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2009年7月17日 (金)

著書が4冊出ました。

たまたま時期が重なったのですが、立て続けに共著、分担執筆の著書が4冊出版されましたので紹介しておきます。丸善から2冊、技術評論社から2冊です。

412bta2f2b3cl_sl500_aa240__2まず一冊目  『よみがえれ!科学者魂』(丸善 2,310円)amazonへのリンクは5人の中堅科学者の共著です。

私は、「ビッグサイエンス・ハイテクノロジーと一線を画す科学」の紹介として、「パーコレーションとインテリジェント材料-不思議で単純な”つながりの科学”を使う」の1章を執筆しました。研究の紹介だけでなく、研究に対する思い、理念についても書いています。

丸善の紹介文 「役に立たない、金にならない、特許にならない、企業が興味を示さない研究。しかし、無茶苦茶に面白い研究と実験を集めたとてもユニークな本。研究資金獲得に追いまくられる窮屈な研究環境におかれながらも科学者魂を失わない研究者が情熱を傾けて執筆、研究哲学も語る。持続可能性=サステイナビリティと、ハイテクノロジー・ビッグサイエンスとは一線を画す代替性=オルタナティビティという二つのコンセプトを掲げる。身の回りにあるものでできる魅力的な実験を掲載し、実験で本書のコンセプト(持続性・代替性)を体験できる。すべての研究者・技術者とこれから研究者を目指す若い人たちに贈る渾身の書。」

414l6ivo13l_sl500_aa240__2 次に、同じく丸善から(編集担当は全く別ですが)、『レーザー分光分析』(丸善 5,040円)amazonへのリンク

レーザー分光分析の中でも、光熱変換分光法(フォトサーマルスペクトロスコピー)と呼ばれる分野に絞ってまとめた書です。私は、「液液界面の準弾性レーザー散乱法」の「高精度測定のための諸技術」について執筆しました。過去に取り組んでいた研究の成果です。一般的なレーザー分光分析の教科書よりも、内容がより専門的でマニアックです。

丸善の紹介文 「分光技術の高機能化をはかる際に重要となるレーザーは,現在日進月歩で発展しており、さまざまな分光分析法が開発されている。本書は,日本を代表する光熱変換分光法の研究者である澤田嗣郎先生の40余年に渡るレーザー応用分光分析に関する研究の業績を中心に,レーザー分光分析法について,現場で活用できる実用的な応用展開を紹介する。」

51mosrjkmel_sl500_aa240__2 技術評論社から出た次の2冊は一般向けです。

いまさらきけない 化学の疑問amazonへのリンク、『いまさらきけない 物理の疑問amazonへのリンクの2冊。左巻健男氏の編集です。OKWaveに寄せられた質問から面白そうなものをピックアップして、専門家が回答しています。

私が回答した質問は次のようなもの。

化学の疑問編

マイナスイオンって何?、バッテリーのメモリ効果とは? etc

物理の疑問編

スパゲッティを折ると3つ以上に分かれる理由は?、「うまい棒」に穴があいていると強度が増すわけ etc

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2009年7月 2日 (木)

X線発生装置を設置しても、「放射線管理区域」を作らなくてよくなった?

昭和の頃、X線回折装置や蛍光X線分析装置など、X線を発生する装置(工業用X線装置)を研究室に設置するには、かなり面倒な手続きと管理が必要であった。

Xray_4 その面倒なことに「放射線管理区域」を作るというのがあり、「放射線管理区域」を標識で明示して、用のない者を立ち入らせず、定められた注意事項を掲示する必要がある(電離則3条)。さらに、資格のある「X線作業主任者」の選任が必要で、「管理区域」に出入りする放射線業務従事者にはフィルムバッジなどを着用させて、被ばく線量を測定しておかねばならない。これには一人当たり年間1万円弱の費用がかかる。被ばく線量の記録は30年間保存しなければならないというおまけ付きである。半年に1回、線量当量率の測定(5年間記録保存)と特別な健康診断(30年間記録保存)も必要となる。

