« 長寿命タイプの白熱電球が、普通タイプよりも早く切れてしまった。定格寿命内にもかかわらず。 | トップページ | Excelのソルバーを使ったカーブフィッティング 非線形最小二乗法 »

2010年4月16日 (金)

粉末X線回折装置用の試料ホルダとX線管球に関するメモ

以下は自分用のメモ。必要あるたびにカタログやら資料をひっくり返して探すのが面倒なので、メモしておく。

■ 試料ホルダ

島津製(XD-D1など)とリガク(UltimaIV、RINTなど)で試料ホルダの形式が微妙に違う(下図)。廃業したマックサイエンス社製はリガクと共通である。

Xrdholder_2

両者を間違えて使うと、X線の当たる場所が変わるので要注意。リガク用の試料ホルダを、5mm浮かせて装着すれば島津製でも使用できる

ちなみに島津用の現行品は

1) 微量試料ホルダ マル(204-49757) 定価12,000円(1枚)

  試料部15 mmφ、くぼみ深さ0.5 mm

2) 微量試料ホルダ カク(205-12462) 定価15,600円(1枚)

  試料部15 mm×20 mm、くぼみ深さ0.5 mm

リガク用の現行品は
1) ガラス試料板(CatNo.9200/5G) 定価 17,115円(1組20枚の値段)
  試料部20 mm×20 mm 深さ0.5 mm
2) ガラス試料板(CatNo.9200/2G) 定価 17,115円(1組20枚の値段)
  試料部20 mm×20 mm 深さ0.2 mm
  である。

リガク用は20枚が17,115円、島津用は1枚12,000円~と格段の差がある。形式が違うだけで、品質は変わらない。なので、上に書いたようにリガク用を、島津用に転用するのが経済的である。

特殊な形式の試料ホルダが必要な場合は、たとえば株式会社オーバーシーズ・エックスレイ・サービスあたりに特注すれば手に入る。

■ X線管球

粉末X線回折用のX線管球を製造しているメーカは、東芝、PANalytical(スペクトリシス株式会社パナリティカル事業部)の2社のみという話である。医療用など他の目的なら他に何社かある。PANalyticalは昔のPhilips。

粉末X線回折用のX線管球の形式(外形)は、ショートアノードタイプとロングアノードタイプの2種類のみで、この形式さえ合えば、東芝製でもパナリティカル製でも、装着できるとされている(出力などはもちろん合わせる必要がある)。ショートアノードとロングアノードで形式が異なる場合でも、専用のスペーサを挟み込めば、ショートアノード仕様のXRD装置にロングアノードの管球を装着できるようになっている。パナリティカルの場合はAタイプとあるのがショートアノードで、Bタイプとあるのがロングアノード(管球一覧のリンク)。紛らわしいことに、東芝はショートアノードでもロングアノードでもAで始まる型番をつけていたりする(一覧へのリンク)。

ロングアノードとショートアノードの長さの違いは13mm程度なので、見ただけでは判別しにくい。金属部を下にして、立てて置いたとき、金属部の上面(フランジの上面)からX線を取り出すベリリウム窓の中心までの長さが、34mmならロングアノードタイプ、21mmならショートアノードタイプ。

ロングアノードタイプ・・・リガク製MiniFlex(初代のもの、MiniFlexIIに関しては知らない)。東芝A-20(1999年~2009年)、A-21(2009年10月2日から使用)を装着。1.0kWまで。

ショートアノードタイプ・・・島津製XD-D1。フィリップスPW2273/20(ロングファインフォーカス、2.2kWまで)、パナリティカルPW2233/20(ノーマルフォーカス、2.0kWまで)、PW2233/20は2007年使用開始で、2009年8月で早くも切れてしまったので、2009年にふたたび同タイプに交換。東芝製に交換するなら、A-45タイプ(ターゲットが単結晶)。

ショートアノードタイプ・・・マックサイエンスMXP3HF22。東芝A-40。

ショートアノードタイプ・・・リガク製UltimaIV。東芝A-41(2.0kWまで)

