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2011年7月23日 (土)

慢性的な腰痛が針灸で軽くなった話 

2006年9月21日付の「腰痛が痛い」でも書いた。長年、慢性的な腰痛と、たまのぎっくり腰に悩まされていたが、2006年の夏から2007年にかけて、慢性的な腰痛がひどくなっていた。だいぶ前の話であるが、その腰痛が、鍼灸治療で軽くなった話を記しておきたい。今のところ、軽くなったままキープしている。

当時のブログにはこう書いていた。

左股関節後ろ側~でん部~腰部に痛み。夜に調子がよく、朝起きたときが一番痛む。骨盤を浮かして寝返りを打つ動作、左の腰を後ろにそらす動作をすると痛む。まだ痛い。7月末に日帰りで、松本に出張したのだったが、直江津・長野間の在来線ロングシートで居眠りしてから、同じ部分に筋肉痛っぽい違和感があった。大事にせずに8月中スポーツジムに通って、筋トレを続けたのが長引いた理由かもしれない。腰痛ベルト、テーピングをするとかなり楽になる。夜に調子がよいことから、血行不良が主因かもしれない。

日常的な生活、仕事に大きな不都合はなかったのだが、腰が慢性的に痛かった。症状としては

  • 左のでん部~腰が痛い。骨の上ではなく左横の筋肉部。痛い場所は深部のような感じ。左股関節の裏側が痛がゆいのが最初の症状だった。体表からはどこが痛いと指示しにくい。左腰の骨盤のグリグリの下のような気がしたり、上のような気がしたり。
  • 左腰を後ろにそらす動作が痛くてできない。
  • 仰向けで腰を浮かす動作も痛くてできない。
  • 仰向けで思い切り背伸びをすると痛いので、背伸びを気持ちよくできない(これはかなり悲惨に感じた)。
  • うつぶせで指圧を受けるとき、左の腰は強く押されると「痛い」と叫んでしまうほどなので、弱めにやってもらっていた。弱めなら心地が良い。
  • 朝起きた時が辛く、夜は比較的楽である。
  • 早歩きはできるが、走るのが怖い。左腰の激痛が怖くて走れなかった。酔った勢いで軽く走ろうとしたら、左足をひっかけて転びそうになった。
  • 以前なら2~3kmくらいなら歩いていたが、腰をかばうためか、周囲の筋肉がだるくなるので、ついタクシーを拾ってしまう。
  • スーパー銭湯にある電気風呂(座ると腰に低周波の電気が流れる)に入ると、以前なら気持ちが良かったのに、痛くて我慢できない状態。

で、評判のいい柔道整復師のうわさを聞いて、3回ほど通ったのだが、軽くはならなかった。そこで受けた施術はベッドの上にあおむけに寝た状態で、下半身をゆっくりと大きく左右にひねる操作をした後、よくある低周波の電気を当てる治療であった。

そのうち治るだろうと思って放っておいたが、全然、よくならない。そんな状態が半年以上続いた2007年の3月頃だった。出張の時、部屋にマッサージを呼んで、指圧してもらっていると、例によって、左の腰を押されたときに、「痛い、痛い」と叫んでしまった。中年男性のマッサージ師、「ああ」と納得し、「一度、鍼(はり)したらどうですか?私、同じ症状で鍼で治ったんです」と言う。同じ症状の人が治ったと言っているのは心強い。以前、はりきゅうで効果がなかったことがあったが、あれはぎっくり腰直後の急性期だった。慢性の症状だと違うかもしれない。

鍼灸院は近所に散在しているが、どこに行けばいいのかわからない。家か勤務先に近いところで、繁盛しているところがいいだろうと考え、患者さんが出入りしているのを頻繁に見かけるある鍼灸治療院に目星を付けた。

電話をして初診の予約を入れた。この鍼灸院は保険がきくらしい。初診時に書類を渡され、かかりつけの医師に腰痛の症状を話して、鍼灸による治療が適切である旨の所見を書いてもらうようにいわれた。最初の2回程度は初心者向けの軽い施術をするという話だった。

初診料がいくらだったかは忘れたが、2回目以降の費用は1回700円であった。7000円ではない、700円。保険の効く分が1700円×0.3で510円、保険の効かない治療の分が190円で、合計700円。期待していなかったが破格の安さであった。「保険の効く鍼灸院が少ないのは、保険で決められた1700円じゃバカバカしくてやってられないから」だそうだ。普通は保険外で1回3000~5000円みたいな話だった。700円の徴収もユニークで治療後、出口に置いてある缶に自分で700円を入れて行くスタイルだった。お釣りも自分で取っていく。診療の予約も、待合室に置かれたスケジュール表に勝手に書いていく。スケジュール表は予約で一杯である。

