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2008年5月31日 (土)

3個の中から1個の当たりを選ぶときの不思議な確率の話 モンティ・ホール問題

モンティ・ホール問題(Monty Hall problem)と呼ばれる単純で不思議な確率の話がある。ウィキペディアによると数学者でさえ正答に対して、反論したという。

問題は至ってシンプルである。

司会者が3個の箱A、B、Cを客に見せる。そのうち1個にだけ当たりの景品が入っていて、残りの2個はハズレの空箱とする。客はどれが当たりかを知らない。客に1個を選ばせて、客がBの箱を選んだとする。司会は選ばれなかった2個のうち、1個をあけて、それがハズレであることを客に見せる。このとき、司会はどれが当たりでどれがハズレかを知っていて、必ずハズレの箱をあけるものとする。今は箱Aをあけたとしよう。

司会はこの後、選択を変更できることを客に伝え、はじめ選んだ箱Bのままでいくか、それともまだあけていないもう1個の箱Cを選びなおすか、質問する。

このとき客は、選択する箱をもう1個に変更したほうがよいか、はじめのままでいくのがよいか?

というのが問題である。

この問題を出すと、Bが当たるのも、Cが当たるのも確率はそれぞれ2分の1だから、どっちでもよいという説。だいたい普通は、この説が多数派になる。これを2分の1説と呼ぶことにする。

これに対して、司会が箱Aがハズレであることを明かした時点で、Aが当たる確率であった3分の1が、Cが当たる確率に加わるので、Cの当たる確率は3分の2になる。だから、Cに変更する方が当たる確率が上がる。選択を変更すべきという説である。これを3分の2説と呼ぶことにする。

この問題を提示すると、ディベートのように議論が白熱して、その場では多数派が正解とされかねないことが多いのだが、結論から言うと、選択を変更すべきという3分の2説が正しい。こっちを主張して、納得する人は少数派だがこちらが正解である。実際、誰か相手を見つけてやってもらうと、選択を変更する方が当たる確率が上がる。

直観的に説明すれば、司会者がCをあけずに残したのは、Cが当たりであることを知っていたからという可能性が高い。司会者がCを開けずに、Aを開けた時点で、客にAではなく、Cが当たりの可能性が高いという情報を伝えてしまっているのである。Bは客が選んでいてルール上、司会者は開けられないので、司会者の行動は、Bに関する情報を増やさない(はじめの確率3分の1のまま)。もし、AかCかというなら、Cですよという情報を客に伝えてしまったわけである。

もっと直観的なイメージでとらえるなら、10個の箱があって、当たりがそのうち1個ある。司会者がそのうち8個のハズレの箱をあけてくれたときを考えればよい。残りの1個を開けなかったのはそれが当たりだからという理由の可能性が高い。客が選んだ箱を司会者が開けなかったのは客が選んでいるからである。感覚的説明では納得いかない人のために、数学(算数)的に、すべてのケースについてシミュレーションしてみると以下の表のようになる。

Monty_4 

客がBを選んで、司会がAを開けた時点で残される可能性は、黄色く塗った部分だけである。

当初、Cが当たり(and 客がB選ぶ and 司会がA開ける)は9分の1、Bが当たり(and 客がB選ぶ and 司会がA開ける)は18分の1の確率であった。他の可能性が消えたので、これらの比2:1を合計が1になるように直すと、Cが当たりは3分の2、Bが当たりは3分の1の確率となる

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2008年5月22日 (木)

使ってよい単位と使ってはいけない単位 -SI単位、法定計量単位

昔、天気予報では、気圧を表現するのにミリバール(mbar)という単位が使われていたが、今はヘクトパスカル(hPa)である。これは1992年(平成4年)に計量法が改正されて、気圧(圧力)を表現するにはSI単位(エスアイ単位)を使うことになったためである。ミリバールはSI単位ではないが、数字上はヘクトパスカル(パスカルPaの100倍)と同じ値になるので、混乱は少なかったようである。例えば、台風の中心気圧950ミリバールは950ヘクトパスカルである。

使用すべき単位は、計量法という法律で細かく定められていて、使用してはいけない単位もある。外国では、長さの単位でインチinch(1 inch = 2.54 cm)が使われることがあるが、インチの目盛りをつけた定規を日本国内で販売すると違法である。同じく、ポンドpound(1 pound = 454 g)の目盛りをつけた体重計も販売できない。長さ、質量はメートルm、キログラムkgが法定計量単位とされていて、インチ、ポンドは法定計量単位ではないからである。

計量法第9条1項

第2条第1項第1号に掲げる物象の状態の量の計量に使用する計量器であって非法定計量単位による目盛又は表記を付したものは、販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。

kgf/cm2表記の圧力計、カロリーcal表記の熱量計、熱伝導率計も今は販売できない。圧力はパスカルPa(または気圧atm)、熱量はジュールJが法定計量単位だからである。ただし例外もあり、血圧計はmmHg表記が認められている。医療関係では間違いを避けるため、従来の単位の使用が引き続き認められている例が多い。

