロワット時。1日の発電量は電気代にすると約3円である。

ちなみに太陽電池では、1平方メートル当たり1時間で0.1キロワット時は発電できるので、90平方メートル使えば、1時間で9キロワット時は得られる。圧電素子による「発電床」は、太陽電池と比較しても、かなり分が悪い。

JR東日本がこのような非実用的な技術を研究所レベルでなく、実際に改札口で検証しようとしている真意がいくら考えてもわからないのである。「将来は自動改札機の電力を賄えるようにしたい」と記事にはあったが、よほどの新技術がないと無理な話だろう。

■ 圧電素子とは

圧電素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(通称PZT)などのセラミックスであり、硬い材料である。圧力をかけて結晶を圧縮すると電流が流れ、圧力を解除して結晶を元に戻すと逆方向に電流が流れる。この性質を利用して、カチッとやるタイプの100円ライターに使用されている。カチッとやると、圧電素子が急に圧縮されるために電気火花がとんで、ガスに火が着くのである。昔の100円ライターは親指でダイヤルを回すタイプだったが、1982年ごろから、使い捨ての圧電素子タイプが登場して、普及するようになった。登場当初は確か200円で、佐藤B作が「ピエット」(岩堀金属)という商品を派手にテレビCMしていた記憶がある。

圧電素子は、どうして圧縮すると電流が流れるのだろうか。結晶構造を見てみると、陰イオンの重心と陽イオンの重心にずれがあるのである。そのため、圧力をかけなくても電気的に分極している状態になっている。圧縮されると、分極状態が変わるために、電流が外に流れていくのである。コンデンサに例えれば2つの極板が近づいた場合と同じ。

■ 押してもへこまないエレベータのボタン

きれいなビルのエレベータで、押してもへこまないエレベータのボタンを見かけることがある。あれも圧電素子の一種を使ったものだ。デザイン的にへこむ形をしているにもかかわらず、押してみると凹まず、ランプだけ点灯する。

話は変わるが、あれは不快である。フェイントをかけられた気分になる。凹むと思って押したボタンは、へこんで欲しいものである。ある設計学の先生は、人を不快にさせる設計の代表例として、へこまないエレベータのボタンを挙げておられたが、大いに賛同した。

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2008年1月11日 (金)

イソジンうがい薬(褐色)+麦茶→紫色の理由

風邪の季節である。

麦茶を入れていたコップを洗わずに水を入れ、イソジンのうがい薬を2、3滴入れたら、色が変わって、黒っぽい紫色になってしまった。

イソジンのうがい薬の原液は褐色で、うがいに使うために水で薄めても、通常、褐色のままである。しかし、麦茶でうがいする人もいるくらいだからと、麦茶の付いたコップを洗わずに使ったら、一気に紫色に変色してしまった。

麦茶はカゴメの六条麦茶で原料は六条大麦(国産100%)とだけ記載がある。うがい薬はイソジンの定番品で、原液100ミリリットル中にポピドンヨード7グラム(有効ヨウ素700ミリグラム)と記載がある。ポピドンヨードとはヨウ素の化合物である。

試しに、伊藤園のおーいお茶(緑茶)で同じことをしてみたが、色は変わらず、褐色のままである。

紫色なのでヨウ素(I2)でも遊離したのかなと考えて、なんで麦茶の成分で変色するのかと数分間、思案していたが、何も難しい話ではなかった。最も基本的な小学校理科レベルのことを忘れてしまっていたのであった。

ヨウ素液 + デンプン → 青紫色

である。

麦茶の原料の大麦にはデンプンが含まれている。イソジンで紫色に変わったのは、麦茶中にデンプンが溶けていたためと考えられるのであった。(イソジンはデンプンに対して、ヨウ素液と同様の作用をする)

先入観をもって難しく考えてしまうと、意外と基本的なことを忘れてしまいがちだなと思った。

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2008年1月 4日 (金)

2008年は「ドラえもん」でタイムマシンが発明された年

化学の道に進んでから、タイムマシンのことなんぞ、思索しなくなっていたが、本日付け朝日新聞の「私の視点」に東北大学教授の二間瀬敏史氏(天文学)が「タイムマシン ドラえもんに追いつこう」と題して、タイムマシンの物理について、夢のある話を書かれていた。面白い内容だった。

初めて知ったのだが、漫画の「ドラえもん」ではタイムマシンは2008年に発明される設定になっている。出典は、てんとう虫コミックス41巻所収『未来図書券』、初出は小学5年生、6年生1989年11月号。残念ながら自分が子どもの頃に読んだ初期の作品での設定ではなかった。私が読んだのは14巻までで、それ以降はさすがに読んでいない。

(「タイムマシン ドラえもんに追いつこう」より引用)
 夢物語と思うかもしれませんが、タイムマシンは物理学でも真剣に研究されています。
(中略)
 実際、未来に行くことはそう難しくありません。太陽から約4.3光年離れた星に光速度の80%で往復すれば、地球の時計では10年9ヵ月かかります。その時に宇宙船の時計では6年と6ヵ月ほどしかたっておらず、4年以上も未来の地球に戻ることになるのです。

これは、アインシュタインの一般相対性理論と一緒によく出てくる話である。光速に近い速度で運動していると、時間の進み方が遅くなるというもので、浦島太郎効果と呼ぶ人もいる。技術的には今のところ無理だが、原理的には未来に行くことは可能であるといえる。未来に行けても、元の時間、過去に戻れないと、時間旅行とはいえない。では、タイムマシンで過去に戻るにはどうするか?