「放射線管理区域」とは、実効線量(被ばく量)が「3月間(13週間)で1.3mSv(ミリシーベルト)を超えるおそれのある区域」である。この「超えるおそれのある」という表現が、厳しい解釈を招いていたのであった。X線装置を普通に使用している限り、外部に放射線が漏れたり、この被ばく量を上回ったりすることはないのであるが、何らかの不備が起きた時のことを想定して、X線発生装置を設置する場合には、「放射線管理区域」を作ることが求められていた。これらの管轄は労働基準監督署である。

これが1990年代前半までであった。

その後、「放射線管理区域」は、「X線発生装置」の「装置内部(試料室)」のみで、「装置内部」に人が立ち入ることはできないので、「放射線管理区域」は作らなくてよい、つまりフイルムバッジも着けなくてよいという解釈が、一部の労働基準監督署から出るようになり、なし崩し的に広まったようである。緩くなった経緯はよくわからない。

2001年には、厚生労働省労働基準局長名の基発第253号(平成13年3月30日)「労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」ではっきりと明文化された。(我々はこれで一安心した)

厚生労働省労働基準局長名の基発第253号(平成13年3月30日)「労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」

第3 細部事項3 第3条関係(6)

放射線の照射中に労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることのないように遮へいされた構造の放射線装置等を使用する場合であって、放射線装置等の外側のいずれの箇所においても、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないものについては、当該装置の外側には管理区域が存在しないものとして取り扱って差し支えないこと。ただし、その場合であっても、装置の内部には管理区域が存在するので、第1項の「標識によって明示」することは必要であること。この装置の例としては、次のものがあるが、これらの装置を使用する場合であっても、労働者に対しては、安全衛生教育等において、放射線の人体への影響、及び被ばくを防止するための装置の安全な取扱い等について周知させること。

ア エックス線照射ボックス付きエックス線装置であって、外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされた照射ボックスの扉が閉じられた状態でなければエックス線が照射されないようなインターロックを有し、当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造のもの

イ 空港の手荷物検査装置であって、手荷物の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、当該装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの

ウ 工場の製造工程で使用されている計測装置等で、製品等の出入口は、労働者の手指等が装置内に入ることがないように2重の含鉛防護カーテンで仕切られ、又は労働者の手指等が装置の内部に入った場合に放射線の照射が停止するインターロックを有し、かつ当該インターロックを労働者が容易に解除することができないような構造であり、装置の外側での実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えないように遮へいされているもの

つまり、実験に使うX線回折装置、蛍光X線分析装置などで、外部に放射線が漏れない構造で(3月間で1.3mSv以下)、扉が閉まってなければX線が照射されない安全機構(インターロック)がついていて、その安全装置を簡単に解除できない構造であれば、法令上、X線作業主任者は要らないし、放射線管理区域を作らなくてもよいし、出入りする作業者にフイルムバッジを着用させる必要もないということになる。ただし、標識による表示、安全教育は必要である。また、放射線管理区域の有無にかかわらず、X線回折装置など工業用X線装置を新しく設置する場合は労働基準監督署長に設置場所の届け出と書類提出が必要である。

※上記のような内容を書籍、出版物で確認されたい方は、『蛍光X線分析の実際』(朝倉書店、中井泉編集、日本分析化学会X線分析研究懇談会監修)の17章、p. 220に記載があります。amazonへのリンク

1998年の1月頃、粉末X線回折装置を実験室に設置するに当たって、技官と教授がこんなやり取りをしていたことがあった。あの時期だと、まだ上のことが明文化されていない状況で、口コミで伝わっていた段階だと思うが、「装置内だけが管理区域」は研究者の間で既に有名な話であった。

教授「X線回折装置置くのに、放射線管理区域作って、立ち入り制限しなくていいのか?」
技官「メーカに確認したんですが、今は昔と違って、管理区域は作らなくていいそうです。規制緩和で、フイルムバッジも資格も必要ないという話です。RIとは違いますので」
教授「本当か?そんな話は聞いたことないぞ」
技官「ですから、昔と変わってますって」
教授「もう一度、確認してくれ」
技官「この前もそう言われて、再確認したのがこの話ですが」

よくあるやり取りである。

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