« 書店で『漢文法基礎』(二畳庵主人 著)を見つける | トップページ | 生まれて初めて肛門科を受診 »

2010年12月14日 (火)

ヒ素を含む合金をハトが避ける理由

■ 鳥が避けるヒ素含有合金

ヒ素を15%程含む銅の合金を、ハトやカラスは嫌がり寄り付かないという。これをうまく使えば、カラスよけ、ハトの糞害防止も可能だ。

このことを発見したのが金沢大学名誉教授の広瀬幸雄博士で、この業績でイグノーベル賞を受賞されている。発見のヒントになったのは、兼六園にある日本武尊像である。他の銅像がハトの糞で汚れているのにもかかわらず、日本武尊像だけ汚れていないことを不思議に思い、改修工事の際に含有元素を分析したのだった。その結果、ハトの寄りつかない日本武尊像だけ、ヒ素の含有量が異常に高いことが分かり、ヒ素を同じように含む合金を作って、ハトのそばに置いたところ、予想通りハトは寄りつかなかったのである。

ちなみにヒ素を含む合金になぜハトが寄りつかないのか?ヒ素は猛毒であるが、ヒ素が合金から溶け出て、鳥に影響を与えているわけではない。今のところ下記のような説が出されているが、メカニズムはわかっていないといってよいのではないかと思う。

結局、最終結論として導き出されたのは、銅とヒ素の2つの金属が接触した場合に生じる電位差(電気の強さの差で、これを利用したのがヴォルタの電池)により電流が流れて電磁誘導現象が発生する。それによってもたらされる微量の電磁波を、人間の 50万~100万倍の感知能力を持つ鳥たちが嫌って銅像に近づかない、ということだった。
工業調査会のメールマガジンより引用)

私見だが、ボルタの電池と同じ原理で生じる電位差(標準電極電位の差)は、いわゆる直流電位なので、仮に生じたとしても静電気であり、それが電磁誘導現象、さらに微量の電磁波をもたらすのは無理があるように思う。

■ 鉄棒や十円玉(銅製)がにおう理由

公園の鉄棒や古い十円玉には独特の臭いがある。これはよく考えると妙なことである。鉄も、鉄のさびも、銅も、銅のさびも無機物である。このような無機物が常温常圧で揮発することはないから、本来、臭いはしないはずである。少なくとも、人間の鼻で感知できるほどの濃度の無機物の原子が飛散していることはあり得ないことだ。

この臭いの原因は、特定の金属やさび上に好んで繁殖するバクテリアによるものだというのが定説になっている。鉄棒の場合には鉄や鉄のさびに繁殖するバクテリア、十円玉の場合は、銅や銅のさびに繁殖するバクテリアによる。鉄棒と十円玉で微妙に臭いが違うのはバクテリアの種類が異なるためであろう。これら各金属に固有のバクテリアが臭気を伴う化学物質を放出しているのである。

■ ヒ素を含む合金を鳥が嫌う理由の仮説

ここまで書けば勘の鋭い人は、私の言いたいことを悟ったかもしれない。

ヒ素を多く含む合金に鳥がよりつかないのは、ヒ素を好むバクテリアがいて、そのバクテリアが独特の臭気(人間には感じないレベル)を出しているからではないか。

もしそうならその臭気を化学的に抽出、精製すれば鳥よけになるはずだ。ただし、臭気というのは極めて低い濃度レベルになることが多く、世界最先端の分析機器をもってしても、動物の嗅覚にはかなわないのが現状である。世界最高レベルの高価な分析装置でも警察犬の嗅覚にはかなわないのである(警察犬は分析機器より数ケタ低い濃度レベルの臭いをかぎわけるという)。

こんなことを考えていたら、先日(2010年12月3日)、NASAからもったいぶった記者発表があった。「ヒ素を摂取し生命維持できるバクテリア発見」である。この記者会見については、「地球外生命(ET)の兆候探索に影響を及ぼす宇宙生物学的発見」について発表すると事前に予告があったので、宇宙人発見かなどと憶測が飛んでいたのであった。

ヒ素を摂取し生命維持できるバクテリアと、ヒ素を好んでヒ素が多いところで繁殖するバクテリアとは意味が異なる。前者が存在するのなら、後者はあちこちに存在しても不思議はないのではないかなと思う。

|

« 書店で『漢文法基礎』(二畳庵主人 著)を見つける | トップページ | 生まれて初めて肛門科を受診 »

コメント

彼は一応臭いに関しても考察したようですが、生物や化学系の教授でもないのでカビなどの可能性は考えていないようです。結論が電磁誘導によるものであるとも断言はしてないと言ってました。

投稿: takahiro | 2017年3月 4日 (土) 20時24分

鳥の臭覚は鈍いので、ヒ素を好むバクテリアが独特の臭気を出していたとしても、感知している可能性は低いと思う。

投稿: | 2017年10月13日 (金) 15時30分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ヒ素を含む合金をハトが避ける理由:

« 書店で『漢文法基礎』(二畳庵主人 著)を見つける | トップページ | 生まれて初めて肛門科を受診 »