Keir_3

使ってよい単位は、「法定計量単位」と「非法定計量単位の一部(17量)」

使用できない単位は、「非法定計量単位のうち、上の17量以外」

非法定計量単位のうち、17量は使ってよいことになっている。この理由は、これらの量を測定するときに使用する単位が法定計量単位にないからである。例えば、比重、湿度、硬さ、圧縮強さ、引っ張り強さ、耐火度などで、これらの量を示すための単位が、法定計量単位には定められていない。

「法定計量単位」は、「SI単位系すべて」と「非SI単位の一部」。

「非SI単位」なのに「法定計量単位」に含まれているものは、次の3つの理由に分類される。

SI単位では表せない量(7量)。音圧レベルのデシベルdBなど

SI単位でも表せるが非SIの方がメジャーな量(5量)。圧力のatm(気圧)、粘度のポアズP、濃度の%やppmやpH、回転速度のrpmなど

SI単位で表せるが、用途によっては非SIの方が使いやすい場合(13量)。長さの海里(海面、空中に限定)、オングストロームÅ(電磁波、膜厚、結晶に限定)、熱量のカロリー(栄養、代謝に限定)

メモ

オングストロームはSI単位ではないが、法定計量単位となっている。

カロリーcalの使用は栄養、代謝に限定されるので、熱エネルギーにはSI単位のジュールJを使う。

%、ppm、pHはSI単位ではないが、法定計量単位なので使用できる。ちなみにSI単位はmolを使用した濃度表記である。

力の単位である重量キログラムkgfは現在、使用禁止(非法定計量単位である)。

圧力の表記はSI単位ではパスカルPaだが、気圧(atm)も法定計量単位なので使用は可能。mmHgは血圧以外には使用できない。

などなど

なお、使用できないというのは、「取引または証明に用いてはならない(計量法第8条)」なので、実験ノートや学生のレポートに記載したら違法になるというものではありません

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2008年5月 8日 (木)

オービタル(原子軌道)を図示するときによくある混乱、間違い

高校化学で、原子内の電子は、K殻、L殻、M殻・・・といった電子殻に一定の規則で収容されていると習う。この電子殻はさらに細かく、s軌道、p軌道、d軌道・・・といったオービタル(orbital)に分かれている。

このオービタルの形を図で表現する際に混乱、間違いが多いようである。

2p軌道(2px軌道)を例にとる。

Orbital1_2

2p軌道を図で表すとき、上図のうち、いずれかの形状で表現されることがほとんどである。ここでは形状だけを問題にして、色の付け方、陰影は問題にしないものとする。

結論からいうと、(1)や(2)の図を使用して、2p軌道の電子密度の分布がこうなっているとか、2p軌道の電子雲の形がこうであるというのは間違いである電子雲の形、電子密度の分布を表現するのは(3)の図である。

(3)の図は、電子密度や波動関数の値が等しい値となる点を結んで面とした等値曲面(contour surface)を表した図である。この図を見れば、だいたいどういう領域に電子がいるかをイメージすることができる。
※電子密度は波動関数の二乗だが、この場合、形状は同じく(3)となる。

では、形状の異なる(1)や(2)はいったい何を表した図なのか。(2)は見かけることの非常に多い図である。(3)を近似したものではない。実は、(1)や(2)はpolar plot と呼ばれる図で、電子雲を直接表現した図ではない。polar plotは等値曲面、等電子密度面とは異なる

(1)について考えよう。まず原点(原子の中心、球同士が接しているあたり)をとり、原点から図の球の表面までの距離を考えると、この距離がその方向における波動関数の値に比例した値となる図である。(波動関数におけるrは一定と考えておく)。

(2)の場合も同様だが、こちらは原点から曲面までの距離が、その方向における電子密度に比例する図となる。(2)は、(1)の距離を二乗したものである。

重要な点は、2p軌道の電子雲の分布、電子密度を表現するのに(2)の図を使うのは間違いで、(3)の図が正しいということである。

例えば、高校参考書のチャート式「新化学II」では、2p軌道の電子雲モデルを表現するのに(2)の図を使っているが不適切である。こういった例は意外に多い。

ここら辺の議論はO. Kikuchi and K. Suzuki, Journal of Chemical Education, 62, 206-209 (1985).に非常にスマートにまとめられている。

以下、図を引用して、解説する。

Fig1

2p軌道の波動関数において、rとθを一定と考えると、φの項だけが残るわけだが、その項はcos φである。図(a)のように作図すると、OPの長さがcos φに比例するようになる。図(a)の内側の2つの円が波動関数のpolar plotとなる。図(b)は、OPの長さがcos φの二乗に比例するように作図したもので、電子密度のpolar plotである。図(c)、図(d)はそれぞれ波動関数、電子密度が同じ値となる点を線で結んだものである。いわば波動関数、電子密度の等高線のようなものとなる。