カーテンで仕切られたスペースが3つあり、それぞれに高さを変えられるベッドが備え付けられている。ベッドに敷くバスタオルは自分で持参する約束であった。男性は大きめのバスタオルを2枚持参するように言われた。

施術は3つのベッドで並行して進んでいく。施術は以下のようなもの。

靴下、シャツも脱いで、パンツだけのスタイルになり、仰向けに寝て待つ。バスタオル一枚は下に敷いて、もう一枚はパンツの上にかけておけばよい。しばらく安静にして待つ。

まず、脈を見られる。脈の様子で逆になることもあるが、通常は仰向けが先で、後で横向きになる。仰向けで、鍼を眉間、肩、腹、腿、すね、足の甲に打たれる。その場所で開封した新品のハリを1mm程度の深さに打つそうである。ハリの入ったまま寝て待つ。

しばらく待つと、別の施術者(女性)が灸を持って現れ、ハリの入っている部分に火を着けた灸を近づける。近づけてしばらくすると熱くて我慢できなくなるので、「はい」と合図して止めてもらう。同じことを全身に行う。

また、しばらく待つと、初めの施術者が戻ってきて、ハリを抜き、今度は横向きの体勢でハリを打っていく、首筋からふくらはぎまで。今度は痛い部分がメインである。

その後、同じように灸の人が現れて、同じように灸を近づけて、我慢できない程度まで灸で温める。初めの施術者がハリを抜いたら終了。

週2回通ってくださいと言われたが、そもそも予約が取れないので、ほぼ週1回のペースで約半年間通った。

効果を感じたのは3回目くらいであった。腰が痛いので、ズボンを履くのにも気合が必要だったのだが、施術後、左足をあげてズボンを履くときに痛みが軽くなっているのに気付いた。施術直後に痛みが軽くなるのは、それまでよくあったことで、翌日とか数時間後に痛みが元に戻ってしまうことが多かった。そのときも、すぐに痛みが戻るのではと思ったが、痛みの軽い状態は続いた。

施術5回目で痛みがほぼ半分、10回目で痛みがほぼ1割になった。意外であった。上に箇条書きにした症状はほぼなくなった。

3月から鍼灸院に通い始めたが、7月初旬に出張先でマッサージを受けた時には、左腰をいくら押されても、もう痛くなかった。

今でも、腰痛はあるが、2006年ごろに悩まされた症状は軽快している。もう再発はないと信じたい。

通った鍼灸院の話によると、自然治癒力を引き出しているのだそうだ。針と灸とどちらが効いたかは判断しにくいが、灸を当てられるときに、次どこに熱いのを当てられるだろうと神経をウズウズさせたのも良かったような気がする。

私に、針灸を勧めてくれたホテルの男性マッサージ師は、私と同じような体格、体型の男性であった。同じような体格の同性の人が、同じような症状に聞いたというのが、大事なのかもしれない。

また、別の人によると、筋肉の多い男性の方が、針灸による自然治癒力を引き出し易いという話だった。

腰痛に悩む人は多いが、慢性的な腰痛が整形外科に通って治ったという話はあまり聞かない。よく聞くのは整体に通って良くなったと言う話だが、良い整体院を探し出すまでが一苦労である。基本的に整体師は無資格の世界なので、整体院は選ぶ必要がある。正直、針灸に通うまで、そんなに効くとは思っていなかったのだが、治ったのは意外であった。

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2011年7月20日 (水)

Fresnel(フレネル)の式で表面プラズモン共鳴角を求める -複素数の入った計算

以下は、フレネルの式を使って、各層の複素屈折率(複素誘電率)から、各入射角における反射率を計算する方法のノート。下に示した条件では表面プラズモン共鳴(SPR)により、反射率が極小になるSPR角が観察される。ここではFortranのプログラムを用いた。

金属膜を蒸着したプリズムに、プリズム側から(空気側からでないことが重要)、レーザー光を入射して、反射光を観察することを考える。入射角を変えていくと、ある角度で反射率が急峻な極小値を示し、反射光の中に暗い線が観察される。この角度が表面プラスモン共鳴(SPR)角である。このとき、入射光と薄膜中の電子とが共鳴を起こし、入射光のエネルギーが吸収されて、電子のエネルギーに変化している。プリズム側の光と、薄膜中の電子との分散関係(ωとkの関係)が一致し、光によって、電子の集団的波動(プラズモン)が生じているのである。

