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2009年1月13日 (火)

デジタル家電の寡占が進行中

本日付の日経新聞トップ記事によると「デジタル家電 寡占が加速」だそうで、上位のメーカー2社が5割超の国内シェアを占める品目が9種類あるという。全国家電量販店約4500店の販売実績をまとめたGfKジャパンのデータが基になっている(2008年)。日経新聞はNikkei Net上の記事と紙媒体の日経新聞本紙とで、記事の詳しさが違っている。紙媒体の方が格段に詳しく書かれている。

記事(紙媒体)によれば、寡占の進む9品目と国内シェア上位2社は

プリンター(セイコーエプソン、キヤノン)
ノートパソコン画面10.3型以上(NEC、富士通)
デジタルカメラ(キヤノン、カシオ)
電子辞書(カシオ、シャープ)
薄型テレビ(シャープ、パナソニック)
ビデオカメラ(ソニー、パナソニック)
DVDレコーダー(パナソニック、シャープ)
BDレコーダー(パナソニック、ソニー) 
ゲーム機(任天堂、ソニー)
携帯音楽プレーヤー(アップル、ソニー)

デジタル家電の製造には高度な技術力が必要で、技術のある上位メーカがシェアを伸ばし、体力に劣る下位メーカがシェアを減らすという構図。実際には、技術力だけでなく、営業力なども影響しているように思う。

プリンターは予想どおりである。電器店にいってもセイコーエプソン(企業別シェア48.0%)、キヤノン(47.3%)以外はほとんど並んでいない。インクジェットプリンタの技術は相当なもので、超微量の1ピコリットル(0.01mm×0.01mm×0.01mmの体積)のインクをまっすぐ正確に、1秒間に数千万個噴射する。セイコーエプソンはピエゾ素子(圧電素子)を使い、キヤノンは熱による気化の圧力で噴射するという技術上の違いがある。私は両方使ったことがあるが、両社とも同じような技術水準と思う。両社とも、インクジェットプリンタ本体はそれほど高価ではないが、取り換え用のインクカートリッジが高いのが難点である。聞くところによると、インクカートリッジで儲けるビジネスモデルだという。

意外だったのはノートパソコンである。空港とか新幹線車内で会社員がノートPCを使っているのを見ると、半分くらいがPanasonicのレッツノートである。残り半分をレノボ(旧IBM)のThinkPadだとか、東芝、NEC、富士通で分けあっている印象がある。家電量販店の販売実績なので、会社から支給されるノートPCは統計に入っていないのではという気がした。それとも出張時の持ち運び用としてだけ、パナソニックのシェアが高いのか?

デジタルカメラはキヤノン19.4%、カシオ18.5%である。キヤノンがトップだとは思っていたが、カシオが善戦しているのに驚いた。カシオはデジカメでは後発組で、21世紀になった頃はカシオ社員がキヤノンのデジカメを使っていたと思う。銀塩写真の時代にカメラを作っていて、なおかつ電子製品も作っていた会社というと、キヤノンしか思い当たらないので、キヤノンがデジカメに強くて、当然のような気がする。ちなみに、『デジカメに1000万画素はいらない』(たくき よしみつ著、講談社現代新書)によると、ニコン、オリンパス、ペンタックス、富士フイルムなどのデジタルカメラは、ほとんどが他社のOEM品らしい(レンズだけは自社品か・・・?)。

電子辞書はカシオとシャープどちらが売れているのか前から気になっていたが、カシオ59.1%、シャープ25.7%なので、カシオの方がよく売れているようだ。記事にはないが、私の記憶では、電卓はシャープより、カシオの方が計算が速くて正確だった(煩雑な計算をしたとき有効数字の桁数が多い)。

薄型テレビはシャープ(41.6%)、パナソニック(18.6%)。シャープは液晶テレビが普及する前から、液晶技術の研究開発を進めていたのでうなづける。

ビデオカメラはソニー31.9%、パナソニック23.0%。テレビ局などが使う業務用のビデオカメラはソニーの独壇場だから、家庭用でもシェアが高いのであろう。

携帯電話端末はシャープ25.1%、パナソニック16.9%である。情報通信に高い技術力があるNECや富士通でなく、家電メーカのシェアが高いようである。

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ちなみに私は、家電製品は壊れるまで買い替えない基本方針なので(場合によっては壊れても修理して使う方針なので)、しばらくデジタル家電を買う予定はないと思われる。

