中国製冷凍ギョーザから有機リン系農薬「メタミドホス」が検出 -千葉、兵庫で食中毒
JTフーズが輸入した中国製冷凍ギョーザを食べた千葉県、兵庫県の3家族10名が食中毒を起こし、うち9名が入院し、3名が重症、5歳の女児1名が意識不明の重体となっている(30日現在の報道)。
冷凍ギョーザを分析したところ、有機リン系農薬のメタミドホス(Methamidophos)が検出されたという。ギョーザのパッケージの裏から、メタミドホスが検出されたという報道もある。メタミドホスは日本では農薬に使用されていないためか、「毒物」には指定されていない。しかし、その毒性を見ると、水銀や青酸カリと同じ分類の「毒物」に指定されてもおかしくないレベルの強い毒性をもっている。
■ メタミドホスの構造
メタミドホス(Methamidophos)は分子量141.1、分子式C2H8NO2PSで、構造式は左の通りである。水によく溶ける(水1リットルに200グラム以上)ので親水性農薬とも呼ばれる。
メタミドホスは、同じく農薬として使用されているアセフェート(Acephate)が分解しても生じる。アセフェートは、メタミドホスのアミノ基をアセチル化(-COCH3)した構造であ る(下)。
純粋なメタミドホスの融点は44.5℃だが、実際に使用されている不純物を含むものの融点は37~39℃。メタミドホスは沸点に到達する前に熱分解してしまうため、メタミドホスに沸点はない。また、熱分解による生成物も有毒とされている。
アセフェートAcephateの構造式
■ 有機リン系農薬メタミドホスの急性毒性について
ヒトに対する毒性は動物実験の結果から推定される。毒に対する抵抗性は体重に比例するので、体重60キロの成人なら、半数致死量は0.6~3.0グラムというところか。体重の軽い子どもなら、もっと少量で致命的になる。
オレゴン州立大学のWebによると
経口摂取時の半数致死量(LD50)
ラット:体重1キロ当たり16~21ミリグラム
ブタ:体重1キロ当たり30~50ミリグラム
ウサギ:体重1キロ当たり10~30ミリグラム経皮吸収の半数致死量(LD50)・・・皮膚から浸透した場合
ラット:体重1キロ当たり50ミリグラム
ウサギ:体重1キロ当たり118ミリグラム吸入した場合の半数致死量(LD50)・・・呼吸で吸い込んだ場合
ラット:体重1キロ当たり9ミリグラム
マウス:体重1キロ当たり19ミリグラム
決して怖がらせるつもりではないが、毒性が発現するメカニズムはコリンエステラーゼ阻害、あの毒ガス「サリン」と同じである。
ギョーザの原料に、農薬が残留していた可能性があるわけだが、このような状態では中国産野菜を安心して食べるわけにはいかないであろう。この農薬は水によく溶けるので、みずみずしい野菜の中に溶け込んでいるケースも考えられる。工場で加工時に混入した可能性もある。
私は、JT関連会社の作る食品の味が好きになれないので、たまたま意識して買わないことにしていたのだが、JTに限らず、他のメーカーでも十分考えられる事件である。
余談
専売公社が日本たばこ(JT)株式会社になってから、色々な飲料を発売しているが、以前の缶コーヒー(Rootsブランドになる前の昔のもの、Rootsはだいぶましになったが・・・)はひどい味であった。バブルの頃、派手にCMしていた「クリーミーカフェ」という名の缶コーヒーがあったが、全くとんでもない味で、缶コーヒーを飲みきらずに捨てたのは、あれが初めてだった。あの頃は、JRブランド(岩清水と銘打ってJR東日本が出していた)とJTブランドの飲料はダメダメというのが、私の周囲での一致した意見だった。「桃の天然水」は売れているらしいが、甘すぎることはおいておいても、加糖したドリンクを「天然水」と銘打って売るのは企業倫理に反する行為である。ミネラルウォーターと誤認される。「華茶果茶(かちゃかちゃ)」という発酵した風な妙な味のお茶も出していたが、すぐに消えてしまった。飲料開発のノウハウがなかったのか、開発者がただの味オンチだったのか気になるところである。
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