 タイムマシンで過去に戻り、まだ若い自分のお父さんと、お母さんではない別の女性との仲を取り持ったとします。お父さんがその女性と結婚したら、自分は生まれてきません。では、過去に戻った自分はどこから来たのでしょう。

 こうした矛盾を避ける方法はいくつかあります。何をやっても結局、お父さんとお母さんは結婚する、つまり過去は変えられないというのが一つ。過去も未来も変えられるが、その未来は自分がやって来た未来とは違うという考え方もあります。この立場は多世界解釈といい、複数の世界が同時に存在することを前提にしています。量子力学という物理学の法則ではいま、多世界解釈の可能性が熱心に研究されています。

 過去へのタイムマシンの作り方はだれも明確に示せていません。たとえば直径10キロ、長さ100キロで太陽くらいの質量を持った円柱を毎秒2500回転くらいさせ、周囲を回ると過去に戻れる、との予想がありますが、確実ではありません。

この部分ははじめて知った。量子力学における多世界解釈という言葉は聞いたことがあったが、それがタイムマシンにおけるパラレルワールドの存在とつながっているという話は新鮮だった。

最先端の科学技術には量子力学の恩恵を受けているものが少なくないが、量子力学は人間の直観では理解しづらい学問分野で、多くの学生を苦しめてきたものである。量子力学における多世界解釈という最先端になると、さらに輪をかけて直観的に理解しにい方向に発展しつつあるようである。

科学(サイエンス)の定義の一つに、実験により実証可能であることというのがある。実験で実証されれば正しいとされ、実験で学説に反する結果が出れば間違いとされる。実験により真偽が確かめられないような学説は、科学でないとされ、「間違ってさえいない(not even wrong)」とされる。

上に引用した複数の世界が同時に存在するという多世界解釈が、実験的に真偽を確認できるのかどうか、興味があるところである。確かめられるとすれば、いつ頃だろうか。正しいことが実証されれば、アインシュタインクラスのブレイクスルーは間違いない。

夢のある話である。

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高速道路の珍しい電光表示 「三木東-三木小野間 歩行者有 注意」

元日の午前11時30分頃、山陽自動車道(高速道路)の下り車線を走行中のことだった。電光表示板に「三木東-三木小野間 歩行者有 注意」と見たことのない珍しい表示。歩行者はいったいどれくらいの人数で、どういう理由で、どこを歩いているのか。路側帯なのか、走行車線なのか、分離帯なのか。

これだけの表示ではどうしたらよいかわからない。高速道路を徐行するわけにも行かないので、気をつけながら、しばらく普通に走っていると、道路公団の黄色いパトロールカーが路側帯に止まっているのが目に入った。ちょうど係員が後方に向かって赤い大きな旗を振りはじめたところである。赤い旗は通常、止まれを意味するが、止まれと言っているのか、注意しろと言っているのか、これもまた意味が分からない。こんなところで止まれば、かなり高い確率で追突される。

注意しながら行くと、その200メートル程先の路側帯の左端をお正月らしい落ち着いた格好をした若い男女が二人、散歩でもするように寄り添って歩いていたのであった。サービスエリアからだいぶ距離があったが、この二人はいったいどこから紛れ込んだのか。荷物も少なかったから、あたかもデートの途中に紛れ込んだという感じであった。

ちなみに、私はまだ出くわしたことがないが、高速道路で逆走車がある場合に、電光表示板に「逆走車有 注意」と表示されるそうである。これには本当に出くわしたくない。大抵の場合、追い越し車線を逆送してくるので、追い越し車線を空けておけばよいのだろうが、知らずに追い越し車線で遭遇したときは恐怖である。

(財)交通事故総合分析センター(イタルダ)による提供資料「危険な高速道路の逆走事故」によれば、逆走車が事故を起こした場合に死亡事故になる割合(致死率)は約12%で、他の死傷事故の2%と比べて極めて高い数字になっている。ほとんどの場合、時速100キロ前後での正面衝突だから、当然だろう。

しかし、逆走車があると100%事故になるかというとそうではないらしい。逆走車認知件数(逆走事案)と逆走事故件数を比べてみると、だいたい逆走車の20~30台に1台の割合で事故を起こしている計算になる。

1982年の正月のことだったが、中学・高校時代に英語でお世話になった故横道先生が、姫路バイパスの追い越し車線で逆走車に遭遇したときの恐怖を、授業時間を1コマ使って語られていたことがあった。その後も折に触れ、「あのとき一回、死んだようなもんやった」と話されていたので、本当にすんでのところで、事故をかわされたらしかった。その逆走車も事故を起こしたとは新聞に載っていなかったので、事故を起こさないまま、帰還したのであろう。

高速道路で逆走車があって追い越し車線を空けておいた場合、追い越し車線を逆走する車と、走行車線を順走する車は時速100キロ前後ですれ違うことになる。この状態はもちろん危険であるが、自動車専用道路の対面通行で対向車と時速100キロ前後ですれ違うことはよくあることである。能登有料道路の七尾付近は片側一車線、中央分離帯もセンターポールもない対面通行でクルマの流れは時速90キロ前後になっている。潜在的には高速道路を逆走車が走っているのと同じくらい危険な状態である。そのせいか、よく事故が起こっている。センターポールもない状態では対向車線を、うっかり追い越し車線と誤認する人がいても不思議ではない。制限速度が60キロの国道でさえ中央分離帯が設置されているものが多いのに、よくあんな有料道路を設計したものだと思う。

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