今は、ソニーの29型ブラウン管テレビTrinitron(KV-29DR5, 1998年製)、横長でない4:3タイプを愛用しているが、まったく問題ないきれいな画面である。「この時期のブラウン管が丁寧に作ってあって、きれいに映るんです」と聞いたことがあるが、真偽のほどはわからぬ。1回壊れたのだが、コンデンサか何かを取り替えたら復活した。知人のソニー社員に話したら、「何で新しいの買わないの?普通買うでしょ!」と言われてしまったが、わざわざ薄型に買い替える必要性を見いだせないのである。何のメリットがあるのだろうか。特に、部屋の角に斜め置きするので、薄型だろうがブラウン管だろうが占有する面積は変わらない。ただ、やたらと重くて、50kgはあるので、めったやたらとは動かせない。ブラウン管の周りに鉄枠が入っているためらしい。

2011年にはテレビ放送がデジタル化されるとのことだが、どう対処するか決めていない。デジタル放送などどうでもよいと考えている大多数の人にとっては、迷惑千万な話である。デジタル放送になると、テレビ内部で信号処理するため、時報が数秒遅れて表示されるようになるそうだ。正確には、時報だけでなく、放送がすべて数秒遅れて表示される。地デジになったら、テレビ番組もつまらないし、別段見たい番組はないから、テレビを置くのをやめようかと言ったら家人には反対されたが、実際、知己の何名かは家にテレビを設置していない。テレビの世帯普及率はこれから漸減していくのではと勝手に予測している。

携帯電話はドコモ(シャープ製)のSH505iを使っている。5年以上使っていると、古い部類に入るという。FOMAでなく、MOVAムーバである。MOVAも2012年をメドに廃止されるらしい。

使えていたものがインフラ整備など社会的理由で使えなくなるというのは、バカバカしい話である。使えていなかったものが、使えるように整備するのが普通である。

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2009年1月12日 (月)

科学的大発見、および技術的ブレークスルーのパターン

どんなときにノーベル賞級の大発見があって、波及効果の高い技術的ブレークスルーがあるのかをパターン化してみた。ただの私見。

■ 偶然の発見+セレンディピティ(serendipity)

セレンディピティとは、偶然の発見をそのままで終わらせず、その価値を正しく見出して、発展させる能力のこと。

ノーベル化学賞の田中耕一氏は、間違えてグリセリンをコバルトに混ぜてしまったことが大発見につながったし、同じく同賞の白川英樹博士は触媒の量を間違えたのが大発見のきっかけだった。人によっては、ただの「失敗」で片づけるかも知れない、偶然の結果を発展させたことによる成果だ。

レントゲンによるX線の発見(1895)も偶然である。金属に電子線を当てる実験を行っていたら、そこら辺に置いていた感光紙に、骨のかげが写ったというのが最初とされている。

電子レンジの発明も、マイクロ波を使った実験をしていた研究者が、ポケットに入れたチョコレートが溶けてしまうのを見て思いついたという。

ポストイット(付箋紙)の発明も、強力な接着剤を作ろうとしていた研究者の失敗例が元になっている。

ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士が、ニュートリノの研究を行ったカミオカンデも、もともとはニュートリノの研究をするためのものではなかった。陽子崩壊の研究をするために、とにかくノイズの少ない山の中に大量の水をためたものである。これだけ水をためれば、何個かは陽子崩壊するだろうと計画していたわけである。しかし、実際に実験を始めてみると、予想外の発光が観測されて、それがニュートリノによるものだとわかった。そこで、大幅な計画変更がなされて、ニュートリノの研究が行われることになったのである。超一流の物理学者でさえ、当初はニュートリノが観測されるとは予測していなかったところが面白い。

材料分野でも、直前に実験した人の不純物が電気炉に残っていたために、予想していなかった化合物(固溶体)ができて、特殊な機能性材料ができたという例がある。材料分野では、偶然による発見はかなり多い。

偶然の発見に頼る研究者を、むやみやたらに穴を掘って、宝探しをしている様子にたとえて揶揄する人がいるが、たいていの場合、専門的識見に基づいて、どこに穴を掘ればいいかという指針としてもっているものである。

当初の計画の通り、ガチガチに固まった研究を進めても、大きな成果を得ることは少ないように思う。

■ 仮説を立てて(予測して)、とにかくやってみる型(作業仮説型、思考が現実化型)