表面プラズモン共鳴を起こすのはp偏光である。

Kreottoc_2   

表面プラズモン共鳴を起こさせるには、上図のようにクレッチマン配置とオット配置がある。膜には通常、金薄膜が用いられる。

表面プラズモン共鳴角を求めるには、フレネル(Fresnel)の式を使って、各媒質の屈折率(二乗して、誘電率)から、各入射角における反射率を計算し、吸収を示す角度を算出する。屈折率は空気、プリズムの場合は実数であるが、金属膜の屈折率は複素数になる。複素数を用いるところがポイント。例えば、仮に下式のkの虚数成分を無視して計算すると、反射率の極小値は出現しない。

Kretchmann配置のときの振幅反射率(複素数)rSPは次式で計算される。(振幅反射率の絶対値の二乗が通常の反射率Rである。振幅反射率(複素数)に、共役の複素数を乗じたものが通常の反射率Rだと言うこともできる。)
Eq1_2 
Otto配置のときの振幅反射率rLRSPは次式である。
Eq2

ここで、r234

Eq3

r12, r23, r34 およびk1z, k2z, k3z, k4zは、p偏光に関しては

Eq4
Eq5

εi はi層目の媒質の誘電率(屈折率(複素数)の二乗)、diはi番目の層の厚み、θは入射角、cは光速、ωは角振動数(入射光の波長から計算)。

Otto配置のときに、プリズムの屈折率1.4607、層2と4が空気で屈折率1、層3が金薄膜で複素屈折率0.166+3.15i、レーザーの波長532nm、層2、層4の厚さがそれぞれ10nm、40nmのときに、入射角10°~80°の範囲の反射率を0.5°ステップで計算するFortran90のプログラムは以下の通り(該当する数値を変更すれば他の条件でも簡単に計算できる)

COMPLEX R,R12,R23,R34,R234
COMPLEX N1,N2,N3,N4
COMPLEX E1,E2,E3,E4
COMPLEX I,K1,K2,K3,K4
REAL C,ABSR12,ABSR23,ABSR34,ABSR234,ANGLE,PAI,THETA
N1=CMPLX(1.4607,0)
N2=CMPLX(1,0)
N3=CMPLX(0.166,3.15)
N4=CMPLX(1,0)
I=CMPLX(0,1)
E1=N1*N1
E2=N2*N2
E3=N3*N3
E4=N4*N4
D2=10E-9
D3=40E-9
C=3.00E+8
PAI=3.14159
DO 200 J=0,140
ANGLE=10+J*0.5
THETA=ANGLE*PAI/180
OMEGA=2*PAI*C/532E-9
K1=OMEGA/C*SQRT(E1-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
K2=OMEGA/C*SQRT(E2-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
K3=OMEGA/C*SQRT(E3-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
K4=OMEGA/C*SQRT(E4-E1*SIN(THETA)*SIN(THETA))
R12=-(E1*K2-E2*K1)/(E1*K2+E2*K1)
ABSR12=ABS(R12)
R23=-(E2*K3-E3*K2)/(E2*K3+E3*K2)
ABSR23=ABS(R23)
R34=-(E3*K4-E4*K3)/(E3*K4+E4*K3)
ABSR34=ABS(R34)
R234=(R23+R34*EXP(2*I*K3*D3))/(1+R23*R34*EXP(2*I*K3*D3))
ABSR234=ABS(R234)
R=(R12+R234*EXP(2*I*K2*D2))/(1+R12*R234*EXP(2*I*K2*D2))
PRINT *,ANGLE,REAL(R),AIMAG(R),ABS(R)*ABS(R)
200 CONTINUE
END

下から3行目のPRINT文で、角度、振幅反射率の実数成分、振幅反射率の虚数成分、反射率(振幅反射率の絶対値の二乗)の4データを、順に画面表示する。表示されたデータを右クリックで全て選択などして、コピペするとよい。(Windows XP上、Microsoft Fortran Power Station Ver. 4 for Professional Editionで動作確認。)

Fortran初見の人にわかりにくいのは、DO 200 J=0,140 と 200 CONTINUE のみと思う。この二つの間を、Jについて0から140まで1ずつ増やしながら、ループしなさいという意味。

環境に依存するので書かなかったが、ファイル入出力の命令を書けば、ファイルに出力できる。

Excel VBAで書こうかとも考えたが、複素数はFortranで書く方が実にシンプルである。

上述の計算結果をグラフ(R vs θ)にすると下のようになる。46.5°付近にSPR角がある。媒質の屈折率が微小変化すると、SPR角が移動するので、この角度ではRが大きく変化することになる。なので、表面プラズモン共鳴(SPR)は、微小な屈折率(誘電率)変化を反射率変化として増感する方法として知られる。