これらの管球は東芝、パナリティカルとも40万円を少し出るくらいの価格。パナリティカルは直接(XRDメーカを通さず)、X線管球を販売してくれるが、東芝はXRDメーカを通してでないと販売してくれない。(廃業してしまったマックサイエンス製用のX線管球はどこを通して買えというのであろう・・・)

リガク製のUltimaIVは測定開始とともに、X線管球がONになり、電圧、電流を設定値までいきなり上げる仕様になっている。測定が終了するたびに、X線管球がいきなりOFFになり、測定開始のたびに、またいきなり電圧、電流がかかるようである。むかしは電圧、電流はゆっくり上げるようにと厳しく言われたものであるが、東芝製のX線管球を使用するリガクのXRDはそうしなくても良いようになっているのであった。管球が丈夫になったのであろうか・・・。一方、パナリティカル製のX線管球の説明書には、現在でも電圧、電流はゆっくりと上げるようにと記載がある。目下の疑問は、パナリティカル製の管球を、リガクのいきなりON・OFF仕様のXRDで使用したらどうなるかである・・・。

XRD装置で管球冷却水は重要であるが、管球を使用後、冷却水をあまり長く流しすぎるのもよくないという話である。使用後、30分程度流したら、冷却水を止めておかないと今度は結露が生じて、管球の寿命が縮むという

■ X線管球の交換

自分で簡単に行える。0.01°のオーダーでピーク位置がずれるが、粉末X線回折の実用上は、この程度ならなんら問題ない。XRDメーカの出荷時点の保証精度が0.06°以下という話だったので、交換してもその範囲内である。管球を交換したくらいでは、ゴニオメータの再調整は別段いらないと思われる。

正面からマイナスドライバーを用いて、対角線上のネジを2か所外し(このとき水が少し漏れることがあるので受け皿を置いておく)、管球を抜き取る。ネジのない角には冷却水を流すための孔があいていて、そこにゴム製のOリングを挟み込むようになっている。このOリングをなくさないように注意し、新しい管球をつけるときにも挟み込む。Oリングを挟まないと、必ず水が漏れる。

|

« 長寿命タイプの白熱電球が、普通タイプよりも早く切れてしまった。定格寿命内にもかかわらず。 | トップページ | Excelのソルバーを使ったカーブフィッティング 非線形最小二乗法 »

コメント

こんにちは。

6年も前のブログにコメントするなんて
どうかと思いましたが、お許しください。

X線管球の交換のことに触れていましたが、
こちらはリガクのXRDについてでしょうか?

島津のXRDも簡単に行えますか?
島津のでしたら、もう少し詳しくご教授いただけませんか?

管球を冷やす冷却水が汚れていたせいで
水冷エラーになってしまい、確か管球のそばにフィルターが
有ったはずなので、掃除ができないものかと。

サービス呼ぶと、25万も掛かるので自分で行えないものかと
思い、伺いました。

よろしくお願いします。

投稿: sala | 2016年3月 7日 (月) 19時23分

島津のも簡単に交換できますよ。大きめのマイナスドライバで二ヶ所のネジを外して引き抜けば、管球は外れます。うちでも島津XD-D1を使っていますが水冷エラーが良く出ます。どこかにカスがたまっているか、水圧が弱いんでしょうね。

投稿: つゆもと | 2016年3月 7日 (月) 21時10分

こんにちは、
お尋ねしたいのですが、XRD用の管球は当時
どの程度の価格だったでしょうか?

投稿: マツモト | 2021年8月30日 (月) 10時34分

当時,40万円ちょっとだったとおもいます。

投稿: つゆもと | 2021年8月30日 (月) 10時42分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 粉末X線回折装置用の試料ホルダとX線管球に関するメモ:

« 長寿命タイプの白熱電球が、普通タイプよりも早く切れてしまった。定格寿命内にもかかわらず。 | トップページ | Excelのソルバーを使ったカーブフィッティング 非線形最小二乗法 »