フラーレン(C60など)を発見した科学者は、サッカーボール型のジャングルジムで遊びながら、こんな形の分子があるはずだと常日頃から考えていたという。そう考えていなければ、測定結果に現れたノイズと見間違う小さなピークを、C60だとは思わなかったはずである。実際、別の研究者の古い測定データにはC60らしきピークがノイズっぽく現れていたらしい。C60など眼中になかったから深く追求しなかったのであろう。

X線回折を見出したブラッグBragg。X線はそれまで骨を透写するのに用いられていただけで、波長の短い電磁波であることは知られていなかった。ブラッグは何を考えてか、結晶にX線を当ててみると斑点模様が出てくることを発見した。もちろんブラッグの式が知られる前のことで、この結果からブラッグは有名なブラッグの式を導出したのである。ブラッグが何を考えて、結晶にX線を当てたのかだが、どうもエバルトEwaldと散歩しながら会話していたときに、ある仮説に至ったらしい。それまで知られていた可視光の回折では、波長が長すぎて、結晶では回折を起こさないといわれて、ピンと来たらしい。「X線は波長の短い電磁波ではないか。だとしたら、結晶で回折を起こすはずだ」と仮説を立てて、実験を行ったのであろう。

偶然の発見を、後からストーリー立てして、この発見パターンにアレンジすることも少なくない。学術としてはこのパターンの方が美しく見えるが、後々のためには正直に偶然と報告すべきと思う。

■ 人海戦術型

片っぱしからやってみて、うまくいくやつを探すというスタイル。偶然に頼るのとは違い、とにかく片端からやってみて、一番うまくいくやつを採用する。一番うまくいく要素を複数組み合わせれば技術、ノウハウとなる。

たとえば○○に用いるのに、一番、耐久性の高い材料を探せということで、素材メーカーから無数のサンプルの提供を受けてすべて試験をするなど。企業の研究所では、このスタイルで研究が進められることが多いような気がする。大学などアカデミックではこのタイプの研究はあまり見られないとようである(たぶん)。

■ 共同作業型(要素技術結集型)

たとえば、「フロッピーディスクの発明」には、外観を提案するとか、必要性能を思考上で限定するだけでなく、実際にその性能を実現するために、さまざまな要素技術が必要である。読み書きヘッドの設計、ヘッドの材質、ヘッドにつながる電気回路、ディスクの回転保持機構、ディスクの回転と同期させて読み書きする制御方法、フロッピーの磁性体の構造、磁性体の製造法、ディスクの積層構造、ディスクの表面処理法、フォーマット法など。

誰か一人が発明するというよりは、様々な分野の技術者の開発した要素技術の結集といえる。技術者同士が緊密にコミュニケーションをとりながら、進める技術開発である。日本企業が得意とするところらしい。

■ 既存のものの組み合わせ型

既存のものを組み合わせるだけで思わぬブレークスルーを得ることがある。組み合わせる技術のうち一つは新しめの技術であることが多い。赤外吸収分光(IR)にフーリエ変換(FT)を組み合わせたFT-IRなど。今はFTのつかないIRは売られていないほど、FT-IRが普及している。IRにフーリエ変換を組み合わせることにより飛躍的に性能が改善した。

■ 発想の転換型

30年くらい前、新幹線の速度の上限は時速二百数十kmといわれていた。それ以上になると車輪がレール上で空回りを始めてしまう(たとえば車輪が100メートル進む分回転していても、車両が80メートルしか進まない)というのが理由であった。

最近、「のぞみ」は時速300kmで営業運転しているし、技術的には時速360kmも可能である。フランスのTGVは最高時速574.8kmを記録している。

これには、別に車輪が空回りしても構わないじゃないかという発想の転換があったという。確かに空回りしても、車輪とレールの粘着力が完全にゼロになるわけではないだろうから加速は可能であろう。(この鉄道技術については要確認)

■ 天才のひらめき型

アインシュタインの「一般相対性理論」。量子力学黎明期におけるボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガー、ディラック、パウリ、ド・ブロイら。なぜかユダヤ系の科学者に多い。天才型が輩出するのか。真似をしようとすべきではないと思われる。

