« 北陸鉄道 鶴来・加賀一の宮間廃止へ | トップページ | 個人的な今年の重大ニュース »

2008年10月31日 (金)

石こうボードが雨水と反応して、硫化水素が発生!?

ホテルの地下室に、石膏ボードなどの廃材を不法投棄したとして、29日、ホテルチェーンの元社長が逮捕された。

今年5月、「東横イン松江駅前」で地下室から硫化水素が大量に発生して、近くにいた男女8人が手当てを受ける騒ぎがあったのだが、地下室に廃棄されていた石こうボードが発生源であった。逮捕された元社長は、この不法投棄を指示したという。

石こうボードが雨水に反応し今年5月28日、致死量を上回る濃度の硫化水素が発生」(日経)

酸素が少ない状態で石膏ボード内の硫酸カルシウムと雨水が反応し、硫化水素が発生したとみられ」(朝日)

と硫化水素が発生した原因を説明しているが、これには注釈が必要である。

石こうボード(硫酸カルシウム)と雨水だけの化学反応では、硫化水素は発生しない。たとえ雨水が酸性雨だったとしてもである。

石こうボードは、石こう、すなわち硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2H2O)が主成分である。この硫酸カルシウム二水和物中の硫黄原子Sの酸化数は+6一方、硫化水素H2S中のSの酸化数は-2である。

言ってみれば、石こう中の硫黄は陽イオンのようなもの(厳密にはちょっと違うが)で、硫化水素中の硫黄は陰イオンである。前者から後者に変化するには還元剤が必要で、雨水がかかるだけとか、酸性の薬品がかかるだけでは、この反応は進行しない。

石こうが硫化水素に変化するためには、もっと複雑な条件が必要である。実際の反応では、硫酸塩還元菌という菌が悪さをして、硫酸塩(石こう)を硫化水素に変えている。最終処分場などの土壌中には、このような菌がいるから、気をつけなければいけないが、ホテルの地下室でもこのような反応が起こったのは意外であった。

廃棄物最終処分場に埋め立てられた石こうボードから硫化水素が発生することは、かねてから問題になっていて、廃棄物関係者の間では、比較的よく知られた話である。

石こうボードに貼ってある紙が硫酸塩還元菌の栄養分になるから、紙をはがして埋め立てれば大丈夫という話が一時あったが、紙をはがしても栄養分はほかにあるから、やっぱりダメということになったという話があった。

詳しい発生条件は、国立環境研究所研究報告第188号 「安定型最終処分場における高濃度硫化水素発生機構の解明ならびにその環境汚染防止対策に関する研究」
http://www.nies.go.jp/kanko/kenkyu/pdf/r-188-2005.pdf

に記載されている。2005年発行だから、比較的最近の報告である。

上の報告書に詳しいが、とにかく硫酸塩還元菌がいて、かつこの菌が活動できる条件(酸素が少ない、有機物があるなど)が整うと、石こうなど硫酸塩から硫化水素が発生する。

石こうボードが不法投棄されていたホテルの地下室は配管室だったというが、使用中の建築物中で発生するのは、新知見ではないかと思う。不法投棄はとがめられるべきだが、地下室の石こうボードから硫化水素の発生を予測しなければならないのは、少し酷である。

とにかく、石こうボードは部屋の仕切りに多用されているが、それに水(酸性雨含む)がかかるだけで反応して、硫化水素が発生するというのは、誤解である(新聞記事を見て、そのように思っている人が多い)。硫化水素の発生には、硫酸塩還元菌の作用が必要である。

|

« 北陸鉄道 鶴来・加賀一の宮間廃止へ | トップページ | 個人的な今年の重大ニュース »

コメント

こんにちは。
「もうつあるとの部屋」というブログで、日々の蓄積された思想を余蘊無く展開しているものです。
大学生ですが、よろしくおねがいします。

私の場合、哲学や文学宗教の研究を通して、「人間とはなにか」「理性のあり方」を思弁的に研究しているのですが、専門は化学です。

人間とはいい意味で「一過性」悪い意味で「刹那」、私はその本質を生まれながらに知っている存在なのです。

悲しいかな、世界中の人間は「利己主義」という先進的な思想に翻弄され、本源的な人間の価値を見失いつつあります。

人間とは悲しく儚い単体です。

私には夢があります。

それは「自己からの解放」です。つまり自分という枠(フレーム)から解放され、本当の意味での価値を探求する事です。

シュバイツアーはいいました。

30までは学問してもいいが、それからは社会のために生きよ、と。

私の人生はこの箴言どおりにいくかは分かりません。

しかし、少しでも人間の世界を改善できる一人間になりたいというのが所感です。

現在、量子論を勉強しています。この中にある不確定性原理は人間の認識力の限界を指すのか、自然界の曖昧さをさすのかは分かりません。人間のいる世界はやはりカオスなのでしょうか。

では

ときどき私の拙いブログにもきてくださいね。

よいお年をお迎えください。

投稿: もうつあると | 2008年12月28日 (日) 15時49分

はじめまして。だいぶ前の記事ですが、「石膏ボード 悪臭」で検索したらこちらのページがヒットしました。

自宅の風呂場周辺の石膏ボードから悪臭(硫化水素、およびアンモニア臭)がするので気になっておりました。特に夏場酷いです。よくみると悪臭のするボードは壁紙がブヨブヨになって剥がれかけており、中がボロボロになっています。石膏ボードは通常白い粉ですが、その部分は黄色い結晶状の粉になっております。オーナーに連絡したところ「以前漏水トラブルがあって修理したがその時にボードがずぶ濡れになったことはある。今のところ下階から漏水の苦情は来ていない、明らかに壁が濡れている等でなければ経過観察でお願いしたい」旨の返答でした。

投稿: Y | 2014年6月16日 (月) 06時42分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/187788/42958486

この記事へのトラックバック一覧です: 石こうボードが雨水と反応して、硫化水素が発生!?:

« 北陸鉄道 鶴来・加賀一の宮間廃止へ | トップページ | 個人的な今年の重大ニュース »