Spr

参考 R. V. Andaloro et al., Applied Optics 33 [27], 6340-6347 (1994). (文献中の式6aは誤植あり、マイナスが抜けている)

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2011年7月 1日 (金)

SunワークステーションのNVRAMが電池切れになったので

私の研究室では蛍光X線分析装置(島津製XRF-1700)の制御にSunのワークステーションSPARC station 5を使用している。OSはSun OS 5.5.1である。導入したのは1998年だから、まだパソコンでは装置制御、データ処理に力不足だった時期である。今の大学生にワークステーションと言っても伝わらないので、WSのことをあえてPCと呼んでいたりする。

150万円ほど出せばWindows XPのPCに制御機器周りを更新することもできるらしいが、そんなことはせず、いまだにUNIXベースのSunのWork Stationを使用している。

本日、そのWSが普段通り立ち上がらなくなった。WS本体を起動すると、色々なメッセージが表示された後、OKで停止してしまい。ログインの画面まで行かないのである。

画面上に流れているメッセージを読むと、エラーメッセージらしきものがあった。

The IDPROM contents are invalid.
Boot device: /iommu/sbus/ledma@5,8400010/le@5,8c0000 File and args:
Internal loopback test -- Did not receive expected loopback packet.

Can't open boot device.

一行目のメッセージでWebを検索すると、EVRAMの電池切れが原因と判明した。EVRAMはボタン型電池が内蔵された電子部品であるが、電池も含めて樹脂で封止されているので、電池を交換するのは簡単ではない。

Webで検索した限り、対応は厄介そうであったが、実際やってみるとそうでもなかった。

・大いに参考にしたサイト SunのNVRAMが干上がったら 

・大胆にもNVRAMを分解して電池交換している人 SPARCstation の NVRAM の電池交換

以下の1→2で対応することにした。

1.とりあえず、電池切れのNVRAMを装着した状態で起動し、OK表示の状態から、電池切れのために失った16バイトの情報を入力してやり、普段通りにOSを起動して使えるようにする。

2.1.のようなことを起動の都度、毎回、行うのは面倒なので、新品のNVRAMに交換して元に戻す。

本体を開けてみると、EVRAMの型番はM48T08-150PC1。アールエスコンポーネンツのWeb注文で、当日発送1個2,375円、送料460円だった。

取り急ぎ、上の1.を行った。

幸いなことに、このSPARCstationは、スタンドアロンタイプでネットワークには接続していなかった。ネットワークの設定分、楽である。

起動後、途中で止まった状態でのOKプロンプトから、set-defaults と入力し、以下の手順で16バイト分の情報を入力していった。 (参考 SunのNVRAMが干上がったら

1バイト分ずつ

値 位置 mkp

とOKプロンプトの後ろに入力し、enterしていく。位置とは16バイト中何番目かを16進数で記したもの。順に以下のように入力した。後ろは説明なので入力しなくてよい。

01 00 mkp  ここは常に01
80 01 mkp  host idの1バイト目。機種で違い、SPARCstation 5では80
02 02 mkp  ethernet addressの1バイト目
03 03 mkp  ethernet addressの2バイト目
04 04 mkp  ethernet addressの3バイト目
05 05 mkp  ethernet addressの4バイト目
06 06 mkp  ethernet addressの5バイト目
07 07 mkp  ethernet addressの6バイト目
00 08 mkp  製造日の1バイト目
07 09 mkp  製造日の2バイト目
00 0a mkp  製造日の3バイト目
01 0b mkp  製造日の4バイト目
03 0c mkp  host idの2バイト目
03 0d mkp  host idの3バイト目
03 0e mkp  host idの4バイト目
0a 0f mkp  チェックサム。00~0eのxorの値。この代わりに下の1行でよい。

スタンドアロンタイプだったので、製造日だけでなく、ethernet address、host idの2~4バイト目は適当に数値を入れておけばよかった。上の数値は1~2バイト目以外、適当である。最後の行、チェックサムのxorを計算するのは面倒なので、代わりに

0 f 0 do i idprom@ xor loop f mkp

と入力するとよい。

その後、OKプロンプトにbootと入力すると、OSが無事にたちあがった。

この後、ワークステーションの電源は落とさずに使用する。いったん落とすと、上のことを起動時にもう一度やる必要がある。

NVRAMは日付、時刻も記憶しているので、dateコマンドを使用して、日付、時刻を直す必要がある。

date 0630183011

2011年6月30日18時30分に合わせた。

但し、dateコマンドはスーパーユーザー(login idがroot)でloginしないと変更できない。

後は、NVRAMの新品が届き次第、交換する予定である。NVRAMは挿す向きに注意!逆さまは絶対NG。

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