ちなみに一般相対性理論。何かに役に立つのかと思われてきたが、最近、理論提唱後100年にして、産業上、役に立ち始めたそうだ。GPSで位置を決める計算では、一般相対性理論に基づく計算を行わないと位置がずれる。

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無重力下で雪の結晶を成長させると

雪の結晶を顕微鏡で見ると、きれいな対称形をしている。6回対称、つまり6分の1回転させても、元と重なる形をとっている。正六角形が何重にも重なった形もあれば、中心から六角形の頂点方向に枝分かれしながら伸びる「樹枝状」の形もある。

雪は氷の一形態である。氷は水分子が規則正しく配列した結晶構造をとるが、その単位格子(繰り返し積み重ねると結晶になる最小単位)は正六角柱の形をしている。低温の上空で、水分子が集まって最初の正六角柱の形を作った後、六角柱の水平方向に水分子がくっついていって成長するか、上下方向に成長するか、このバランスで最終的な形が決まる。この雪の結晶の成長の様子は、上空の気温、水蒸気量(過飽和量)など様々なパラメータに左右されて、まだ定量的に完全には説明できていないようである。

地球上で空から降ってくる雪は重力に従って、落下してくるから、落下の途中で、空気中の水分子が雪の結晶に衝突し、取り込まれてどんどん形を変えていく。では、重力のない無重力状態で雪の結晶成長をさせるとどうなるかが、昔から科学的な話題になっていた。また、重力があると、温かくなった軽いものが上に、冷たくなった重いものが下に移動するという「対流」が起きるので、対流が結晶成長にどう影響を与えているかも学術的に重要なポイントである。無重力下では、対流の影響がない状態で結晶成長させることができる。

2008年12月2日の読売新聞によると、「国際宇宙ステーション(ISS)に設置された日本実験棟「きぼう」で2日、氷の結晶の成長過程を調べる初めての科学実験が始まった。茨城県つくば市の宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センターからの指令で行われたが、見事な「氷の花」を咲かせることに成功した」とのことである。

「初めての科学実験」と記事にはあり、「日本実験棟で行われる科学実験」が初めてなのか、「宇宙環境で氷の結晶の成長を調べようとする」のが初めてなのか、この記事ではあいまいだが、少なくとも後者ではない。

1979頃の『朝日少年少女理科年鑑』という本に、無重力下でないと行えない科学実験が、小学生にもわかるように紹介されていて、わくわくしながら読んだ記憶がある。軽い金属と重い金属を混合して合金を作ろうとすると、重力があると上下に分離してしまってできないが無重力下ではできる可能性があるという話や、プラスチックだと気体の泡を中に入れて、発泡スチロールなどの発泡プラスチックが作れるが、金属の発泡体は金属が重いので、地球上では気体と分離してできない。無重力下で発泡金属が作れるのではなど。

その中に、無重力下で、雪が結晶成長するとどうなるかわかっていないという話も出ていたように思う。

それから、3年後の1982年の元旦。朝日新聞の元日特集版に、「こんど打ち上げられるスペースシャトルで、無重力下で雪を作る実験を行うことになっている。雪の結晶の形がどうなるか、皆さんで予想してください」という内容の懸賞が出ていた。私は応募したのではっきりと覚えている。何と予想したかまでは覚えていないのだが、正解者の特賞景品がNECの「PC-6001」というパソコンであった。当時、PC-8801などの上位機種が既に販売されていたので、特賞にしてはしょぼい景品だな・・・と思ったのを覚えている。

忘れた頃に、実験結果が小さく報道されていて、(無重力下では)雪の結晶はできなかった、という結果だった。雪を作ろうとしたが、雪の結晶はできず、装置の隅っこにごくごく小さい氷ができていたという話だった。しかし、これだけの結果で、無重力で雪の結晶はできないと結論づけるのは間違いであって、広い意味での実験の失敗と言ってよかったのだと思う。先に述べた懸賞では、どんな答えを正解としたのかわからないが、実験結果が明らかになった頃には、PC-6001なんて、だいぶ陳腐化して、そんな景品欲しくないという状況だった気がする。

1982年当時の実験装置の詳細は知らないが、今になって考えれば、実験装置のノウハウ不足か何かで「雪の結晶ができない」と結果も十分、ありえたと思う。

先に述べたISSでの2008年12月の実験では非常にきれいな対称性に優れている氷の結晶、すなわち雪の結晶が得られたそうである。

息の長い基礎研究だと感じた。

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