電子分布を表現するのには(c)、(d)が適切で、(a)、(b)は不適切ということになる。

現在、等電子密度面の計算、図示などはPCを用いれば比較的簡単にできるので、polar plotなどで図示せず、等電子密度面(等値曲面)で示して欲しいものだ。上に引用した論文の著者らも、20余年前に同じことを述べている。

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2008年5月 7日 (水)

古い98互換機とMS-DOS Ver. 5.00に関するメモ

うちの研究室では1994年のPC(98互換機)がまだ現役である。マウスもWindowsも使えず、黒い画面に出るMS-DOSのプロンプト(">"のこと)にキーボードから入力するタイプである。

古いPCを使っているのには、もちろん理由があって、古い測定装置(粉末X線回折装置島津XD-D1)とセットになっているからである。この測定装置は、当時の独自のインターフェースを通じてPCとつながっているので、PCが壊れると測定装置は制御できなくなる。

PCを最新のWindows XPの機種に更新して、この測定装置を制御することは無理だという。装置側のインターフェースが、当時のPCに合わせて作ってあるかららしい。まあ、技術的には絶対に無理ではないが、かなりのコストがかかるということだ。

Windowsに慣れてしまった人は、MS-DOSや古い98互換機(PC-9801シリーズを含めて)の使い方はまったく知らないので、以下に使い方などのメモ。

スペック:PC-486SE(EPSON製の98互換機)、メモリ1.6メガバイト、MS-DOS Ver. 5.00

※MS-DOSは「エムエスドス」と読む。
※※98は「きゅうはち」と読む。1990年代前半までに、日本で売れに売れたNEC 9801シリーズのことをさす。Windows 98のことではない。EPSONから98互換機が販売されていた。

■ 電源の入れ方(重要)

1.フロッピーディスクを取り出しておく(重要)。2.で電源を入れたときにフロッピーが損傷する可能性があるため。

2.ディスプレイ(モニター)、PC本体の電源を入れる。ハードディスクがあり、システムがハードディスクにある場合はそのまま待つ。フロッピーにシステムが載せてある場合(システムディスクという)は、この後、フロッピーを挿入する。電源を入れて、数秒以内にフロッピーを入れると、PCはフロッピーにシステムがあると思い込むので、システムがなければ立ち上がらなくなる(これは今のPCも同じ)。

3.MS-DOSのプロンプト > が表示されるので、命令を入力する。メニューが起動される場合は、メニューにしたがって操作する。

注意点など:
 ハードディスクはCドライブではなく、Aドライブのことが多い(重要)
 大文字と小文字の区別はないので、好きな方を使う。
 ENTERキーを最後に押さないと、入力していないのと同じ
 メニューでは、ファイルの選択、選択解除にスペースキーを使うものがなぜか多い
 STOPキーを押すとほとんどの場合、プログラムは停止する

何らかの理由でプログラムが停まって、もう一度、起動時と同じプログラムを立ち上げたいときは、>の後ろに AUTOEXEC.BAT と入力して、ENTERすればよい。それでも動かないときは、>の後ろに、 A:\ など、ハードディスクのドライブ名+コロン+\を入力する。AUTOEXEC.BATは、UNIXの.login(ドットログイン)のようなもの。

■ 電源の切り方(重要)

1.プログラムを終了させて、MS-DOSのプロンプト表示 > にする。

2.STOPキーをゆっくりと2回押す。ハードディスクを損傷しにくい状態にするため

3.フロッピーディスクを取り出す。

4.PC本体、ディスプレイの電源を切る。

■ よく使うMS-DOSのコマンド例

以下はプロンプト > から入力して実行するコマンドの例

DIR   ディレクトリの中のファイル一覧を表示する。一気に表示されてしまうので、DIRの後ろに /P や /W を付けて、小刻みに表示させることが多い。ディレクトリとはフォルダのことと思っておいてよい。 

A:   Aドライブに移る。Bドライブも同様。

CD   ディレクトリの位置を変える。 CD A:\TEST でAドライブのTESTという名のディレクトリに移る。この場合、\マークは一番、根元、つまりトップの意味である。いま、Aドライブの根元にいるなら、 CD TEST だけでよい。

COPY   ファイルをコピーする  COPY A:XRD.TXT B:  でAドライブのXRD.TXTというファイルをBドライブにコピーする。

MORE   ファイルの中身を表示する。 TYPE XRD.TXT | MORE でファイルの中身が1ページずつ表示されるが、テキスト形式でない場合は文字化けする。| MOREを付けずに、TYPEを使うと一気に中身が表示される。

*    *.TXT で、拡張子がTXTのファイル全てを意味する。例えば COPY A:*.TXT B: でAドライブにある拡張子TXTのファイルを全て、Bドライブにコピーできる。*.*とすれば、ディレクトリ内の全ファイルを意味する。

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