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2011年6月28日 (火)

電車のレールには電流が流れているのに触っても感電しない理由

電車は架線から電気を取って、レールを通じて変電所まで電気を戻している。乾電池につないだ豆電球に例えればプラス側の銅線が架線、マイナス側の銅線がレールである。

架線に触れると感電して死亡の危険があるが、レールに触っても感電しない。レールには電流が流れているにもかかわらずである。

簡単に、その理由をいえば、レールの電位が、我々の電位とあまり変わらないからとされている。ただし、レールが地面にアースされているからという説明は厳密には正確ではない。アースされた状態だと、レールから地面への漏れ電流があると言うことになり、電食(電気による腐食)を起こして付近に埋設された金属製のガス管、水道管、下水管に悪影響を与えるし、通信に誘導障害を及ぼす。

■ レールの電位はどれくらいなのか

前から気になっていたので、計算してみた。

架線は電気をよく通す銅でできているが、レールは鉄だ。鉄は銅の11~13倍の電気抵抗をもつが、レールは架線より断面積が桁違いに大きいので、架線並みに電気をよく通す。よく使われる50kg/mのレールで、長さ1km当たり0.017Ωである。

直流電化区間では5~10kmおきに変電所が設置されている。最も遠い場合で5km。直流電化区間の電圧は1500V(JR在来線など)

電車の消費電力であるが、10両編成をフル稼働させておおむね1600~4000kWである。1500Vで4000kWを得ようとすると、1500で割って、約2700アンペアの電流。

これが1編成レール上にあって、変電所から5km離れた場所から、2700Aを帰電させるとすると、0.017×5×2700÷2=115V (レールは2本あるので2で割った)。

フル稼働の1編成が乗っかっていると、レールの電位は115V。最高になる条件の時であるが、結構、電位は高い。触り方によっては感電する・・・。普通に靴を履いた状態で素手で触れても大丈夫だとは思うが。

実際には、変電所が0V、レールが+115Vとなるのではなく、変電所が-57.5V、レールが+57.5Vとなることが多いようである。漏れ電流のため。

電流も2700アンペア前後と相当な量である。地面に漏れたりするのはよくないので、レール同士は隙間があっても、電気が流れるように、レールボンドで電気的に短絡させてある。

■ レールには電気が流れている

レールに触っても感電しないのはなぜですか?という質問に、的はずれな回答が出回っている。レールに電気が流れているというとき、次の3つの意味がある。

1.上に述べたような帰電線としてのレール

2.信号用の電流・・・電車がレール上にあることを信号機に知らせる電流、直流電化区間では交流を用いる。二本のレールの間に例えば24ボルトの電位をかけて置く。二本のレールを車輪などで同時に踏めば短絡されて、信号電流が流れ、信号を赤にする。よほど運が悪くない限り、この信号電流で重傷を負うことはないように思う。

3.古い地下鉄の第三軌条・・・銀座線、丸ノ内線などでは架線の代わりにレールの横に、もう一本のレールが敷かれている。これは架線の代わりに使う高電圧が流れているレールなので、これを触るのは架線を触るのと同じ。トンネルのサイズを小さくするために、架線+パンタグラフの代わりに敷設されたものである。

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コメント

上の線が+側で下の線が-側かな?だから両方同時に触れないと感電死しませんと思うけれど誰か判る?仮に1万ボルトの-側を手で持っても何も起こらないけれど両方同時に持つと感電死しますと思います。

投稿: モチモチ | 2011年11月 8日 (火) 09時20分

たしかに計算上では115Vとか57.5Vになりますね。でも変電所に足をおいて5kmこちらの線路に触る場合の話になりますね。
現場では線路も何らかの接触抵抗で接地されていますから裸足でも人間が感電するような電圧にはならないと思います。
馬が感電するといった話は聞いたことがあります。
うろ覚えですが10V位という記憶があります。

投稿: とらちゃん | 2012年4月29日 (日) 03時52分

列車編成と力行中かどうか、変電所からの距離、大地導電率、レールの絶縁などで変わりますが、実際に計った経験から、通過時に100V程度になりますが、通過中は線路に近づけませんから、危険ではありませんが、危険を省みず、通過直後にはまだ50V程度はあり、30V以上は危険電圧、タッチ電圧50V危険電圧と規定されていますから危険といえば危険です。
 ただ、レール短絡故障時には数万電流短時間とはいえ流れますから、数千Vに誘起されるので、短時間とは言えば危険です。
 それに耐えるように、設備は設置されています。
 しかし、バックパワーのない静電気の指と金属間とのアークは数万Vでありますから、電圧が危険ではなく、通流電流時間であります。 したがって、電車電流誘起はバックパワーがありますし、事故時も同様ですから、危険性は高いといえます。
 大半は同様のことが記述されていますが、少し追加コメントしてください。

投稿: Y Ohki | 2015年7月28日 (火) 18時08分

d

投稿: | 2019年4月16日 (火) 17時18分

線路(レール)が帰電線になっているのは確かですが地面はほぼ同電位ではないですか? でないと、雨の日などは接地抵抗が下がってしまって、電圧が変動してしまいます。
地面、レール、架線の関係は自動車の車体、マイナス、プラスと同じと考えて良いかと思います。

投稿: なおなお | 2020年3月 4日 (水) 22時34分

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